「そう・・・。名前は、なんておっしゃるの?」

その言い方に、さっきまでの冷たさは感じられなかった。

「桜・・・、平野桜といいます」
私は自分の名前を告げた。

「私は高木友利子。あ、今は高木じゃなくって旧姓に戻っちゃったけどね」

言われた意味が分からなくて、友利子を見やると、ぼんやりとした表情で続けた。
「守が死んでしばらくしてから、離婚したの。・・・と言っても、主人が勝手に出て行っただけ。離婚届が郵送で送られてきてね」

「そうですか・・・・・・」

どんな表情をすればいい?

うなずくしかできなかった。

「守が私たちの生きがいだった。遅くに生まれた子供だったから、それはかわいくってね・・・・・・」