「とにかく、式場まで逃げなきゃ」
そうつぶやいた知佳は、違和感を感じて扉の上部に目をやる。

暗闇の中、ドアの上から守が知佳をのぞき込んでいた。

「きゃあああ!」

悲鳴をあげて後ずさりするが、すぐに壁にぶつかって、便座と壁の間に崩れ落ちる。

守は、宙に浮いているように上下しながら知佳を見下ろしていた。

「みーつけた」
無邪気な笑顔で守は言った。

扉の上部に両肘を置きほおづえをつくと、知佳にに笑いかける。

「あ・・・あ・・・」

口をぽかーんと開けて、ただ見つめるしかできない。