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この風はいつの風?
風は廻るというのなら、今のこの風はいつかの風。
この風はいったい何処から来て。
何処へ流れていくのだろうか。
雲と共に。
雨と共に。
雷と共に。
磯の香りと共に。
この風は今までどれ程の景色を見たのだろう。
この風は今までどれ程の記憶を運んだのだろう。
今飛ばしたこの綿毛を。
この風は何処まで運んでいくのだろう。
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「ふぁ~あ……」
僕が大きな欠伸をしたその時だった。
ビュオオオオ!!!
突然大きな風が庭を駆け抜けた。
「うわっ!」
「わぁ!」
「口にゴミが入った……」
風に吹かれたゴミが、欠伸で大きく開いていた僕の口へ入ってしまった。
「あはは、大丈夫?」
「うーん……大丈夫……ぺっぺっ」
僕は出来るだけ唾が出ないように、ゴミだけを上手く吐き出す。
しかし、木の葉のカケラのような物が舌にぴったりと張り付いてなかなか取れない。
「はい、ティッシュ」
僕が渋い顔をしていると、彼はティッシュを差し出してくれた。
「ありがとう……」
僕はティシュを受け取るとそこに力強くぺっ!とゴミを吐き出した。
「取れた?」
「うん。なんか、葉っぱのカスみたいなのがベロに張り付いちゃって……」
「あー、それ僕も何回かなった事ある奴だ。なんか凄い嫌だよね。かといって、指でベロを触るとオエッ!ってなっちゃうし」
「……君は昔吐き出さないでそのまま飲み込もうとしたもんね」
「あ、あれはまだ僕が『身体』という物に慣れてなくてよくわからなかったんだから仕方ないだろう!」
彼は恥ずかしそうにそういうと、僕からティッシュを奪い取る。
「それにしても、随分と強い風が吹いたね」
「そうだね、せっかく庭を『散らかした』のに、また一か所に集まっちゃいそうだよ」
「まぁその時はまた一緒に散らかせばいいよ。どうせ時間はいくらでも」
ビュオオオオ!!!!
僕の言葉を遮るように再び大きな風が吹く。
「危ない危ない……」
「今度は口にゴミは入らなかった?」
「何とかね」
僕はそう言って彼に微笑んだ。
「うーん、これだけ風が強いのは久しぶりかもしれないね」
突風こそそんなに吹かないが。
徐々に風が強くなり、庭の木々も絶え間なく葉をゆらしている。
「そうだね。でも僕はこの風に木が揺れるこのワシャワシャって音は好きだよ。まるで普段大人しい木々が歌を歌っているみたいで」
「おっ、君も言うようになったじゃないか」
「え?」
彼はキョトンとした顔で僕を見た。
「例えだよ、例え。僕は今の例え、良いと思うよ。木々がこうやって葉を揺らす音を『歌っている』と感じた事は無かったなぁ」
「あはは、君はいつも色んなことを色んなものに例えるから、その癖が映っちゃったかな。でも、これがこの庭を美しくする……いや、美しく見る為の秘訣でしょ」
僕は彼の言葉に少し胸が温かくなった。
「そうだね。五感で感じる物を全て何かに例える――目に見えないからこそ、言葉にして。目に見えているものでも、他の言葉にして。そうした言葉が積み重なって。この庭は彩を強くする」
「目に見えないからこそ言葉にするというのは何となくわかるけれど、目に見えているものも『敢えて』他の言葉にするっていうのがとても君らしい考え方だよね。君がこの庭をいかに大事にしているのかが伝わってくるよ」
そう言って彼はほほ笑んだ。
「でも君もこうして、風に木々が揺れて、葉がガサガサ言っている音を『歌っている』と例えた。いや、そう見てくれた。僕はそれが凄く嬉しいよ。
『木々がガサガサと言っている』
『木々が歌っている』
前者はただの雑音と捉えられるかもしれないけれど。後者は明らかに雑音とは違う。木々が揺れる事に『意味』を与えている。だから君が『歌っている』、そう感じる事が出来たという事は君は更にこの庭に意味を持たせてくれたんだよ」
ゴオオオオ!!!
「ちょっと、いくらなんでも強くなりすぎてきてる気がする!」
「流石に小屋に戻る!?」
僕達の声がかき消されそうな程の暴風が吹いてきて、お互い声を少し大きくしないと聞き取れないほどになってきた。
「そうしよう!」
僕達は急いで小屋の方まで走っていく。
バタン!
僕達が小屋に戻る頃には風の勢いはどんどん強くなり。
窓枠もガタガタと揺れる程になっていた。
「ふぅ~」
僕はドサッ!とソファに座ると、彼は本棚から一冊、本を抜き取ると僕とは対照的にゆっくりと向かいにあるソファに腰を掛けた。
コチコチと振り子時計の音が響く静かな部屋と、窓枠を叩く風の音が凄く対照的な空間に僕は少しの眠気を感じてきて、そのままゆっくりと瞼を閉じた。
この風はいつの風?
風は廻るというのなら、今のこの風はいつかの風。
この風はいったい何処から来て。
何処へ流れていくのだろうか。
雲と共に。
雨と共に。
雷と共に。
磯の香りと共に。
この風は今までどれ程の景色を見たのだろう。
この風は今までどれ程の記憶を運んだのだろう。
今飛ばしたこの綿毛を。
この風は何処まで運んでいくのだろう。
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「ふぁ~あ……」
僕が大きな欠伸をしたその時だった。
ビュオオオオ!!!
突然大きな風が庭を駆け抜けた。
「うわっ!」
「わぁ!」
「口にゴミが入った……」
風に吹かれたゴミが、欠伸で大きく開いていた僕の口へ入ってしまった。
「あはは、大丈夫?」
「うーん……大丈夫……ぺっぺっ」
僕は出来るだけ唾が出ないように、ゴミだけを上手く吐き出す。
しかし、木の葉のカケラのような物が舌にぴったりと張り付いてなかなか取れない。
「はい、ティッシュ」
僕が渋い顔をしていると、彼はティッシュを差し出してくれた。
「ありがとう……」
僕はティシュを受け取るとそこに力強くぺっ!とゴミを吐き出した。
「取れた?」
「うん。なんか、葉っぱのカスみたいなのがベロに張り付いちゃって……」
「あー、それ僕も何回かなった事ある奴だ。なんか凄い嫌だよね。かといって、指でベロを触るとオエッ!ってなっちゃうし」
「……君は昔吐き出さないでそのまま飲み込もうとしたもんね」
「あ、あれはまだ僕が『身体』という物に慣れてなくてよくわからなかったんだから仕方ないだろう!」
彼は恥ずかしそうにそういうと、僕からティッシュを奪い取る。
「それにしても、随分と強い風が吹いたね」
「そうだね、せっかく庭を『散らかした』のに、また一か所に集まっちゃいそうだよ」
「まぁその時はまた一緒に散らかせばいいよ。どうせ時間はいくらでも」
ビュオオオオ!!!!
僕の言葉を遮るように再び大きな風が吹く。
「危ない危ない……」
「今度は口にゴミは入らなかった?」
「何とかね」
僕はそう言って彼に微笑んだ。
「うーん、これだけ風が強いのは久しぶりかもしれないね」
突風こそそんなに吹かないが。
徐々に風が強くなり、庭の木々も絶え間なく葉をゆらしている。
「そうだね。でも僕はこの風に木が揺れるこのワシャワシャって音は好きだよ。まるで普段大人しい木々が歌を歌っているみたいで」
「おっ、君も言うようになったじゃないか」
「え?」
彼はキョトンとした顔で僕を見た。
「例えだよ、例え。僕は今の例え、良いと思うよ。木々がこうやって葉を揺らす音を『歌っている』と感じた事は無かったなぁ」
「あはは、君はいつも色んなことを色んなものに例えるから、その癖が映っちゃったかな。でも、これがこの庭を美しくする……いや、美しく見る為の秘訣でしょ」
僕は彼の言葉に少し胸が温かくなった。
「そうだね。五感で感じる物を全て何かに例える――目に見えないからこそ、言葉にして。目に見えているものでも、他の言葉にして。そうした言葉が積み重なって。この庭は彩を強くする」
「目に見えないからこそ言葉にするというのは何となくわかるけれど、目に見えているものも『敢えて』他の言葉にするっていうのがとても君らしい考え方だよね。君がこの庭をいかに大事にしているのかが伝わってくるよ」
そう言って彼はほほ笑んだ。
「でも君もこうして、風に木々が揺れて、葉がガサガサ言っている音を『歌っている』と例えた。いや、そう見てくれた。僕はそれが凄く嬉しいよ。
『木々がガサガサと言っている』
『木々が歌っている』
前者はただの雑音と捉えられるかもしれないけれど。後者は明らかに雑音とは違う。木々が揺れる事に『意味』を与えている。だから君が『歌っている』、そう感じる事が出来たという事は君は更にこの庭に意味を持たせてくれたんだよ」
ゴオオオオ!!!
「ちょっと、いくらなんでも強くなりすぎてきてる気がする!」
「流石に小屋に戻る!?」
僕達の声がかき消されそうな程の暴風が吹いてきて、お互い声を少し大きくしないと聞き取れないほどになってきた。
「そうしよう!」
僕達は急いで小屋の方まで走っていく。
バタン!
僕達が小屋に戻る頃には風の勢いはどんどん強くなり。
窓枠もガタガタと揺れる程になっていた。
「ふぅ~」
僕はドサッ!とソファに座ると、彼は本棚から一冊、本を抜き取ると僕とは対照的にゆっくりと向かいにあるソファに腰を掛けた。
コチコチと振り子時計の音が響く静かな部屋と、窓枠を叩く風の音が凄く対照的な空間に僕は少しの眠気を感じてきて、そのままゆっくりと瞼を閉じた。
