あと30秒以上あるはず。

それから守が走り出すなら・・・間に合うかも!

油断が気のゆるみを生み、濡れた体から落ちる水が足を滑らせた。

「きゃあああ」

足を踏み外し、階段の上から一気に転げ落ちる。

踊場の壁でしこたま頭を打ち、意識が一瞬飛ぶ。


「・・・く」

逃げなきゃ。

逃げなきゃ。

逃げろ。

逃げろ!

必死で気持ちを奮い起こし、立ち上がる。

頭から出血しているらしく、鼓動の速さで痛みが生まれた。

体中も痛みで動きにくい。