「分からない。なんだかヤバイ予感」

「・・・止めるか?」
そう言って歩き出そうとする健治の腕をとっさにつかんで止める。
「んだよ、離せよ」

「離さない。榊原君は行っちゃだめ」
腕を引き寄せ、隣に戻す。

「なんでだよ」

「榊原君の悪いくせ。強く出たって、暴力をふるったって何にも変わらないんだから。状況をややこしくするだけ」

「・・・んだよ」
そう言いながらも大人しく壁にもたれる健治。
「お前、ほんっと変わってるな」

「ほめ言葉と受け取っとく」

健治が口をゆがめて笑ったのを確認して、私は前を向く。