『青春小説家の殺し方』 読者レビュー

2025年7月28日発売

☆第9回スターツ出版文庫大賞 特別賞受賞作!


『青春小説化の殺し方』

川奈あさ/著

イラストレーター:雨森ほわ

「青春小説家H.Yに殺されました」

衝撃的なタイトルで、小説投稿サイトに人気作家の過去が投稿されていく。語られるのは作家自身のことだけではない。高校時代の同級生たちの過去も次々と明かされていく。投稿者の名前は高校時代にいじめを受け、自ら命を絶った少女のものだった。


作家を守ろうと奔走する編集者の槇原。冷静さを欠いたその言動には理由がある。彼女自身が、人気作家“葉空ヨリ”の言葉に救われた経験を持っているからだ。だからこそ、どうしてもヨリを守りたかったのだ。


過去の罪は、どう償えばよいのだろう。小説の中の言葉に救われたり、心の支えになり、お守りのようにしている人は確かにいる。ただ作者が紡ぐ言葉そのものが、人間性に結びつくものなのだろうか。簡単には答えの出ない問いを私自身も考えていた。


著者プロフィールに「やさしい朝を迎えるお話が好きです」と書かれていた。読み終えてこの言葉がすっと入ってきた。夜の暗闇から優しい光を放つ朝を確実に感じる読後感だった。


(あおい/本と映画の感想 さん)

小説投稿サイトにあのような内容を誰が何故投稿したのか。ふたりの関係はどうなってしまうのかが気になってあっという間に読み終わりました。

人間の裏表がリアルに描かれている物語。一瞬で事実や噂が広まり、誰かの人生が潰されることもある。最近のネットは怖いと改めて感じました。自己満足と思われてしまいそうな正義で終わってしまうのかなと心配しましたが、ラストはその熱い思いであの方が救われて良かったと思いました、それぞれの立場にいる人たちに共感できる部分がありました。相手を知ることは大切、見える部分だけがその人の全てではなく。あと、私も学生時代は特に本を読んで救われたので、やっぱり本はすごい。


表紙と比喩表現も好きでした。

素敵な物語をありがとうございました。


(立坂 雪花 さん)

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