ハズレ魔法【設計図】ただの紙切れしかだせない魔法などクソだと追放された転生貴族の九男坊~実は小人さんたちが寝てる間になんでも作ってくれる便利魔法だったので、魔の森で現代快適領地経営を始めます~

 ――――――ダァーーンッ!!

 「グフゥウ……ゥ……」

 またもう一匹、ラスタール三八式歩兵銃の射撃によってブラックウルフが息絶えた。
 即死の一撃だ。

 この戦闘において、凄まじい成長をみせるシュルト歩兵銃部隊。

 コツが分かってきた、か……今日初めて持った武器なんだが……

 ラスタール村の戦士たちは定期的な魔物の襲撃を被害は出しつつもなんとか切り抜けてきた。よって、普通の村民より間違いないく戦い慣れしている。

 シュルトたちは弓やボウガンで鍛えられていたせいか、元々の射撃センスがあるのだろう。  
 それに加えて三八式歩兵銃のポテンシャルが最高の働きをしている。

 高い遠距離命中精度を誇り、かつ構造が単純なため故障しづらく、過酷な環境でも抜群の使い勝手を発揮する。さらに銃剣をつければ白兵戦すらできてしまう。
 前世の世界で傑作ボルトアクションライフルと称されたその特性は、この異世界でも遺憾なく発揮されていた。  

 この村には素材はあっても使える武器や道具が少ない。だから新しいものへの抵抗が、他の領民ほど高くない。使えるものがあればなんでも使わなければ生き残れないからだ。
 そんな土壌も、この世界において未知の道具を生み出す俺の魔法【設計図】と相性がいい。

 優れた道具を俺がイメージして作り、領民たちがその特性を十二分に有効活用する。
 そして、とたんに成長していく領民たち。


 ……最高やん。


 こりゃたまらんな、ゾクゾクしてきた……!

 自分の脳内設計が形になり、さらには予想を上回って機能していくの快感すぎるわ。

 グフフ……

 「領主さま! 歩兵銃の攻撃をかいくぐった奴らが、こっちにきやすぜ!」

 ガンチの鋭い声で俺は我に返る。

 シュルトたちが半分近くを即死、あるいは行動不能に追い込んだが、それでも執念深く生き残ったブラックウルフ10匹ほどが、正門前の防衛ラインへと突入してきた。

 さすがに俊敏な魔物だけはある。

 「よし、ここからは白兵戦だ! 一匹たりとも村に入れるな!」

 「「「「「おおうっ!!」」」」」

 男たちが気合の雄たけびを上げる。

 突進してくるブラックウルフの鋭い爪を、ガンチ以下30名の戦士たちが新品の鉄盾を綺麗に並べて受け止めた。ガキィィン!と重い金属音が響くが、盾は歪み一つしない。それどころか衝撃を吸収するクッション材が裏打ちされているため、男たちは一歩も押し込まれなかった。

 「うらぁああ!」
 「どらぁああ!」

 盾の隙間から、するどい切れ味の剣がブラックウルフの首筋を的確に斬り裂く。槍兵たちの鋭い突きが獣の身体を容赦なく穿つ。

 「こりゃ凄い切れ味だぞ!」
 「おらの槍も、ズンズン突けるぞ~~!」

 装備が新しくなったことで、彼らの攻撃力は以前の数倍に膨れ上がっていた。ブラックウルフたちは防衛ラインに阻まれ、完全にその場に釘付けにされている。

 「いける……これなら完全に防ぎきれるぞ!」

 戦場の奥へと視線を巡らせると、後方に残った負傷した魔物たちに櫓の上の歩兵銃部隊が冷静に狙撃して確実にトドメを刺し始めていた。

 いける、これは本当にいけるぞ。

 だが、それがほんの少しの油断を生んだのかもしれない。
 前世はただの一般人、この異世界でも実家で燻っていた俺は、実戦の泥臭い経験が決定的に不足していたことを思い知る。

 「ブラン様っ!!」

 唐突に、視界の端からリナの身体が俺に向かって覆いかぶさるように飛んできた。  
 俺はリナに身体ごと押し倒されると同時に、なにか黒いものが視界に入ってくる。

 「ガルウウウウッ!」

 獰猛な唸り声と共に、一匹のブラックウルフが俺たちのすぐ頭上を通過していったのだ。

 凶暴な牙を剥き出しにし、狂気に満ちた目をギラつかせている。どうやら前衛の乱戦の隙を突き、防衛ラインをすり抜けてきた個体がいたらしい。

 リナの決死のタックルのおかげで直撃は免れたが、着地したブラックウルフはすぐさま体を反転させ、こちらに向けて第二撃を仕掛けようと身を低くした。

 その距離、わずか数メートル。

 「ぐっ……」

 長い剣を抜く暇はない。俺は咄嗟に右腰のホルスターから拳銃を引き抜き、ブラックウルフに向けてがむしゃらに引き金をひきまくった。

 ―――パンッ!
 ―――パンッ!
 ―――パンッ!

 当たらねぇ!!

 嘘だろ、これだけ至近距離なのに一発も命中していない! 
 銃声に驚いてブラックウルフが僅かに身をのけ反らせたが、弾丸は虚しくまわりの地面を抉るだけだ。  

 クソ、落ち着け……前世の知識を思い出せ。リボルバーは片手だと跳ね上がって照準がブレる。しっかり両手でグリップをホールドして、よく狙って―――!

 ―――パンッ!
 ―――パンッ!
 ―――パンッ!

 カチッ、カチッ。

 装弾数の六発を撃ち切ってしまった。
 んん?

 「ギ、ギュルウゥ……ッ!」

 ブラックウルフが短い悲鳴を上げて、その場によろめいた。  

 あ、当たった!

 最後の数発のうちの一発が、幸運にもウルフの右前足の関節付近を捉えていたのだ。急所ではないため致命傷には遠く及ばないが、肉を抉られた痛みに獣の動きが散漫になる。

 隙ができた……リロードだ!

 俺は中折れ式リボルバーの銃身を前にパカッと折り曲げた。懐から予備の魔石弾をシリンダーへ滑り込ませ、銃身を跳ね上げてガチャンとロックする。

 再装填完了―――

 ―――パンッ!
 ―――パンッ!

 俺は銃口をブラックウルフに向けて連射した。

 何発かがブラックウルフの胴体や肩を捉え、その肉を確実に抉り取る。しかし、やはりこの拳銃の威力では、即死させるには至らない。  

 だが、それでいいんだ。  

 そろそろ―――


 「うらぁああああっ!!」


 真横から飛び込んできた影が、凄まじい咆哮と共に剣を一閃させた。その一撃によりブラックウルフの首が綺麗に宙を舞い、ゴロリと地の上に転がった。防衛ラインの異変に気付いて駆け戻ってきた、ガンチ渾身の斬撃だ。

 「ふぅ……助かったガンチ」

 俺は大きく息を吐き出し、リボルバーをホルスターへと収めた。

 「ハハッ、領主さまの剣がありゃ~~ブラックウルフぐらい! それに領主さまの不思議な武器で敵の動きは鈍ってたし、楽勝でさぁ」

 ガンチは剣の血を払いながら、豪快に笑った。

 まさにガンチが言ったとおりだ。俺の拳銃のベースであるエンフィールド・リボルバーは、主に将校用に製造された拳銃だ。その目的は「敵を貫通させる」ことよりも「敵の動きを確実に止める」こと。
 足止めさえ成功すれば、あとはとどめを刺せる人間が変わりにやってくれる。

 「ふえぇ~~ものすごく怖かったですぅ~~ブラン様ぁ……」

 「大丈夫かリナ。本当に助かった、ありがとな」

 床に座り込んで涙目になっているリナの頭を優しく撫でてやった。するとリナは安心したように、俺の手を握って温もりを確かめていた。

 俺はゆっくりと戦場全体を見渡す。  

 戦いの砂煙が薄れていく中、もはや動けるブラックウルフは一匹も残っていなかった。

 「みんな、よくやった! 俺たちの勝利だ! 勝鬨を上げろ!」

 俺の声に応えるように、村の男たちが一斉に武器を天へと掲げた。


 「「「「「えい、えい、うおぉおおお!!」」」」」


 村全体に地響きのような勝鬨の声が木霊した。教会の中から様子を伺っていた女性陣や子供たちも、正門から次々と飛び出してきて、男たちと抱き合って涙を流して喜んでいる。

 「ふぅ……」

 俺はもう一度、深く息を吐き出した。  

 こうして俺の記念すべき初陣は、これ以上ない最高の形で勝利を飾ることができた。  
 今までは犠牲者が度々でていたらしいが、今回は負傷者は多少でたが死者はゼロである。

 教会の隅にある木の墓標が増えなくて、本当に良かった。

 ……さて、最低限の防衛力が確保できたところで、次こそは本格的に住宅問題とか領主館のリフォームなどに着手しないとな。

 「ブラン様~~難しい顔してないで~~今日はお祝いですよ~♪」

 おっと、リナの言う通りだな。
 今日は勝利を楽しむとするか。

 「ああ、ちょうど肉も大量に手に入ったところだしな」
 「ふふ~張り切って作っちゃいますね~♪」

 俺は笑顔を輝かせるリナと共に、歓喜に沸く村人たちの輪の中へと歩みを進めた。