僕が書いた世界の果てで、君の幸せを問う

 拝啓

 親愛なるあなたへ。

 あなたからの手紙、確かに受け取りました。
 最初から僕は、結局あなたの手のひらの中にいたんですね。今さら気づいて、ひどく照れくさくなりました。
 それから、作ってくれた服も、ちゃんと受け取りました。あなたが昔くれたものとは違って、タートルネックじゃなかったんですね。それでも、変わらずあたたかい。
「咳、いい加減やめなよ」って、ことりちゃんが首だけに巻けるタートルネックを買ってきてくれました。その上に、あなたのニットを重ねて――今日は、薔薇も置いてきました。寒さで、すぐにしおれてしまわないか、それだけが少し心配です。
 トマトちゃんは、今年で三十歳になりました。もう飛べなくなったけれど、それでも相変わらず、よく歌っています。まだ欲張りな僕が、しばらくは連れているつもりです。ひまわり星に辿り着くまで、もう少しだけ、待っていてください。
 それと最近は、「投資」なんてものも始めました。あなたは笑うでしょうね。「らしくない」って。

 ――さて、雑談はここまでにします。

 あなたが言ってくれた通り、僕はもう一度、好きなことを始めました。
 鉛筆を握り直して、朝起きてから眠る直前まで、ただペンを動かしています。あなたとの話を、物語にして、紙の上へほどいていくのが信じられないくらい楽しいんです。
 書けば書くほど、あなたに近づける気がする。ページの隅で、ふっと笑う声が聞こえる気がする。

 ……けれど、それでも。

 毎年この時期になると、どうしても胸が痛みます。あなたのいない場所が、広すぎて。
 それでも僕は、今も幸せです。
 あなたと、そしてみんなと一緒に刻んできた「幸せ」という文字は、夜空の星の数みたいに、数え切れないほど僕の中に散らばっていて――今でもちゃんと、暗闇を照らしています。
 だから僕は、今日も歩けます。書けます。
 それじゃあ、そろそろ僕は、また書きに戻ります。僕らの物語が、ひまわり星に届くその日まで。
 僕がペンを握る理由は、最初から最後まで――たった一人の読者、あなたのため。
 そんな僕が最後に、もう一度だけ問いかけます。
 あなたは今、幸せですか。

 敬具