「立花は……藍田と男を接触させたくなくて、連絡先を交換しようとしたら腕を取られて人気のない場所に連れ込まれた、と」
「……はい」
「で、万事休すとなったところに、白百合が防犯ブザーで追い払って校門まで逃げ込んだ……ということで合ってるか?」
「……はい」
「そうか。……危なかったな。被害に男子も女子も関係ないからな」
1限目の授業を受けられそうにもなかった僕は保健室のベッドで体を横にしながら、朝のHRを終えた担任に詳しく説明をしていく。
「藍田は教室に戻っても……」
「いや、ボク……オレまだここにいます」
「……そうか。2人は午前中は出席免除しておく。午後も駄目そうなら……連絡してくれ」
担任はそれだけ言って授業に向かった。カーテンで仕切られた2人だけの空間。
「……そーちゃんごめん。休ませて」
体をベッドに横にし、深く深呼吸をするも心臓が未だにドドドドッ、と激しく脈立って苦しい。
そーちゃんは椅子に座って僕の様子を窺っている。
「残るって言ったけど……1人の方がよかったらオレ教室戻るから」
僕にとって今は1人がいいのか、付き添いがいた方がいいのか。そーちゃんだってわからないのだろう。
でも立ちあがろうとした気配に慌てて手を掴んで「行かないで」と言ってしまうくらいには……僕は、1人は心細かった。
「……わかった。一緒にいる」
そーちゃんは優しく言って、そっと僕の頭を撫でていく。心地良い。最近はモデルになることが少なくなったから、頭に触れたり顔に触れられることがなくなった。最近告白される回数が減ってきたと思ったのに、変質者に目をつけられてしまった。
だったらまだ告白されまくる方がよかった。
勝手に抱きしめられて、キスされそうになって……あの時のゾワゾワッとした感覚を思い出してしまい、ベッドの中で蹲る。
「うう……」
「テルくん。……怖かったね」
僕の手を両手で握って。
体を前のめりにして、そーちゃん自身の頬に押し当てる。
「……モデルにしない方がよかったのかな」
そーちゃんが呟く。
「テルくん初めは嫌がってたし、ボクが強引に写真撮ったようなものだったし……テルくんが誰にも見つかることがなければ、文化祭にも出なくて、変な人に目をつけられることもなくて……」
その方が僕にとっては平穏だっただろう。でも今まで通りの日常を過ごしていたら、こんなにそーちゃんと仲良くなることはなかった。
「……色々あったけど。……そーちゃんと出会ったことまで、否定したくないよ」
「……テルくん」
「嫌なことを忘れるように眠りたいのに、心臓が煩くて苦しいんだ。……そーちゃん、一緒に眠ってくれない?」
布団を捲り誘う。
ここまで出来るのは、そーちゃんは断らないと確信があったから。理由もないのに。でもそーちゃんは、僕のためになんでもやってくれる。優しいから。
少し驚いた顔をした後「わかった」とブレザーを脱いでから……一緒に横になる。そーちゃんの方が背が低いから、僕が抱き込むような形になる。
「なんか……そーちゃんといると落ち着くんだよね」
「だったら……ずっといるよ」
そーちゃんの手が伸びて、僕の頬に触れた。親指の腹でそっと目尻を撫でられる。
メイクしてもらってた時、よく触れてもらってたな。慣れないことしていたのに落ち着いていられたのは、触れるのがそーちゃんだったからかな。
「ねぇそーちゃん。……痴漢された時って、どんな気持ちだった……?」
僕の質問に、目尻を撫で続けながらそーちゃんは「うーん」と考えている。僕を見つめていた目は段々と暗くなって、目を伏せられる。
「怖かったよ。身動き取れない中で、勝手に許してない部分を触られていくから。今よりも身長低かったし、黒髪だったし……格好の獲物だったんだと思う」
触られるのが怖かったというそーちゃんは、今僕に抱きしめられている。許してもらえてるのだと嬉しくなり、背中に回す腕の力を込める。
「声も出なくて、絶望しかなかった時に……王子さまに助けられたんだよね」
「……それって本当に僕だったのかな。僕自身変質者に襲われる間抜けな奴なのに」
「忘れないよ。助けてくれた人の顔は。テルくんが覚えていないだけで。……それから、テルくんは間抜けじゃない。テルくんの優しさを利用した姑息な男だよ」
僕は悪くないと否定してくれる。
脇が甘いと校門前で怒られた事実もあるけれど。でも、手を出してくる男が悪いのだと言ってくれる。
別の意味で胸がきゅうっと苦しくなり、涙が溢れそうになった。「ありがと」と短く返し、さらにそーちゃんを強く抱き込む。
「ボクの方が身長高かったら……テルくんを抱き込めたのにな」
金髪で、耳にピアスつけて、いかにもヤンキーなそーちゃんは僕に抱き込まれている。見た目が怖い番犬が今は大人しいわんこのようだ。
「ふふ……僕はそーちゃんが可愛くて大好きだな……」
抱き心地も良い。小さくて可愛い。
これで大きかったら、カッコ良すぎて死んでしまいそうだ。
そーちゃんの体温に意識が微睡んでいく。瞼が重くなり閉じていくと「大好きって……」と戸惑うそーちゃんの声が聞こえる。
「ボクは……オレは、いつでもテルくんを守れる存在でありたいよ……」
そう言いながら、今度は僕の胸元に顔を寄せて制服をきゅっと掴むから。
やっぱり可愛いなんて思ってしまう。
僕たちはそのまま2人で寝落ちしてしまい、正午になって保健室の先生に声をかけられるまでぶっ通しで眠っていた。
「……はい」
「で、万事休すとなったところに、白百合が防犯ブザーで追い払って校門まで逃げ込んだ……ということで合ってるか?」
「……はい」
「そうか。……危なかったな。被害に男子も女子も関係ないからな」
1限目の授業を受けられそうにもなかった僕は保健室のベッドで体を横にしながら、朝のHRを終えた担任に詳しく説明をしていく。
「藍田は教室に戻っても……」
「いや、ボク……オレまだここにいます」
「……そうか。2人は午前中は出席免除しておく。午後も駄目そうなら……連絡してくれ」
担任はそれだけ言って授業に向かった。カーテンで仕切られた2人だけの空間。
「……そーちゃんごめん。休ませて」
体をベッドに横にし、深く深呼吸をするも心臓が未だにドドドドッ、と激しく脈立って苦しい。
そーちゃんは椅子に座って僕の様子を窺っている。
「残るって言ったけど……1人の方がよかったらオレ教室戻るから」
僕にとって今は1人がいいのか、付き添いがいた方がいいのか。そーちゃんだってわからないのだろう。
でも立ちあがろうとした気配に慌てて手を掴んで「行かないで」と言ってしまうくらいには……僕は、1人は心細かった。
「……わかった。一緒にいる」
そーちゃんは優しく言って、そっと僕の頭を撫でていく。心地良い。最近はモデルになることが少なくなったから、頭に触れたり顔に触れられることがなくなった。最近告白される回数が減ってきたと思ったのに、変質者に目をつけられてしまった。
だったらまだ告白されまくる方がよかった。
勝手に抱きしめられて、キスされそうになって……あの時のゾワゾワッとした感覚を思い出してしまい、ベッドの中で蹲る。
「うう……」
「テルくん。……怖かったね」
僕の手を両手で握って。
体を前のめりにして、そーちゃん自身の頬に押し当てる。
「……モデルにしない方がよかったのかな」
そーちゃんが呟く。
「テルくん初めは嫌がってたし、ボクが強引に写真撮ったようなものだったし……テルくんが誰にも見つかることがなければ、文化祭にも出なくて、変な人に目をつけられることもなくて……」
その方が僕にとっては平穏だっただろう。でも今まで通りの日常を過ごしていたら、こんなにそーちゃんと仲良くなることはなかった。
「……色々あったけど。……そーちゃんと出会ったことまで、否定したくないよ」
「……テルくん」
「嫌なことを忘れるように眠りたいのに、心臓が煩くて苦しいんだ。……そーちゃん、一緒に眠ってくれない?」
布団を捲り誘う。
ここまで出来るのは、そーちゃんは断らないと確信があったから。理由もないのに。でもそーちゃんは、僕のためになんでもやってくれる。優しいから。
少し驚いた顔をした後「わかった」とブレザーを脱いでから……一緒に横になる。そーちゃんの方が背が低いから、僕が抱き込むような形になる。
「なんか……そーちゃんといると落ち着くんだよね」
「だったら……ずっといるよ」
そーちゃんの手が伸びて、僕の頬に触れた。親指の腹でそっと目尻を撫でられる。
メイクしてもらってた時、よく触れてもらってたな。慣れないことしていたのに落ち着いていられたのは、触れるのがそーちゃんだったからかな。
「ねぇそーちゃん。……痴漢された時って、どんな気持ちだった……?」
僕の質問に、目尻を撫で続けながらそーちゃんは「うーん」と考えている。僕を見つめていた目は段々と暗くなって、目を伏せられる。
「怖かったよ。身動き取れない中で、勝手に許してない部分を触られていくから。今よりも身長低かったし、黒髪だったし……格好の獲物だったんだと思う」
触られるのが怖かったというそーちゃんは、今僕に抱きしめられている。許してもらえてるのだと嬉しくなり、背中に回す腕の力を込める。
「声も出なくて、絶望しかなかった時に……王子さまに助けられたんだよね」
「……それって本当に僕だったのかな。僕自身変質者に襲われる間抜けな奴なのに」
「忘れないよ。助けてくれた人の顔は。テルくんが覚えていないだけで。……それから、テルくんは間抜けじゃない。テルくんの優しさを利用した姑息な男だよ」
僕は悪くないと否定してくれる。
脇が甘いと校門前で怒られた事実もあるけれど。でも、手を出してくる男が悪いのだと言ってくれる。
別の意味で胸がきゅうっと苦しくなり、涙が溢れそうになった。「ありがと」と短く返し、さらにそーちゃんを強く抱き込む。
「ボクの方が身長高かったら……テルくんを抱き込めたのにな」
金髪で、耳にピアスつけて、いかにもヤンキーなそーちゃんは僕に抱き込まれている。見た目が怖い番犬が今は大人しいわんこのようだ。
「ふふ……僕はそーちゃんが可愛くて大好きだな……」
抱き心地も良い。小さくて可愛い。
これで大きかったら、カッコ良すぎて死んでしまいそうだ。
そーちゃんの体温に意識が微睡んでいく。瞼が重くなり閉じていくと「大好きって……」と戸惑うそーちゃんの声が聞こえる。
「ボクは……オレは、いつでもテルくんを守れる存在でありたいよ……」
そう言いながら、今度は僕の胸元に顔を寄せて制服をきゅっと掴むから。
やっぱり可愛いなんて思ってしまう。
僕たちはそのまま2人で寝落ちしてしまい、正午になって保健室の先生に声をかけられるまでぶっ通しで眠っていた。



