当然衣装のまま飛び出してしまったので、鉢合わせした写真部の生徒には「誰⁉︎」という反応をされた。特にバレたらいけない、ということもないのに僕は咄嗟に両手で顔を隠してしまい写真部の女子2人に「誰、誰⁉︎ 何このイケメン! 顔見せろや!」と大人しい見た目の割にヤンキー口調で脅されて(写真部ってみんなこんな感じなの⁉︎)と驚いてしまう。
「あー! この王子さまはボク……オレ専用のモデルなので! 2人は早く教室入って!」
「藍田ァ! こんなイケメンを独り占めするなんて狡いだろうがァ!」
「ひぃ! ごめんなさい!」
「わたしたちにも撮らせろやァ!」
「ごめんなさいごめんなさい……え?」
見た目大人しい女子にペコペコ謝るヤンキー姿のそーちゃん。滑稽で、笑ってしまえば僕は女子に腕を掴まれ教室に引き摺り込まれる。
「え、え?」
「藍田ァ! 写真部全員集合させろ! 今から『第一回! 誰が1番このイケメンを映えさせる写真を撮れるのか選手権』を開催する!」
「えっ、王子さまはもう帰る時間……」
「藍田ァ!」
「はいいいい! すみませんんんん! テルくんごめん、あと少しだけ付き合って!」
そーちゃんは別の教室に待機している残りの写真部たちに声をかけに行ったようだった。
男子って女子には敵わないよなあと思いながら。僕は再び背景紙の前に立つことになる。
そーちゃんにヤンキー口調だった写真部女子2人は「イケメンくん、笑って〜」「きゃ〜、かっこいい〜!」と語尾に花が咲くような口調に変わり僕を持て囃す。敵に回すのはやめておこう……ということになり黙って微笑んで指示されたポーズをとる。
地味な『立花 輝紀』の正体がバレそうにはないが、声でバレてしまう可能性も考え、会話するのはやめた。女子たちの指示に頷き、ポーズをとっていく。
「背高〜い、カッコいい〜! ねぇねぇ、指ハートして」
オタクでよかった。指ハートというものがわかる僕は、右手で親指と人差し指をクロスし、カメラのレンズに目を向け微笑む。
パシャッ。
「じゃあ次は両手でハート作って!」
パシャッ。パシャ!
「可愛い〜! 両腕を大きく使ってハートに!」
パシャシャシャシャシャッ!
そーちゃんが求めるものとは全く違うポーズだった。可愛い見た目だが、そーちゃんも嗜好は男子だったのだな……と苦笑する。こんなに可愛いポーズなんかしたことない。女子を喜ばせる男性アイドルという職業は素晴らしい……と心の中でぼんやり思う。
この後は写真部の男子生徒も加わり『第一回! 誰が1番このイケメンを映えさせる写真を撮れるのか選手権』が本当に開催された。
写真部に囲まれながら、それぞれに支持されたポーズをする。「目線こっち!」「こっち見て〜」とひっきりなしに声をかけられ、目が回りそうだった。でも僕が投げ出すことが出来なかったのは、ファインダー越しの皆がとても真剣な表情をしていたからだった。
「文化祭の写真部の企画さあ。このイケメンくんを対象に、どの写真が1番よかったかを投票させる……でよくない?」
写真を撮りながら1人の女子が呟けば皆が「賛成」と言った。「イケメンくん、いい?」と言われ……僕も断る理由はなかったので頷いた。写真部の士気が上がるなら……いいことだよね。
その中で、遠くにぽつんと立って写真を1枚も撮らずにいるそーちゃんが視界に入る。どうして撮らないのだろう。1人で僕を占領していた時はあんなに撮っていたのに。
「イケメンくん、目線こっち!」
声をかけられ、そーちゃんから目を逸らす。
10分ほどで終わり皆が満足に帰っていく中……僕はヘロヘロと椅子に座り、机に凭れる。
「つ、つかれた……こんなに体力使うものなのか……」
「ごめん、テルくん……ボク、止められなくて……」
申し訳なさそうにそーちゃんが顔を覗き込む。そのことに関しては不満はないけど、そーちゃんがカメラを構えなかったことの方が不思議だった。
「どうして、写真撮らなかったの」
「なんか、悪いし……あと、ボクが撮りたいテルくんはそこにはいなくて」
「……自然体じゃなかったということ?」
「うん。……取り繕ってるというか……」
そんな風に見えていたんだ。
「じゃあ、今撮りなよ」
「え?」
「ありのままの僕がいいんでしょ」
長時間被写体になって疲れた僕。
椅子に座って机に伏せて、顔だけそーちゃんに向けている状態。眠くなってきて目を閉じてしまえば……数秒後に「テルくん」と声をかけられる。
「んー……?」
「……おつかれさま」
パシャ、と。
フラッシュを焚かない状態で撮られる。変に気を使っちゃって。
「……眠そうな顔、撮れた」
「間抜けな顔……これは選手権に出せないよなあ……ふふ」
笑った瞬間を逃さず、またそーちゃんはシャッターを切る。
「……ボクはその選手権辞退しようかなと思ってる。確かに皆が取るテルくんはカッコよかったけど……こういう、気の抜けたように笑うテルくんの顔は……誰にも知られたくないって、思う」
写真家あるまじき言葉だ。
写真を撮って、世に広めて、お金になるはずなのに。独占欲が芽生えてしまったのか。
まあ、世の中には趣味で写真撮る人もいるから。そーちゃんは将来写真家になると思っていたけど。
なんだかんだで遅くなってしまった。門限まであと30分。「片付けするから、少し休んでて」と言うそーちゃんに甘えて目を閉じる。片付けていく雑音が心地よい。
「……ほんと、お疲れさま……テルくん」
頭を撫でられる感覚に安堵しながら、意識を飛ばす。
「あー! この王子さまはボク……オレ専用のモデルなので! 2人は早く教室入って!」
「藍田ァ! こんなイケメンを独り占めするなんて狡いだろうがァ!」
「ひぃ! ごめんなさい!」
「わたしたちにも撮らせろやァ!」
「ごめんなさいごめんなさい……え?」
見た目大人しい女子にペコペコ謝るヤンキー姿のそーちゃん。滑稽で、笑ってしまえば僕は女子に腕を掴まれ教室に引き摺り込まれる。
「え、え?」
「藍田ァ! 写真部全員集合させろ! 今から『第一回! 誰が1番このイケメンを映えさせる写真を撮れるのか選手権』を開催する!」
「えっ、王子さまはもう帰る時間……」
「藍田ァ!」
「はいいいい! すみませんんんん! テルくんごめん、あと少しだけ付き合って!」
そーちゃんは別の教室に待機している残りの写真部たちに声をかけに行ったようだった。
男子って女子には敵わないよなあと思いながら。僕は再び背景紙の前に立つことになる。
そーちゃんにヤンキー口調だった写真部女子2人は「イケメンくん、笑って〜」「きゃ〜、かっこいい〜!」と語尾に花が咲くような口調に変わり僕を持て囃す。敵に回すのはやめておこう……ということになり黙って微笑んで指示されたポーズをとる。
地味な『立花 輝紀』の正体がバレそうにはないが、声でバレてしまう可能性も考え、会話するのはやめた。女子たちの指示に頷き、ポーズをとっていく。
「背高〜い、カッコいい〜! ねぇねぇ、指ハートして」
オタクでよかった。指ハートというものがわかる僕は、右手で親指と人差し指をクロスし、カメラのレンズに目を向け微笑む。
パシャッ。
「じゃあ次は両手でハート作って!」
パシャッ。パシャ!
「可愛い〜! 両腕を大きく使ってハートに!」
パシャシャシャシャシャッ!
そーちゃんが求めるものとは全く違うポーズだった。可愛い見た目だが、そーちゃんも嗜好は男子だったのだな……と苦笑する。こんなに可愛いポーズなんかしたことない。女子を喜ばせる男性アイドルという職業は素晴らしい……と心の中でぼんやり思う。
この後は写真部の男子生徒も加わり『第一回! 誰が1番このイケメンを映えさせる写真を撮れるのか選手権』が本当に開催された。
写真部に囲まれながら、それぞれに支持されたポーズをする。「目線こっち!」「こっち見て〜」とひっきりなしに声をかけられ、目が回りそうだった。でも僕が投げ出すことが出来なかったのは、ファインダー越しの皆がとても真剣な表情をしていたからだった。
「文化祭の写真部の企画さあ。このイケメンくんを対象に、どの写真が1番よかったかを投票させる……でよくない?」
写真を撮りながら1人の女子が呟けば皆が「賛成」と言った。「イケメンくん、いい?」と言われ……僕も断る理由はなかったので頷いた。写真部の士気が上がるなら……いいことだよね。
その中で、遠くにぽつんと立って写真を1枚も撮らずにいるそーちゃんが視界に入る。どうして撮らないのだろう。1人で僕を占領していた時はあんなに撮っていたのに。
「イケメンくん、目線こっち!」
声をかけられ、そーちゃんから目を逸らす。
10分ほどで終わり皆が満足に帰っていく中……僕はヘロヘロと椅子に座り、机に凭れる。
「つ、つかれた……こんなに体力使うものなのか……」
「ごめん、テルくん……ボク、止められなくて……」
申し訳なさそうにそーちゃんが顔を覗き込む。そのことに関しては不満はないけど、そーちゃんがカメラを構えなかったことの方が不思議だった。
「どうして、写真撮らなかったの」
「なんか、悪いし……あと、ボクが撮りたいテルくんはそこにはいなくて」
「……自然体じゃなかったということ?」
「うん。……取り繕ってるというか……」
そんな風に見えていたんだ。
「じゃあ、今撮りなよ」
「え?」
「ありのままの僕がいいんでしょ」
長時間被写体になって疲れた僕。
椅子に座って机に伏せて、顔だけそーちゃんに向けている状態。眠くなってきて目を閉じてしまえば……数秒後に「テルくん」と声をかけられる。
「んー……?」
「……おつかれさま」
パシャ、と。
フラッシュを焚かない状態で撮られる。変に気を使っちゃって。
「……眠そうな顔、撮れた」
「間抜けな顔……これは選手権に出せないよなあ……ふふ」
笑った瞬間を逃さず、またそーちゃんはシャッターを切る。
「……ボクはその選手権辞退しようかなと思ってる。確かに皆が取るテルくんはカッコよかったけど……こういう、気の抜けたように笑うテルくんの顔は……誰にも知られたくないって、思う」
写真家あるまじき言葉だ。
写真を撮って、世に広めて、お金になるはずなのに。独占欲が芽生えてしまったのか。
まあ、世の中には趣味で写真撮る人もいるから。そーちゃんは将来写真家になると思っていたけど。
なんだかんだで遅くなってしまった。門限まであと30分。「片付けするから、少し休んでて」と言うそーちゃんに甘えて目を閉じる。片付けていく雑音が心地よい。
「……ほんと、お疲れさま……テルくん」
頭を撫でられる感覚に安堵しながら、意識を飛ばす。



