僕はあなたの星になる

「そう……最近オファーした子が次々に辞めることが多かったのは……羽山くんが原因だったのね……」

 防犯ブザーの音に気づいたカメラマンさんやサクマさんがメイク室に戻って来てくれて僕たちに介入してくれた。

 僕を殴っていた羽山くんの姿をしっかり見たサクマさんは、あの後羽山くんをきっちり絞っていた。

 僕は別室に連れて行かれ、殴られた箇所を冷やしていく。(あざ)にならなければ、いいけど。

 そして白百合さんが来てくれて事情を説明した。

「まさかそんな悪質なことが起きてるなんて……羽山くんはもう、出禁かしら」

 それが一番良いかもしれない。僕よりも酷い目に遭った子はいるかもしれないから。でも。

『トップになる』

『いつかサクマさんを担当にする』

 そう言っていた羽山くんの言葉は嘘じゃないと思う。

「……1週間のお試し期間だったけど。白百合さん、ごめん。僕、今日で辞める」
「羽山くんが……原因?」
「ううん。気付いたんだ。僕……そーちゃんだけの被写体でいたい」

 白百合さんの目が大きく見開かれる。

「誘ってもらったのにごめん。多分僕、そーちゃんじゃないと……SNSで拡散されたようなモデルにはならないと思う……」

 頭を下げる。
 拡散されたのは。
 全部ぜんぶ、そーちゃんが僕を撮ったものだから。

 そーちゃんがいないと、僕は。
 輝けない。

「……そう。わかったわ。やっぱりお試し期間は必要だったわね」
「僕が辞めるから……代わりに、羽山くんを残してあげられないかな?」

 白百合さんは「何言ってんのよ」と言う顔だ。僕もそう思う。だけど……まだ、やり直しがきくと信じて。

「意地悪な子だったよ。ずっと脇抓ってくるし。……でも、他の子を蹴り落としてまでトップに立ちたいという執念は本物。やり方が良くないから……そこら辺は、大人やサクマさん、白百合さんの力で何とかしてほしいけど」

 お願いします、と頭を下げる。
 僕がもう2度と会わないであろう人種。

 ダイヤモンドの原石と言われた子。
 こんなしょうもないことで人生棒に振らないで。しっかり悪いことを受け止めて、芸能界を生き残ってほしい。

「……ほんと、お人好しよね。社長(パパ)に立花くんの希望は伝えておくわ」

 事務所の玄関まで白百合さんに見送られる。すると「関係者以外立ち入り禁止です! こら! 入ってはいけません!」と警備員さんに止められている学生。……見覚えある姿。

「通してください、何か遭ったのかもしれない――」
「……そーちゃん」

 警備員さんに止められているのは、紛れもなくそーちゃんだった。