僕と君と廻る庭

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 今映る景色はいつの景色か。
 この景色があるという事は、過去があった。
 今僕の眼に映る景色は、いつかの僕らの未来。
 過去から未来へと廻る。
 いつか『今』も過去になり、未来の僕らが振り返るのなら
 それは『今』にも価値がある。
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「どう?みつかった?」
 彼は嬉しそうな声で僕に話しかける。
「ふふっ、さぁね。
 大事なのは『種を()いた』というその過去だよ、君だってわかってるだろう?」
「そうだね、君の言う通りだ。
 …もうこれだけたくさんの植物があるとどれがいつ撒いた種かなんてわからないね、ましてや全てに『これは●●の花です』や『●●の木です』なんて立札(たてふだ)も立っていないし」
「うん、そしてそれが一番この庭の良い所だ」
「君らしい言葉だね。
 確かに、ここにある物に名前は無いんだよね。
 この庭は自由だから美しい、自由だから何にだってなれる。
 名前は無いんじゃない『必要無い』んだ」
 彼はそう言って、小さな花の前にしゃがみ、花びらを優しくさすりながら「そうだよね?」と問いかけていた。
「そう、確かに僕達は種を撒いた。その事実はある。
 でもいつ、どこで撒いたかはわからない。
 ここでは時間すら自由、昨日撒いた種がもう芽を出しているかもしれない。
 逆に、もっと前に撒いた種がまだ土の中に眠っているかもしれない。
 大事なのはそれが芽吹くかどうかじゃない、勿論、芽吹いて花や木になってくれればそれに越したことはないし、僕達だってそれを見てみたい」
 「君は『今』も大事にしているけれど、それよりも『過去』をもっと大事にしているんだね」
「そうだよ。だって過去が無かったら今は無いからね………。
 って、これは君が気付かせてくれた事じゃないか。
 今この景色をこうやって見れるのは、過去に君が僕と一緒に土を耕し、種を撒き、そして『こうして水を撒いている』からなんだ」
 そういう僕の手にはいつの間にか少し古びたステンレス製の如雨露(じょうろ)が握られていた。
「あ、その如雨露、まだ使ってくれているんだね」
 彼は僕の手にある如雨露を指をさすと少しだけ照れくさそうに笑った。
「ん?あぁ、勿論だよ、だってこの如雨露は君が見つけてくれた大切な贈り物だからね………」
 僕はそう言って如雨露を優しく撫でた。