父が出て行ってから母は変わった、と亜矢音はいつも思う。

それまでは仲の良い親子だったような記憶しかない。

だけど、父がいなくなってからはほとんど笑顔を見ることがなくなった。

会話は、いつも新しい男の話ばっかり。

それも、うまくいってるうちはまだいい。

ケンカしたり別れたりすると、まるで亜矢音のことが邪魔かのような態度をとる。


・・・また、男とうまくいってないんだな。

ため息をまたつくと、キッチンから出る。

最後まで母はテレビを見たまま、その視線を亜矢音には向けなかった。


財布と携帯だけ持って、夜の町に。