坂下くんが「芸能事務所入るのか⁉︎」と叫んでしまったから、クラス中の視線がこちらに集まる。カァッと一気に顔が熱くなる感覚に顔を俯け、自分の席に座る。右隣にいる坂下くんは僕の机に手を乗せ「なあなあ!」と尋ねてくる。
「どうなの、マジなの⁉︎」
数分前に白百合さんと話しただけなのに!
どうして人伝ての話は広まりやすいのだろう。
「僕は断ろうと――」
「なんでだよ! チャンスだろ! 一回やってみろよ! そしたら俺ゲイノウジンと友達だぜ〜! くぅ〜! なあなあ、サインとか今のうちに決めておこうぜ!」
僕は何も言っていないのに、僕の机の上でノートを広げて「立花」と文字をデザイン風に描いていく坂下くん。
「あの……僕はそんなつもりないから」
一応伝えるも、サインのデザインに夢中な坂下くんの耳には届かなかったようだ。
クラスにいるバドミントン部や卓球部の生徒からも「マジかよ、すげえじゃん」「羨ましい〜」なんて声をかけられていく。
「そうだ、今のうちに写真みんなと撮ろうぜ。人気になった時のプライベート写真で公開して良いからさ」
坂下くんはスマホを取り出して僕の肩を組みピースをする。僕は……否定するのが面倒臭くなり口角を上げて同じようにピースをした。次第に「俺も」「わたしも」と声をかけられて数日前の文化祭のようになっていく。
「おい、席に着け。本鈴が鳴ったぞ。先生がもうすぐ来る」
僕の左隣でじっとしていた矢野くんの一声に、皆が慌ただしく席に戻っていく。そして数秒後に先生は本当に教室に入ってきた。
(流石、矢野くん……冷静沈着。でも……今回は僕を助けてくれたんだよね)
日直の「きりーつ。れいー」の騒がしくなる音に紛れながら矢野くんに「ありがとう」と伝える。
「悪いな。坂下のヤツ、立花がスカウトされたことが本当に嬉しいみたいなんだ。悪気は無いんだよ」
小さな声でそう返ってくる。
坂下くんは教科書でノートを隠しながら、未だにサインのデザインを考えている。変な人だ。でも、僕よりもこの状況を喜んでくれている人。
(矢野くんは坂下くんの心がいつもわかって、すごいな)
僕は。
そーちゃんの気持ちが、今はよくわからない。
気持ち、通じ合えてると思っていたのに。
何かが、僕らの歯車を狂わせていく。
そんな気がして、落ち着かない。
「立花。授業終わったら、またみんなと写真撮ってくれよ」
小さな声でお願いする坂下くんに、笑って承諾した。
家に帰るのは遅くなりそうだ。
「どうなの、マジなの⁉︎」
数分前に白百合さんと話しただけなのに!
どうして人伝ての話は広まりやすいのだろう。
「僕は断ろうと――」
「なんでだよ! チャンスだろ! 一回やってみろよ! そしたら俺ゲイノウジンと友達だぜ〜! くぅ〜! なあなあ、サインとか今のうちに決めておこうぜ!」
僕は何も言っていないのに、僕の机の上でノートを広げて「立花」と文字をデザイン風に描いていく坂下くん。
「あの……僕はそんなつもりないから」
一応伝えるも、サインのデザインに夢中な坂下くんの耳には届かなかったようだ。
クラスにいるバドミントン部や卓球部の生徒からも「マジかよ、すげえじゃん」「羨ましい〜」なんて声をかけられていく。
「そうだ、今のうちに写真みんなと撮ろうぜ。人気になった時のプライベート写真で公開して良いからさ」
坂下くんはスマホを取り出して僕の肩を組みピースをする。僕は……否定するのが面倒臭くなり口角を上げて同じようにピースをした。次第に「俺も」「わたしも」と声をかけられて数日前の文化祭のようになっていく。
「おい、席に着け。本鈴が鳴ったぞ。先生がもうすぐ来る」
僕の左隣でじっとしていた矢野くんの一声に、皆が慌ただしく席に戻っていく。そして数秒後に先生は本当に教室に入ってきた。
(流石、矢野くん……冷静沈着。でも……今回は僕を助けてくれたんだよね)
日直の「きりーつ。れいー」の騒がしくなる音に紛れながら矢野くんに「ありがとう」と伝える。
「悪いな。坂下のヤツ、立花がスカウトされたことが本当に嬉しいみたいなんだ。悪気は無いんだよ」
小さな声でそう返ってくる。
坂下くんは教科書でノートを隠しながら、未だにサインのデザインを考えている。変な人だ。でも、僕よりもこの状況を喜んでくれている人。
(矢野くんは坂下くんの心がいつもわかって、すごいな)
僕は。
そーちゃんの気持ちが、今はよくわからない。
気持ち、通じ合えてると思っていたのに。
何かが、僕らの歯車を狂わせていく。
そんな気がして、落ち着かない。
「立花。授業終わったら、またみんなと写真撮ってくれよ」
小さな声でお願いする坂下くんに、笑って承諾した。
家に帰るのは遅くなりそうだ。



