僕たちの一部始終を見ていた白百合さんに「ちょっと付き合いなさいよ」と言われまた事務所に戻るも……先程とは違う場所に連れて来られる。
「ここはメイク室とスタジオが同じ部屋で少し狭いけど……教室で同じことやってた2人には丁度いいわよね?」
「ほぇ?」
どういうこと? と首を傾げれば「職業体験よ」と白百合さんは僕たちに言う。
「相思相愛の被写体とカメラマンがいるじゃない」
30分後にまた来るから、と白百合さんは手を振ってスタジオから出ていく。
静かな空間に2人きり。
カメラも、照明も、背景紙も、全てプロが扱うもの。
「ほ、んとに……僕が扱ってもいいの……?」
半信半疑、しかし興味津々でそーちゃんはカメラをまじまじと見つめている。
「……僕を撮って、そーちゃん。白百合さんの……粋な計らいに乗っかろう」
僕は隅っこに小さくあるメイク室にそーちゃんを連れていき「僕を王子さまにして」と頼み込む。
「……癖で、実はメイク道具や衣装を持ち歩いてたんだ」
そーちゃんが鞄から取り出すのは、いつものメイク道具一色と、夜空の衣装。
「……僕、やっぱりこの衣装大好きだなあ」
手に触れて感嘆の息を漏らせば、そーちゃんはまた口をモゴモゴする。
(何か、伝えたいことあるのかな)
じっと待ちながら、椅子に座って鏡を見つめると。背後に立ったそーちゃんが鏡越しに僕を見つめる。
「テルくんを一番に輝かせられるのは、ボク……しかいないよね」
そっと肩に手を置かれる。
ドクン、と大きく心臓が跳ねた。
そうだよ、と頷いて肩に置かれた手に僕の手を重ねる。
「そーちゃんの前でだけ、ありのままの僕を曝け出せるんだよ」
僕はきっとモデルは向いていない。
原石だと言われているけれど、他人に撮ってもらうことが苦手だから。でも、そーちゃんの前だけなら平気。寧ろ、自然体で良い笑顔がたくさん撮れる。
羽山くんにぐしゃぐしゃにされた髪型は再びそーちゃんの手によって整えられていく。
メイクも軽く仕上げ、リップグロスを塗られていく。
目の前にあるそーちゃんの可愛い顔。
「……そーちゃん」
「ん?」
「キス、したいな」
「そうだね……。……ふぇ⁉︎」
夢中で唇に塗っていたそーちゃんはポロッと本音が溢れてしまったようだった。顔を真っ赤にさせて「ごごご、ごめん! 変なこと考えて!」と謝るけど。
「キスしたいって思ってくれてたんでしょ? 嬉しいよ。……僕も、ずっと前からしたいなって思ってたから」
「……ほんと?」
そーちゃんの視線が、唇から僕の目に移る。また知らない顔だった。静かだけど、熱い。メイクをしている途中……僕たちは確かめ合うように手を握って……それから、唇を重ねた。
数秒後に離す。鼻と鼻が触れ合う距離。
「……嬉しくて、死んでしまいそう」
ヤンキーが絶対言わないようなセリフに、僕は吹き出してしまう。
「わ、笑うなよぉ!」
「ごめんっ。ほんと、そーちゃんは可愛くて……」
「もう。キスしちゃったから、グロス塗り直さないと」
そう言って再び唇に集中するそーちゃんの唇が、艶になっていて。
またキスしたくなる衝動を必死に堪える。
メイクを終わらせた後に夜空の衣装を羽織り……スタジオに向かい、背景紙の前に立つ。
プロが扱うカメラだったけれど、そーちゃんは少しだけ使い方を確認してからすぐに「撮るよ」と合図をした。
撮ってもらうのは久々だった。
感覚を忘れてしまい……どうすればいいのか分からずそーちゃんと向かい合う。そーちゃんもただこちらを見……目が合い、互いに困惑してることに気付いて同時に吹き出した。
でもその瞬間をそーちゃんは逃さない。シャッターを切られ視界が一瞬眩しくなり、画面にプレビューが表示される。
一緒に覗き込み「うん、自然な表情してる」と褒められる。
「嬉しい」
「白百合さんが戻ってくるまでたくさん撮っちゃおう」
モデルの立ち方とか表情とか、僕にはよく分からないままだった。ただそーちゃんを見つめて、その表情を撮られていくだけ。
その時の写真が素敵だと言われるなら……僕を輝かしてくれるのはやはりそーちゃんの存在なのだ。
撮って、撮って、撮りまくって。
先程は嫌だった上裸もそーちゃんの前でならノリノリで出来て……そーちゃんのためだけなら『最高の被写体』になれていると感じた。
「そっか……そういうことか。ボク……ただ写真家になりたいわけじゃなくて。テルくんだけを撮りたいんだ」
撮り続けながら、そーちゃんは自分が今後していきたいことの答えを見つける。
「……誰にも邪魔されない、2人だけの世界だね」
「ボクたちだけで、そんな仕事出来たらいいのにね……」
モデルと写真家としてここまで輝けるのは、この2人だから。人が関わってくると違ってくる。
「じゃあ、SNS活用してみたら?」
いつの間にか戻って来ていた白百合さんの言葉に、僕とそーちゃんは首を傾げた。
「ここはメイク室とスタジオが同じ部屋で少し狭いけど……教室で同じことやってた2人には丁度いいわよね?」
「ほぇ?」
どういうこと? と首を傾げれば「職業体験よ」と白百合さんは僕たちに言う。
「相思相愛の被写体とカメラマンがいるじゃない」
30分後にまた来るから、と白百合さんは手を振ってスタジオから出ていく。
静かな空間に2人きり。
カメラも、照明も、背景紙も、全てプロが扱うもの。
「ほ、んとに……僕が扱ってもいいの……?」
半信半疑、しかし興味津々でそーちゃんはカメラをまじまじと見つめている。
「……僕を撮って、そーちゃん。白百合さんの……粋な計らいに乗っかろう」
僕は隅っこに小さくあるメイク室にそーちゃんを連れていき「僕を王子さまにして」と頼み込む。
「……癖で、実はメイク道具や衣装を持ち歩いてたんだ」
そーちゃんが鞄から取り出すのは、いつものメイク道具一色と、夜空の衣装。
「……僕、やっぱりこの衣装大好きだなあ」
手に触れて感嘆の息を漏らせば、そーちゃんはまた口をモゴモゴする。
(何か、伝えたいことあるのかな)
じっと待ちながら、椅子に座って鏡を見つめると。背後に立ったそーちゃんが鏡越しに僕を見つめる。
「テルくんを一番に輝かせられるのは、ボク……しかいないよね」
そっと肩に手を置かれる。
ドクン、と大きく心臓が跳ねた。
そうだよ、と頷いて肩に置かれた手に僕の手を重ねる。
「そーちゃんの前でだけ、ありのままの僕を曝け出せるんだよ」
僕はきっとモデルは向いていない。
原石だと言われているけれど、他人に撮ってもらうことが苦手だから。でも、そーちゃんの前だけなら平気。寧ろ、自然体で良い笑顔がたくさん撮れる。
羽山くんにぐしゃぐしゃにされた髪型は再びそーちゃんの手によって整えられていく。
メイクも軽く仕上げ、リップグロスを塗られていく。
目の前にあるそーちゃんの可愛い顔。
「……そーちゃん」
「ん?」
「キス、したいな」
「そうだね……。……ふぇ⁉︎」
夢中で唇に塗っていたそーちゃんはポロッと本音が溢れてしまったようだった。顔を真っ赤にさせて「ごごご、ごめん! 変なこと考えて!」と謝るけど。
「キスしたいって思ってくれてたんでしょ? 嬉しいよ。……僕も、ずっと前からしたいなって思ってたから」
「……ほんと?」
そーちゃんの視線が、唇から僕の目に移る。また知らない顔だった。静かだけど、熱い。メイクをしている途中……僕たちは確かめ合うように手を握って……それから、唇を重ねた。
数秒後に離す。鼻と鼻が触れ合う距離。
「……嬉しくて、死んでしまいそう」
ヤンキーが絶対言わないようなセリフに、僕は吹き出してしまう。
「わ、笑うなよぉ!」
「ごめんっ。ほんと、そーちゃんは可愛くて……」
「もう。キスしちゃったから、グロス塗り直さないと」
そう言って再び唇に集中するそーちゃんの唇が、艶になっていて。
またキスしたくなる衝動を必死に堪える。
メイクを終わらせた後に夜空の衣装を羽織り……スタジオに向かい、背景紙の前に立つ。
プロが扱うカメラだったけれど、そーちゃんは少しだけ使い方を確認してからすぐに「撮るよ」と合図をした。
撮ってもらうのは久々だった。
感覚を忘れてしまい……どうすればいいのか分からずそーちゃんと向かい合う。そーちゃんもただこちらを見……目が合い、互いに困惑してることに気付いて同時に吹き出した。
でもその瞬間をそーちゃんは逃さない。シャッターを切られ視界が一瞬眩しくなり、画面にプレビューが表示される。
一緒に覗き込み「うん、自然な表情してる」と褒められる。
「嬉しい」
「白百合さんが戻ってくるまでたくさん撮っちゃおう」
モデルの立ち方とか表情とか、僕にはよく分からないままだった。ただそーちゃんを見つめて、その表情を撮られていくだけ。
その時の写真が素敵だと言われるなら……僕を輝かしてくれるのはやはりそーちゃんの存在なのだ。
撮って、撮って、撮りまくって。
先程は嫌だった上裸もそーちゃんの前でならノリノリで出来て……そーちゃんのためだけなら『最高の被写体』になれていると感じた。
「そっか……そういうことか。ボク……ただ写真家になりたいわけじゃなくて。テルくんだけを撮りたいんだ」
撮り続けながら、そーちゃんは自分が今後していきたいことの答えを見つける。
「……誰にも邪魔されない、2人だけの世界だね」
「ボクたちだけで、そんな仕事出来たらいいのにね……」
モデルと写真家としてここまで輝けるのは、この2人だから。人が関わってくると違ってくる。
「じゃあ、SNS活用してみたら?」
いつの間にか戻って来ていた白百合さんの言葉に、僕とそーちゃんは首を傾げた。



