「わぁああ~~お肉いっぱいです~!」
戦いが終わった正門前で、あたしはきらきらと目を輝かせた。
そこにはガンチさんたちが解体してくれたブラックウルフの魔物肉が、これでもかと大量に積み上がっています。
お肉・お肉・お肉~~♪
もうお肉祭りです。
「そうだな。魔物の肉は野生の獣より引き締まっていて、栄養価も高い。しかも狩りたてで新鮮だからな、都市部では滅多にお目にかかれないご馳走だぞ」
ブラン様がフムフムと顎に手を当てながら言いました。
アイザス伯爵家は魔物を退治することで大きくなった貴族です。そんなアイザス家ではちょくちょく魔物肉が出ていたけど。たしかに他では見たことがないです。
そういえば鮮度が落ちちゃうから、輸送が難しいとかブラン様が言ってたような。
館で孤立していた頃、ブラン様のお食事は専属メイドであるあたしがすべて手作りすることになっていました。だからあたし、ブラン様に「美味しい!」って言ってもらいたくて、料理の本をいっぱい読んで、いろいろやってみて、必死に勉強したんです。
だから料理にはちょっと自信があるんです。
ブラン様の目がキラキラしてる。
ふふふ……これはあたしの腕の見せ所ですね。
「さあ~~今回もエド村の名シェフ(自称)として、いっちょ最高のご飯を作っちゃいますよ~~!」
教会の古い厨房をお借りして、腕によりをかけました。
本日のメニューは、新鮮なブラックウルフの極厚ジューシーステキに、特産ジャガイモと細切れ肉の強火炒め・乾燥パセリをたっぷり添えて、です!
「う、うめぇえええ! なんだこの肉、口の中で肉汁が爆発しやがる!」
「な、なんでだ! ブラックウルフはちょくちょく食ってるはずなのに……いつもと全然ちがう!」
「こんなに美味い肉、生まれて初めて食ったべぇ! リナちゃんすげぇべ!」
はい、村の男性陣からは好評を頂きました。
「あらまあ、どうやったらこんな味付けになるんだい」
「ほんと、こんなに美味しければ晩ご飯も楽しいわ」
「リナちゃん、あとで私達にもレシピ教えてね」
はい、おばあちゃん、お母さん陣にも美味しい頂きました~。
「は~~い、あとでママさんレッスンしちゃいますね~~♪」
大きなお鍋や鉄板から取り分けられたお料理を口にした村人のみなさんは、一瞬で大興奮です。
子供たちも口の周りをお肉まみれにしながら、わんぱくに頬張っています。 そして、あたしが一番気になっていたブラン様はというと……。
「……美味い。流石だなリナ。肉の臭みが綺麗に消えていて、旨味だけが引き立っているぞ。ジャガイモの塩加減とパセリの配分も絶妙だ。リナも温かいうちに食べろ」
「やったぁ~~えへへ、ブラン様にそう言ってもらえるのが、あたしの一番の幸せです♪」
美味しそうにパクパク食べてくれるブラン様を見て、あたしの胸はすっかり満たされてしまいました。満腹ですぅ~~♪
そして楽しい夕食の時間は、村のみなさんの笑顔と共に賑やかに更けていった。
だけど片付けの段階になって、少し困ったことに気づきました。
「んん~~ブラン様。お肉がいっぱい余っちゃいました。全部をカチカチの干し肉にしちゃうの、なんだかもったいないですよねぇ」
「ああ、そうだな。これだけの保存食が大量に確保できたのは有り難いが、たしかにすべて干し肉と言うのも芸がない。肉を外に出しても凍るほどではないし不衛生だしな。となれば……」
ブラン様はうーんと腕を組んで、何かを真剣に考え始めました。
ふふ、あたしブラン様のこのお顔が大好きなんです。
昔から、頭の中で面白い妄想を膨らませているときは、いつもこうして楽しそうに目を細めてムムゥと唸っている。ここ最近はブラン様に辛い事が多くて、このお顔があまり見られなかったけれど……
エド村に来てからは、またこのお顔をたくさん見られるようになった。
嬉しい。
「―――よし、これでいくか」
パッと顔を上げたブラン様が、手のひらから魔法の【設計図】を出現させました。
ペラリと吐き出されたその紙を見て、あたしは思わず声を上げる。
「あれ? ブラン様、この絵って……」
「気付いたか、リナ。むかし俺が作ったあの小さな棚のイメージだ」
あたしは、エド村に持って来た木彫りの棚のミニチュアを手にして呟いた。
「れいぞうこ……?」
また、あたしの知らない不思議な言葉です。ブラン様は誰も思いつかないようなすごい知識をたくさん持っています。まるで、別の世界を見てきたみたいに。
でも、あたしは難しいことはわかりません。構造がとかわかんないけど……ブラン様が作ったものなら、絶対に素敵に決まっているから。
設計図からぴょこんと現れた小人さんたちに、「今夜もよろしくね~~おやすみなさい♪」と手を振って、あたしたちはぐっすりと眠りにつきました。
◇◇◇
翌朝。
「りょ、りょ、領主様! こりゃ一体、どういう仕掛けなんですかい!?」
「この大きな箱の中だけ、ちべたいぞ!」
「こっちの下の棚なんか……真冬みたいだ」
みなさんが驚愕の眼差しで見つめていたのは、小人さんたちが一晩で組み立ててくれた、背の高いピカピカに輝く不思議な棚でした。
「ああ。こいつは冷蔵庫だ。これなら中の温度を一定の低さに保てるから、生肉を入れておいても数日は腐らない。さらにその下の段の冷凍庫に入れておけば、カチカチに凍って一ヶ月から二ヶ月は新鮮なまま保存できるぞ」
ブラン様が自慢げにれいぞうこの扉を開け閉めしながら、みなさんに解説しています。
ていうかこういう時のブラン様って、本当に楽しそう……
「ええっ!? ってことは……今日獲れた肉を、明日も、明後日も柔らかいお肉のままで食べられるってことですかい!?」
「もちろんだ。さらに冷凍した肉も食べる前に部屋に置いて自然解凍すれば、味もそこまで落ちずにちゃんと食べられる」
「す、すげぇえええ! なら明日もリナちゃんの肉料理が食えるんだ!」
「干し肉をありがたがってた日々は終わったんだ~」
「領主様は、やっぱり本物の神様か魔法使い様だべぇ!」
村人のみなさんが、わあぁっと歓声を上げてブラン様を崇め始めました。昨日までは寒さと飢えで凍りついていたみなさんの顔に、今はひまわりみたいな満開の笑顔が咲き誇っています。
すごい、すごいなぁ……。
あたしは、みなさんから感謝されて少し照れくさそうにしているブラン様を後ろからそっと見つめました。
かつての伯爵家では、ブラン様はあたしを笑顔にしてくれました。
だけど、今は違います。
ブラン様はあたし以外のたくさんの人たちも、その手でどんどん笑顔に変えているのです。
「ふふっ。ブラン様の周りにいる人は、みんな幸せな笑顔になりますね」
あたしが横からそっと話しかけると、ブラン様は「んん?」と不思議そうにこちらを振り返りました。
「そうか? まあ、領民が飢えて死なないようにするのが領主としての責任だからな。あと俺の趣味もけっこうはいっている」
ちょっと不器用で素っ気ないお返事が、またブラン様らしくて愛おしいです。 でもブラン様。口ではそんなふうに言っていますけど、村の子供たちに懐かれてご自身もかなり優しい笑顔になっているの、あたしには隠せてないですよ?
そんな優しいところもちょっと意地っ張りなところも、あたしは全部、大好きなのです。
だからブラン様。
リナは何があっても、ず~~~っとあなたをお慕いし続けますからね♪
戦いが終わった正門前で、あたしはきらきらと目を輝かせた。
そこにはガンチさんたちが解体してくれたブラックウルフの魔物肉が、これでもかと大量に積み上がっています。
お肉・お肉・お肉~~♪
もうお肉祭りです。
「そうだな。魔物の肉は野生の獣より引き締まっていて、栄養価も高い。しかも狩りたてで新鮮だからな、都市部では滅多にお目にかかれないご馳走だぞ」
ブラン様がフムフムと顎に手を当てながら言いました。
アイザス伯爵家は魔物を退治することで大きくなった貴族です。そんなアイザス家ではちょくちょく魔物肉が出ていたけど。たしかに他では見たことがないです。
そういえば鮮度が落ちちゃうから、輸送が難しいとかブラン様が言ってたような。
館で孤立していた頃、ブラン様のお食事は専属メイドであるあたしがすべて手作りすることになっていました。だからあたし、ブラン様に「美味しい!」って言ってもらいたくて、料理の本をいっぱい読んで、いろいろやってみて、必死に勉強したんです。
だから料理にはちょっと自信があるんです。
ブラン様の目がキラキラしてる。
ふふふ……これはあたしの腕の見せ所ですね。
「さあ~~今回もエド村の名シェフ(自称)として、いっちょ最高のご飯を作っちゃいますよ~~!」
教会の古い厨房をお借りして、腕によりをかけました。
本日のメニューは、新鮮なブラックウルフの極厚ジューシーステキに、特産ジャガイモと細切れ肉の強火炒め・乾燥パセリをたっぷり添えて、です!
「う、うめぇえええ! なんだこの肉、口の中で肉汁が爆発しやがる!」
「な、なんでだ! ブラックウルフはちょくちょく食ってるはずなのに……いつもと全然ちがう!」
「こんなに美味い肉、生まれて初めて食ったべぇ! リナちゃんすげぇべ!」
はい、村の男性陣からは好評を頂きました。
「あらまあ、どうやったらこんな味付けになるんだい」
「ほんと、こんなに美味しければ晩ご飯も楽しいわ」
「リナちゃん、あとで私達にもレシピ教えてね」
はい、おばあちゃん、お母さん陣にも美味しい頂きました~。
「は~~い、あとでママさんレッスンしちゃいますね~~♪」
大きなお鍋や鉄板から取り分けられたお料理を口にした村人のみなさんは、一瞬で大興奮です。
子供たちも口の周りをお肉まみれにしながら、わんぱくに頬張っています。 そして、あたしが一番気になっていたブラン様はというと……。
「……美味い。流石だなリナ。肉の臭みが綺麗に消えていて、旨味だけが引き立っているぞ。ジャガイモの塩加減とパセリの配分も絶妙だ。リナも温かいうちに食べろ」
「やったぁ~~えへへ、ブラン様にそう言ってもらえるのが、あたしの一番の幸せです♪」
美味しそうにパクパク食べてくれるブラン様を見て、あたしの胸はすっかり満たされてしまいました。満腹ですぅ~~♪
そして楽しい夕食の時間は、村のみなさんの笑顔と共に賑やかに更けていった。
だけど片付けの段階になって、少し困ったことに気づきました。
「んん~~ブラン様。お肉がいっぱい余っちゃいました。全部をカチカチの干し肉にしちゃうの、なんだかもったいないですよねぇ」
「ああ、そうだな。これだけの保存食が大量に確保できたのは有り難いが、たしかにすべて干し肉と言うのも芸がない。肉を外に出しても凍るほどではないし不衛生だしな。となれば……」
ブラン様はうーんと腕を組んで、何かを真剣に考え始めました。
ふふ、あたしブラン様のこのお顔が大好きなんです。
昔から、頭の中で面白い妄想を膨らませているときは、いつもこうして楽しそうに目を細めてムムゥと唸っている。ここ最近はブラン様に辛い事が多くて、このお顔があまり見られなかったけれど……
エド村に来てからは、またこのお顔をたくさん見られるようになった。
嬉しい。
「―――よし、これでいくか」
パッと顔を上げたブラン様が、手のひらから魔法の【設計図】を出現させました。
ペラリと吐き出されたその紙を見て、あたしは思わず声を上げる。
「あれ? ブラン様、この絵って……」
「気付いたか、リナ。むかし俺が作ったあの小さな棚のイメージだ」
あたしは、エド村に持って来た木彫りの棚のミニチュアを手にして呟いた。
「れいぞうこ……?」
また、あたしの知らない不思議な言葉です。ブラン様は誰も思いつかないようなすごい知識をたくさん持っています。まるで、別の世界を見てきたみたいに。
でも、あたしは難しいことはわかりません。構造がとかわかんないけど……ブラン様が作ったものなら、絶対に素敵に決まっているから。
設計図からぴょこんと現れた小人さんたちに、「今夜もよろしくね~~おやすみなさい♪」と手を振って、あたしたちはぐっすりと眠りにつきました。
◇◇◇
翌朝。
「りょ、りょ、領主様! こりゃ一体、どういう仕掛けなんですかい!?」
「この大きな箱の中だけ、ちべたいぞ!」
「こっちの下の棚なんか……真冬みたいだ」
みなさんが驚愕の眼差しで見つめていたのは、小人さんたちが一晩で組み立ててくれた、背の高いピカピカに輝く不思議な棚でした。
「ああ。こいつは冷蔵庫だ。これなら中の温度を一定の低さに保てるから、生肉を入れておいても数日は腐らない。さらにその下の段の冷凍庫に入れておけば、カチカチに凍って一ヶ月から二ヶ月は新鮮なまま保存できるぞ」
ブラン様が自慢げにれいぞうこの扉を開け閉めしながら、みなさんに解説しています。
ていうかこういう時のブラン様って、本当に楽しそう……
「ええっ!? ってことは……今日獲れた肉を、明日も、明後日も柔らかいお肉のままで食べられるってことですかい!?」
「もちろんだ。さらに冷凍した肉も食べる前に部屋に置いて自然解凍すれば、味もそこまで落ちずにちゃんと食べられる」
「す、すげぇえええ! なら明日もリナちゃんの肉料理が食えるんだ!」
「干し肉をありがたがってた日々は終わったんだ~」
「領主様は、やっぱり本物の神様か魔法使い様だべぇ!」
村人のみなさんが、わあぁっと歓声を上げてブラン様を崇め始めました。昨日までは寒さと飢えで凍りついていたみなさんの顔に、今はひまわりみたいな満開の笑顔が咲き誇っています。
すごい、すごいなぁ……。
あたしは、みなさんから感謝されて少し照れくさそうにしているブラン様を後ろからそっと見つめました。
かつての伯爵家では、ブラン様はあたしを笑顔にしてくれました。
だけど、今は違います。
ブラン様はあたし以外のたくさんの人たちも、その手でどんどん笑顔に変えているのです。
「ふふっ。ブラン様の周りにいる人は、みんな幸せな笑顔になりますね」
あたしが横からそっと話しかけると、ブラン様は「んん?」と不思議そうにこちらを振り返りました。
「そうか? まあ、領民が飢えて死なないようにするのが領主としての責任だからな。あと俺の趣味もけっこうはいっている」
ちょっと不器用で素っ気ないお返事が、またブラン様らしくて愛おしいです。 でもブラン様。口ではそんなふうに言っていますけど、村の子供たちに懐かれてご自身もかなり優しい笑顔になっているの、あたしには隠せてないですよ?
そんな優しいところもちょっと意地っ張りなところも、あたしは全部、大好きなのです。
だからブラン様。
リナは何があっても、ず~~~っとあなたをお慕いし続けますからね♪

