人集りが割れる。近衛兵の時のように掻き分けるわけではなく、群れを構成する人々が、そのひとりひとりが、まるで示し合わせたかのようにすっと身体を退け、自然に作られた一本の路。小さい頃に読んだ宗教の本の中に、神の力を用いて海の水を左右に分けるという預言者のシーンが描かれていたけれど。目の前の光景は、正にそれだった。真紅の絨毯の上を颯爽と歩む男の姿は、さながら神話の中で、水の引けた海底の路を堂々と歩む預言者のようで。
どうして、と、その人影を呆然と見つめながら、レティシアは思う。どうしてこんなところにいるの、と。だってあんなにも王城へ行くのを嫌がっていたじゃない、とも。
一歩、また一歩と、力強い確かな足取りで男が近付いてくる度、腰に結んだ布が、連なるように取り付けられた金装飾と共に、ふわりと揺れる。金糸や銀糸でたっぷりと刺繍が施された丈長の上着、開けた襟元から覗く逞しい胸板、片側にだけ羽織った濃紺の布地に鏤められた幾つもの宝石、ゆったりとしたズボンの裾で輝く黄金のアンクレット。首元では、まるで太陽を溶かしたような色のネックレスが、シャンデリアの灯りを浴びて神々しいきらめきを弾いている。
ほんの数日前まで、平民と違わぬ装いをしていたのに。今眼の前にいるのは、しかし、それが本来の姿なのだと否応なく痛感させられる。そして同時に、彼との圧倒的な身分差までも容赦なく突きつけられるような気がして、レティシアは思わず息を呑んだ。
木杯いっぱいに注がれた薔薇酒、根菜ともつの煮込み、祝福の赤い花、幾つも連なった露店、小ぶりな雑貨店、質の悪い安価な釣り竿、墓参り、石の上で跳ねる二匹の魚――。思い出せば思い出すほど、なんて失礼なことをしたのだろう、と自責の念が込み上げる。彼はそんなこと望まない、と分かっていても。それでも皇族然とした姿を前にすると、畏敬を抱かずにはいられなかった。幾ら親しい間柄とはいえ。それでも彼は――大帝国の皇太子なのだから。
挨拶をする気になったのだろうか。それとも、ふたりの婚約を祝いに来たのだろうか。でも、いったい何故急に。わけが分からなくて、頭の中はぐちゃぐちゃだった。この場を知り得た経緯も、彼が此処にいる理由も、そして――目と鼻の先で足を止めたその意図も。まるで理解できず、レティシアは唖然と金の双眸を見上げ、大きく見開かせていた目を、ゆっくりと瞬いた。
そんなレティシアを見つめ、彼は――イヴァンはふっと解けたように微笑んだ。先日川辺で見たそれと何ら変わらない、彼特有のあたたかさを滲ませた笑顔。それはなんとも奇妙な感覚だった。身なりはまるで違うというのに、穏やかな笑みも、向けられる眼差しのやわらかさも、それらの“変わらない”ものが与えてくれる、不思議な安心感。
いつの間にか周囲のざわつきはやみ、代わりに、水を打ったような静寂が大広間を包みこんでいる。大勢いる人々の中で、誰よりこの状況を把握し、そして俯瞰して見ているのはイヴァンだけだろう、と、レティシアは忙しなく瞬きを繰り返しながら思う。そもそも、この張り詰めた空気を作り出したのは、他でもない彼自身なのだから。
「遅くなって悪かった」
未だ驚きに全てを奪われたまま、何も言えずにただ立ち尽くすことしかできないレティシアに、しかしイヴァンはさして気に留めたふうもなく平然と笑みを深めた。流石はゼハディア帝国の皇太子と言うべきだろうか。大衆の視線を一身に浴びながらも、彼は先日までと変わらない様子で落ち着き払っている。
「これはこれは、イヴァン殿下。お久しぶりですね」
静寂を破ったのは、声をかけられたレティシアではなく、アルバートだった。イヴァンの視線がするりと離れ、レティシアの頭越しに、アルバートへと向けられる。その瞳は笑みを湛えていながら、けれどどこか冷ややかで。
初めてみるわけでは決してないけれど――。イヴァンの双眸を見つめたまま、レティシアはぼんやりと思う。初めてみるわけではないけれど、でも、彼でもそういう目をするのか、と。まるで新たな気付きのように。ここ最近はずっと、やわらかく綻んだ顔ばかり見ていたからだろうか。
「まさか、私の婚約披露の場に足を運んでくださるとは。ゼハディア帝国の皇太子に祝していただけるなんて、なんと光栄な――」
「べつに、貴方の婚約を祝いに来たつもりはないんだが」
折角緩みかけた場の空気が、イヴァンの一言によって再び――いや、先程までよりも更に一層――張り詰める。アルバートが息を呑んだのを気配で感じ、レティシアは場違いにも感心してしまう。本当は心配をした方が良いのだろうけれど。それでも、随分とあけっぴろげに言うものだな、と、いっそ清々しく思った。
「それは、どういう……」
「どうもこうも、言葉の通りでしかない」
そう言って、イヴァンはにっこりと、実に惚れ惚れとするような爽やかな笑みを満面に浮かべた。
「私はただ、彼女をエスコートする為に此処へ来ただけだ」
金の瞳にちらりと一瞥され、レティシアはぎょっとする。なんと容易く薄氷を踏み抜くのだろう、この男は。案の定、四方八方から向けられる視線に晒され、レティシアは頭を抱えたくなった。一体この場をどう収めるつもりなのだろう。どういうことだ、と、問いというよりも責めるようなアルバートの視線が、他のどれより深く突き刺さる。簡単に答えられるものなら答えたいが、しかしこんな時に限って、うまく躱せる言葉がひとつも浮かばない。
「レティシアはもう、私の婚約者ではありません。イヴァン殿下ほどの方がエスコートをするような価値ある人間では――」
「私が誰のエスコートをしようが、私の勝手では? 第一、貴方の婚約者でなければ価値がないなどと宣うのは、傲慢も甚だしいと思うが」
すっと、イヴァンの口角が持ち上がる。
「彼女を価値のない人間と言うのなら――そんな貴方の方こそ、私には何の価値もない人間でしかない」
そんな人間の婚約を、何故わざわざ祝ってやらなければならんのか。
いつもと変わらない調子でありながら、その実、切れ味の鋭い刃のような冷たさを潜ませた、誰をも寄せ付けない圧倒的な“強者”の声。自国の王太子を“価値のない人間”と蔑まれたにもかかわらず、しかし、大広間は相も変わらずしんとしたままだ。大臣や公爵、枢機卿といった面々がいてもなお。誰からも、何処からも、反論の声は上がらない。
それもそのはずだ。言い返せるはずもない。相手はゼハディア帝国の次期皇帝なのだから。遥かに国力の違う――エルミラード王国など到底足元にも及ばない――大帝国の後継者に、一体誰が盾をつけようか。エルミラードにとっては何としてでも繋がりを持っていたい国だが、しかし、ゼハディアが必ずしもそうとは限らない。梯子は簡単に外せるのだ。ゼハディアの意思だけで、いつでも。そういう力関係が、両国の間にはある。表向きは“対等”と“友好”を装っていても。それが現実だ。
唖然とする一同をよそに、イヴァンはなんとも優雅に微笑んでいる。たった今しがたの発言など――それが与える影響や衝撃など――まるでなかったかのように。
アルバートにしてみればたまったものではないだろう、と、その見慣れたかんばせを見つめたままレティシアは思う。状況は、どう考えても彼の方が不利だ。いつもアルバートを持て囃す大臣や枢機卿たちも、イヴァンが相手となれば助け舟など出せまい。
その上、社交の場というのは、常に身分の高低で支配権が変わる。パーティーの主催はアルバートである為、主導権こそ彼にあるものの、しかし、重要なのは“誰が仕切るか”ではなく、“誰の存在が場の空気を決めるか”という力学だ。普通であればアルバートこそその立場にあるものの、けれどイヴァンという格上の存在がいるだけで、それは一気に――いとも容易く――引っ繰り返る。つまり、敬意の優先順位、場の支配権、その他一切のもの全て、イヴァンが中心、或いは頂点となるのだ。
自身の婚約発表という、新しい門出を祝する輝かしい場でのそれは、アルバートにとって――ミリーも含め――屈辱以外の何者でもないだろう。しかもイヴァンが重要視しているのは彼ではない、と、躊躇いなくきっぱりと言い放たれては――しかも衆目の中で――、なおのこと。王太子という威厳を踏み躙られたも同然だろうから。
「皇太子ともあろう方が、随分な物言いですね。それが両国の関係に、どう響くか分かった上でのお言葉ですか。もし我が父――陛下が耳にされたら」
「元はと言えば貴方が撒いた火種でしょう」
ひりついたアルバートの声など意にも介さず、イヴァンはくすりと笑い声をこぼして、戯けたように首を傾けた。
「こんな私でも、天秤くらい持ち合わせている。無論、穏便に済ます術や分別も。だが、それを“しなくて良い”という判断に至っただけだ。だいたい、陛下のお力を借りる前に、先ずは己で問題を解決しようとされては如何か」
それでこそ、王国の未来を背負う者かと。
突き放すようにそう付け加え、イヴァンはゆっくりとひとつ瞬いた。そうして、アルバートから逸した視線をレティシアへと向ける。そこにはもう、あの刃のような冷たさはまるでなく、いつもの彼らしい、ほっと心を蕩けさせるような、あたたかなやさしさが滲んでいた。
「相変わらず、君は何を着ても似合うな」
そう言って、イヴァンはレティシアの右手を恭しく掬い上げると、手の甲に、そっとやわらかく口付けを落とした。視線はずっと、彼女の瞳を見つめたまま。僅かに唇の端を持ち上げて。
「折角のパーティーだ。俺と踊ってくれないか、レティシア」
どうして、と、その人影を呆然と見つめながら、レティシアは思う。どうしてこんなところにいるの、と。だってあんなにも王城へ行くのを嫌がっていたじゃない、とも。
一歩、また一歩と、力強い確かな足取りで男が近付いてくる度、腰に結んだ布が、連なるように取り付けられた金装飾と共に、ふわりと揺れる。金糸や銀糸でたっぷりと刺繍が施された丈長の上着、開けた襟元から覗く逞しい胸板、片側にだけ羽織った濃紺の布地に鏤められた幾つもの宝石、ゆったりとしたズボンの裾で輝く黄金のアンクレット。首元では、まるで太陽を溶かしたような色のネックレスが、シャンデリアの灯りを浴びて神々しいきらめきを弾いている。
ほんの数日前まで、平民と違わぬ装いをしていたのに。今眼の前にいるのは、しかし、それが本来の姿なのだと否応なく痛感させられる。そして同時に、彼との圧倒的な身分差までも容赦なく突きつけられるような気がして、レティシアは思わず息を呑んだ。
木杯いっぱいに注がれた薔薇酒、根菜ともつの煮込み、祝福の赤い花、幾つも連なった露店、小ぶりな雑貨店、質の悪い安価な釣り竿、墓参り、石の上で跳ねる二匹の魚――。思い出せば思い出すほど、なんて失礼なことをしたのだろう、と自責の念が込み上げる。彼はそんなこと望まない、と分かっていても。それでも皇族然とした姿を前にすると、畏敬を抱かずにはいられなかった。幾ら親しい間柄とはいえ。それでも彼は――大帝国の皇太子なのだから。
挨拶をする気になったのだろうか。それとも、ふたりの婚約を祝いに来たのだろうか。でも、いったい何故急に。わけが分からなくて、頭の中はぐちゃぐちゃだった。この場を知り得た経緯も、彼が此処にいる理由も、そして――目と鼻の先で足を止めたその意図も。まるで理解できず、レティシアは唖然と金の双眸を見上げ、大きく見開かせていた目を、ゆっくりと瞬いた。
そんなレティシアを見つめ、彼は――イヴァンはふっと解けたように微笑んだ。先日川辺で見たそれと何ら変わらない、彼特有のあたたかさを滲ませた笑顔。それはなんとも奇妙な感覚だった。身なりはまるで違うというのに、穏やかな笑みも、向けられる眼差しのやわらかさも、それらの“変わらない”ものが与えてくれる、不思議な安心感。
いつの間にか周囲のざわつきはやみ、代わりに、水を打ったような静寂が大広間を包みこんでいる。大勢いる人々の中で、誰よりこの状況を把握し、そして俯瞰して見ているのはイヴァンだけだろう、と、レティシアは忙しなく瞬きを繰り返しながら思う。そもそも、この張り詰めた空気を作り出したのは、他でもない彼自身なのだから。
「遅くなって悪かった」
未だ驚きに全てを奪われたまま、何も言えずにただ立ち尽くすことしかできないレティシアに、しかしイヴァンはさして気に留めたふうもなく平然と笑みを深めた。流石はゼハディア帝国の皇太子と言うべきだろうか。大衆の視線を一身に浴びながらも、彼は先日までと変わらない様子で落ち着き払っている。
「これはこれは、イヴァン殿下。お久しぶりですね」
静寂を破ったのは、声をかけられたレティシアではなく、アルバートだった。イヴァンの視線がするりと離れ、レティシアの頭越しに、アルバートへと向けられる。その瞳は笑みを湛えていながら、けれどどこか冷ややかで。
初めてみるわけでは決してないけれど――。イヴァンの双眸を見つめたまま、レティシアはぼんやりと思う。初めてみるわけではないけれど、でも、彼でもそういう目をするのか、と。まるで新たな気付きのように。ここ最近はずっと、やわらかく綻んだ顔ばかり見ていたからだろうか。
「まさか、私の婚約披露の場に足を運んでくださるとは。ゼハディア帝国の皇太子に祝していただけるなんて、なんと光栄な――」
「べつに、貴方の婚約を祝いに来たつもりはないんだが」
折角緩みかけた場の空気が、イヴァンの一言によって再び――いや、先程までよりも更に一層――張り詰める。アルバートが息を呑んだのを気配で感じ、レティシアは場違いにも感心してしまう。本当は心配をした方が良いのだろうけれど。それでも、随分とあけっぴろげに言うものだな、と、いっそ清々しく思った。
「それは、どういう……」
「どうもこうも、言葉の通りでしかない」
そう言って、イヴァンはにっこりと、実に惚れ惚れとするような爽やかな笑みを満面に浮かべた。
「私はただ、彼女をエスコートする為に此処へ来ただけだ」
金の瞳にちらりと一瞥され、レティシアはぎょっとする。なんと容易く薄氷を踏み抜くのだろう、この男は。案の定、四方八方から向けられる視線に晒され、レティシアは頭を抱えたくなった。一体この場をどう収めるつもりなのだろう。どういうことだ、と、問いというよりも責めるようなアルバートの視線が、他のどれより深く突き刺さる。簡単に答えられるものなら答えたいが、しかしこんな時に限って、うまく躱せる言葉がひとつも浮かばない。
「レティシアはもう、私の婚約者ではありません。イヴァン殿下ほどの方がエスコートをするような価値ある人間では――」
「私が誰のエスコートをしようが、私の勝手では? 第一、貴方の婚約者でなければ価値がないなどと宣うのは、傲慢も甚だしいと思うが」
すっと、イヴァンの口角が持ち上がる。
「彼女を価値のない人間と言うのなら――そんな貴方の方こそ、私には何の価値もない人間でしかない」
そんな人間の婚約を、何故わざわざ祝ってやらなければならんのか。
いつもと変わらない調子でありながら、その実、切れ味の鋭い刃のような冷たさを潜ませた、誰をも寄せ付けない圧倒的な“強者”の声。自国の王太子を“価値のない人間”と蔑まれたにもかかわらず、しかし、大広間は相も変わらずしんとしたままだ。大臣や公爵、枢機卿といった面々がいてもなお。誰からも、何処からも、反論の声は上がらない。
それもそのはずだ。言い返せるはずもない。相手はゼハディア帝国の次期皇帝なのだから。遥かに国力の違う――エルミラード王国など到底足元にも及ばない――大帝国の後継者に、一体誰が盾をつけようか。エルミラードにとっては何としてでも繋がりを持っていたい国だが、しかし、ゼハディアが必ずしもそうとは限らない。梯子は簡単に外せるのだ。ゼハディアの意思だけで、いつでも。そういう力関係が、両国の間にはある。表向きは“対等”と“友好”を装っていても。それが現実だ。
唖然とする一同をよそに、イヴァンはなんとも優雅に微笑んでいる。たった今しがたの発言など――それが与える影響や衝撃など――まるでなかったかのように。
アルバートにしてみればたまったものではないだろう、と、その見慣れたかんばせを見つめたままレティシアは思う。状況は、どう考えても彼の方が不利だ。いつもアルバートを持て囃す大臣や枢機卿たちも、イヴァンが相手となれば助け舟など出せまい。
その上、社交の場というのは、常に身分の高低で支配権が変わる。パーティーの主催はアルバートである為、主導権こそ彼にあるものの、しかし、重要なのは“誰が仕切るか”ではなく、“誰の存在が場の空気を決めるか”という力学だ。普通であればアルバートこそその立場にあるものの、けれどイヴァンという格上の存在がいるだけで、それは一気に――いとも容易く――引っ繰り返る。つまり、敬意の優先順位、場の支配権、その他一切のもの全て、イヴァンが中心、或いは頂点となるのだ。
自身の婚約発表という、新しい門出を祝する輝かしい場でのそれは、アルバートにとって――ミリーも含め――屈辱以外の何者でもないだろう。しかもイヴァンが重要視しているのは彼ではない、と、躊躇いなくきっぱりと言い放たれては――しかも衆目の中で――、なおのこと。王太子という威厳を踏み躙られたも同然だろうから。
「皇太子ともあろう方が、随分な物言いですね。それが両国の関係に、どう響くか分かった上でのお言葉ですか。もし我が父――陛下が耳にされたら」
「元はと言えば貴方が撒いた火種でしょう」
ひりついたアルバートの声など意にも介さず、イヴァンはくすりと笑い声をこぼして、戯けたように首を傾けた。
「こんな私でも、天秤くらい持ち合わせている。無論、穏便に済ます術や分別も。だが、それを“しなくて良い”という判断に至っただけだ。だいたい、陛下のお力を借りる前に、先ずは己で問題を解決しようとされては如何か」
それでこそ、王国の未来を背負う者かと。
突き放すようにそう付け加え、イヴァンはゆっくりとひとつ瞬いた。そうして、アルバートから逸した視線をレティシアへと向ける。そこにはもう、あの刃のような冷たさはまるでなく、いつもの彼らしい、ほっと心を蕩けさせるような、あたたかなやさしさが滲んでいた。
「相変わらず、君は何を着ても似合うな」
そう言って、イヴァンはレティシアの右手を恭しく掬い上げると、手の甲に、そっとやわらかく口付けを落とした。視線はずっと、彼女の瞳を見つめたまま。僅かに唇の端を持ち上げて。
「折角のパーティーだ。俺と踊ってくれないか、レティシア」



