ブーンと小人さんの設置したエアコンの稼働音が響き、教会内の空気は春のように温かい。
その温かさに呼応するように、村人たちの凍てついていた表情も少しずつ解け始めていた。
その立役者はエアコンだけじゃない。
俺の隣で鼻歌交じりに巨大な鍋をかき混ぜている美少女、俺の専属メイドであるリナだ。
「さあさあ、みなさーん。朝ごはんできましたよっ~~♪ 今日はエド村特産ジャガイモのもちもちおだんごスープで~~す!」
リナが元気よく声をかけると、子供たちが真っ先にそして大人たちが遠慮がちに木の器を持って集まってきた。
村の備蓄は乏しい。あるのは、シワシワのジャガイモとカチカチに干された塩漬け肉、あとは乾燥したパセリくらいだ。だがリナはそれらを驚くほど美味いご馳走に変えてみせた。
「わぁ~い、ホクホクのすーぷだぁ♪」
「リナおねえちゃんのごはんすき~♪」
子供たちからは、すでにお姉ちゃん認定されている。
「う、うめぇ……なんだこれ、ジャガイモがいつもより柔らかい……」
「スープに肉の旨味が染み出してる……リナちゃん、あんた魔法使いか?」
「えへへ~~あたし料理が好きなんです♪」
リナはスープを盛った器を配りながら、巧みに村人たちの輪に溶け込んでいく。
村の老婆の肩を揉みながら世間話をしたり、泣いている子供の鼻を拭いて笑わせたり。
……この子のコミュ力、マジでとんでもないな。俺が実家で冷遇されていた十九年間、俺の心が腐らなかったのはこの明るさに救われていたからなんだろうなと改めて思う。
「ブラン様、冷めないうちにどうぞ!」
「ああ、ありがとうリナ」
差し出されたスープを口にする。
……美味い。
俺は料理に関しては前世でも多少自炊してたが、リナの料理は次元が違う。
食はとても重要な要素だ。これが充実すればするほど住民の幸福度が上がる。
正直な話、リナがついてきてくれて本当に助かるし嬉しい。
さて、腹も膨らんだことだし、そろそろ「領主」としての仕事を始めるとするか。
「……ん、これか」
俺は教会の古い机に持ってきた地図を広げた。それを見た子供たちがなんだなんだと不思議そうに覗き込んでくる。
「りょうしゅさま~~それな~に?」
「またこびとさんだすの?」
「いや、これはただの地図だ。領地のお勉強だよ」
俺は地図を指でなぞりながら現状を整理した。
このラスタールという土地は、改めて見ると地政学的にえげつない場所にある。
ラスタールはアイザス伯爵が王国から拝領した飛び地の領地で、我が国バルム王国の最果て。村の背後には大河が流れており、その川上へ行けば聖女などがいる宗教の総本山である聖教国、川下へ行けば軍事国家である帝国。そして大河を渡ったその先は、王国が調査を投げ出した未知の領域―――魔の森だ。
魔の森はいちおう王国領とはなっているが、ぶっちゃけ誰も統治なんかできてない。他国も下手に手を出して損害を出すよりは三国(王国、帝国、聖教国)の緩衝地帯みたいな感じで放置している様子。てか人がいるのかすら不明。
森の奥にはドラゴンだの何だの、ヤバいモンスターがわんさかいるという噂もある。
整理すると、このラスタールは王国のド辺境で。その左右を帝国と聖教国という大国の領地に挟まれるように隣接しており、その背後が未知のモンスター天国。
「……これ、普通に考えて詰んでないか?」
前世のゲームなら、間違いなく最高難易度の狂人設定だ。
いやいや、俺の魔法が役に立つと分かったんだ。そう簡単に白旗をあげてたまるか。
とにかく現状把握だ。
次に村のデータ。人口は約300人。
農作物はおもにジャガイモ、小麦、パセリ。肉類は狩猟による野うさぎや鳥。たまにイノシシ。いまは冬なので備蓄を切り詰めてなんとか冬を越す状態。
財政? そんな言葉はこの村にはない。保有貨幣はほとんどない。ていうか商人など一人も来ないし貨幣はほとんど使用していない状態。
家屋は約60戸、どれも老朽化が進んでいる。
食糧事情や住宅事情それにインフラなど改善すべき問題は山積みだが、それよりも。
「この村には、魔物や山賊の襲撃はあるのか?」
俺は、近くにいたカジル神父に聞いた。
「はい、ブラン様。賊は滅多に来ませんじゃ。こんな貧しい村を襲っても、得られるものはございませんからな……ですが、魔物は別です」
神父が教会の裏手に視線を移す。
そこには、墓と呼ぶにはあまりに粗末な木の棒がいくつも突き刺さっている区画だ。
「なるほど、魔物の被害はあるか」
「大河がある程度は防波堤になっておりますが、それでも河を渡ってくる魔物もいます。それに、空を飛ぶ奴もいますじゃ」
村自体は少し盛り上がった丘のような地形の最上段にあるらしく、大雨が続かないかぎりは水害は起こらないらしい。が、魔物は関係なくくる。
襲撃してくる魔物たちの規模はさまざま。スタンピードのような大量発生は神父がいる間は過去一度だけだったとか。
その惨事は俺も知っている。この開拓団が崩壊した原因だ。
むろん大規模な備えも将来的には必要だが、今は日常を守ることが先決。
「防衛力のアップが第一優先事項か」
エアコンで寒さをしのげても、魔物に食われては意味がない。
聞けば、平均して月に一度は被害が出るという。
……ならば。
「カジル神父。村で戦える者とその装備をここに集めてくれ。現状の戦力を把握したい」
◇◇◇
一時間後。教会の前に三十人ほどの男たちが集まった。
彼らはかつての開拓団の子孫だ。体つきはがっしりしており、槍や弓の扱いにも慣れている様子が見て取れる。だが、その装備は……。
「ひどいな……刃こぼれどころか、錆で折れそうだぞ」
「この村には鍛冶屋がいねぇんです。砥石で研いじゃいますが、もう限界で……」
リーダー格の男が自身の持つボロボロの剣を見せながら、ため息をついた。
「わかった。皆ご苦労だった……装備をそこに置いていってくれ。俺がなんとかする」
村人たちが半信半疑ながらも、錆びた剣に鉄槍、盾、そして木製のボウガンを並べていく。
「わぁ……さびさびですねブラン様。これ、戦う前に壊れちゃいそうです」
「そうだな、リナ。こいつはなんとかせんとな」
俺は脳内で理想の武器をイメージする。
軽くて頑丈な剣や槍に盾と。
ペラペラと数枚の設計図が吐き出され、光とともに小人さんたちが現れた。
「わぁ~~でてきた!」
「ちいさなきしさんたちだ!」
集まってきた子供たちの言う通り、今回の小人さんたちは中世の騎士のようなピカピカの甲冑に身を包んでいた。
彼らはすぐさま錆びた剣や槍に取り付き、支度をはじめている様子。
だが俺は一つの異変に気づく。
ボウガンの周りに、小人が集まっていないのだ。
「あれ? ボウガンの設計図は出なかったのか?」
イメージが甘かったか。
再度集中しようとして、あることを思いついた。
待てよ。どうせならもっと強力な武器はどうなんだ?
俺は前世の知識を頼りに、最新式の自動小銃やミサイルランチャーを思い浮かべてみる。
―――ペラっ
「あれぇ~ブラン様~この絵、途中で途切れてますよ~」
リナの指摘通り出てきた紙は、途中で絵がぐちゃぐちゃになり文字がかすれていた。
つまり設計図が完成していない。
と同時に一人の小人さんが俺の前に立ち、ものすごい勢いでジェスチャーを始めた。
手を交差させてばってん、手をふりふり、腰もフリフリ。
「んん? できないのか?」
小人さんは次々とポーズを変えて、なにかを伝えようとしている。
「え? なになに~人数と道具が足りないの? それから……ふむふむ」
なんかリナと小人さんが通じ合い始めた。
「そっか~~ブラン様の魔力がまだそこまで熟してないから、今はもっとコツコツいこうよ!……ってことみたいですよ?」
「……リナ。お前、なんでそんなに正確にわかるんだ?」
「え? 見てればなんとなく分かりますよ♪」
……このメイド、コミュ力が高いどころか種族の壁すら超えてやがる。マジでコミュスペックがおかしい。
う~~む、そしてどうやら俺の魔力か魔法のレベルがあがらないと、ミサイルとかはダメなようだ。
「わかった、わかった。高望みはしない……なら、これはどうだ?」
俺は再びイメージを練り直した。ミサイルは無理でも、組織的に運用できるような規律と機能性を備えた装備。
一枚の紙が、力強い魔力とともに現れた。
むくり、ぴょこ。
ぴょこぴょこ。
ぴょこぴょこぴょこ。
「あ、また違う格好の小人さんですよ~~ブラン様!」
現れたのはこれまでの妖精風でも騎士風で業者風でもない。ビシッと糊のきいた軍服に身を包み、丈夫な軍靴を履いた小人さんたちだった。
ザッ、ザッ、ザッ!
二列横隊で完璧な整列を見せた彼らは、一斉に俺に向かって―――ピシィッ!と見事な敬礼を決める。
「やん、かわいい~~ブラン様、この子たちすっごく頼もしそうですよ♪」
「……よし。お前たち、頼んだぞ!」
俺が【設計図】を渡すと、軍服小人さんたちは再び敬礼。
すぐさまキビキビとした動作で、錆びたボウガンへ突撃していった。
「ふぅ……っと」
う……なんか頭がだるい。身体もなんか重いぞ。
「ふふ~~ブラン様頑張りましたね~でも無理しすぎはダメですよぉ~~♪」
ぐらりと揺れた俺の身体をリナが優しく支えてくれた。
ちょっと魔力を使いすぎたようだ。
だが、ムフフ……楽しみだな。俺の書いた【設計図】がどうなるか、明日が待ち遠しい。
俺はエアコンの効いた教会の中で大きく伸びをした。領主になって数日。九男坊の追放生活は今のところ、前世の趣味の延長線上でけっこう楽しめている。
「さて、リナ。晩ごはんも期待してるぞ」
「はいっ! 小人さんたちに負けないくらい、美味しいの作りますね~~♪」
その温かさに呼応するように、村人たちの凍てついていた表情も少しずつ解け始めていた。
その立役者はエアコンだけじゃない。
俺の隣で鼻歌交じりに巨大な鍋をかき混ぜている美少女、俺の専属メイドであるリナだ。
「さあさあ、みなさーん。朝ごはんできましたよっ~~♪ 今日はエド村特産ジャガイモのもちもちおだんごスープで~~す!」
リナが元気よく声をかけると、子供たちが真っ先にそして大人たちが遠慮がちに木の器を持って集まってきた。
村の備蓄は乏しい。あるのは、シワシワのジャガイモとカチカチに干された塩漬け肉、あとは乾燥したパセリくらいだ。だがリナはそれらを驚くほど美味いご馳走に変えてみせた。
「わぁ~い、ホクホクのすーぷだぁ♪」
「リナおねえちゃんのごはんすき~♪」
子供たちからは、すでにお姉ちゃん認定されている。
「う、うめぇ……なんだこれ、ジャガイモがいつもより柔らかい……」
「スープに肉の旨味が染み出してる……リナちゃん、あんた魔法使いか?」
「えへへ~~あたし料理が好きなんです♪」
リナはスープを盛った器を配りながら、巧みに村人たちの輪に溶け込んでいく。
村の老婆の肩を揉みながら世間話をしたり、泣いている子供の鼻を拭いて笑わせたり。
……この子のコミュ力、マジでとんでもないな。俺が実家で冷遇されていた十九年間、俺の心が腐らなかったのはこの明るさに救われていたからなんだろうなと改めて思う。
「ブラン様、冷めないうちにどうぞ!」
「ああ、ありがとうリナ」
差し出されたスープを口にする。
……美味い。
俺は料理に関しては前世でも多少自炊してたが、リナの料理は次元が違う。
食はとても重要な要素だ。これが充実すればするほど住民の幸福度が上がる。
正直な話、リナがついてきてくれて本当に助かるし嬉しい。
さて、腹も膨らんだことだし、そろそろ「領主」としての仕事を始めるとするか。
「……ん、これか」
俺は教会の古い机に持ってきた地図を広げた。それを見た子供たちがなんだなんだと不思議そうに覗き込んでくる。
「りょうしゅさま~~それな~に?」
「またこびとさんだすの?」
「いや、これはただの地図だ。領地のお勉強だよ」
俺は地図を指でなぞりながら現状を整理した。
このラスタールという土地は、改めて見ると地政学的にえげつない場所にある。
ラスタールはアイザス伯爵が王国から拝領した飛び地の領地で、我が国バルム王国の最果て。村の背後には大河が流れており、その川上へ行けば聖女などがいる宗教の総本山である聖教国、川下へ行けば軍事国家である帝国。そして大河を渡ったその先は、王国が調査を投げ出した未知の領域―――魔の森だ。
魔の森はいちおう王国領とはなっているが、ぶっちゃけ誰も統治なんかできてない。他国も下手に手を出して損害を出すよりは三国(王国、帝国、聖教国)の緩衝地帯みたいな感じで放置している様子。てか人がいるのかすら不明。
森の奥にはドラゴンだの何だの、ヤバいモンスターがわんさかいるという噂もある。
整理すると、このラスタールは王国のド辺境で。その左右を帝国と聖教国という大国の領地に挟まれるように隣接しており、その背後が未知のモンスター天国。
「……これ、普通に考えて詰んでないか?」
前世のゲームなら、間違いなく最高難易度の狂人設定だ。
いやいや、俺の魔法が役に立つと分かったんだ。そう簡単に白旗をあげてたまるか。
とにかく現状把握だ。
次に村のデータ。人口は約300人。
農作物はおもにジャガイモ、小麦、パセリ。肉類は狩猟による野うさぎや鳥。たまにイノシシ。いまは冬なので備蓄を切り詰めてなんとか冬を越す状態。
財政? そんな言葉はこの村にはない。保有貨幣はほとんどない。ていうか商人など一人も来ないし貨幣はほとんど使用していない状態。
家屋は約60戸、どれも老朽化が進んでいる。
食糧事情や住宅事情それにインフラなど改善すべき問題は山積みだが、それよりも。
「この村には、魔物や山賊の襲撃はあるのか?」
俺は、近くにいたカジル神父に聞いた。
「はい、ブラン様。賊は滅多に来ませんじゃ。こんな貧しい村を襲っても、得られるものはございませんからな……ですが、魔物は別です」
神父が教会の裏手に視線を移す。
そこには、墓と呼ぶにはあまりに粗末な木の棒がいくつも突き刺さっている区画だ。
「なるほど、魔物の被害はあるか」
「大河がある程度は防波堤になっておりますが、それでも河を渡ってくる魔物もいます。それに、空を飛ぶ奴もいますじゃ」
村自体は少し盛り上がった丘のような地形の最上段にあるらしく、大雨が続かないかぎりは水害は起こらないらしい。が、魔物は関係なくくる。
襲撃してくる魔物たちの規模はさまざま。スタンピードのような大量発生は神父がいる間は過去一度だけだったとか。
その惨事は俺も知っている。この開拓団が崩壊した原因だ。
むろん大規模な備えも将来的には必要だが、今は日常を守ることが先決。
「防衛力のアップが第一優先事項か」
エアコンで寒さをしのげても、魔物に食われては意味がない。
聞けば、平均して月に一度は被害が出るという。
……ならば。
「カジル神父。村で戦える者とその装備をここに集めてくれ。現状の戦力を把握したい」
◇◇◇
一時間後。教会の前に三十人ほどの男たちが集まった。
彼らはかつての開拓団の子孫だ。体つきはがっしりしており、槍や弓の扱いにも慣れている様子が見て取れる。だが、その装備は……。
「ひどいな……刃こぼれどころか、錆で折れそうだぞ」
「この村には鍛冶屋がいねぇんです。砥石で研いじゃいますが、もう限界で……」
リーダー格の男が自身の持つボロボロの剣を見せながら、ため息をついた。
「わかった。皆ご苦労だった……装備をそこに置いていってくれ。俺がなんとかする」
村人たちが半信半疑ながらも、錆びた剣に鉄槍、盾、そして木製のボウガンを並べていく。
「わぁ……さびさびですねブラン様。これ、戦う前に壊れちゃいそうです」
「そうだな、リナ。こいつはなんとかせんとな」
俺は脳内で理想の武器をイメージする。
軽くて頑丈な剣や槍に盾と。
ペラペラと数枚の設計図が吐き出され、光とともに小人さんたちが現れた。
「わぁ~~でてきた!」
「ちいさなきしさんたちだ!」
集まってきた子供たちの言う通り、今回の小人さんたちは中世の騎士のようなピカピカの甲冑に身を包んでいた。
彼らはすぐさま錆びた剣や槍に取り付き、支度をはじめている様子。
だが俺は一つの異変に気づく。
ボウガンの周りに、小人が集まっていないのだ。
「あれ? ボウガンの設計図は出なかったのか?」
イメージが甘かったか。
再度集中しようとして、あることを思いついた。
待てよ。どうせならもっと強力な武器はどうなんだ?
俺は前世の知識を頼りに、最新式の自動小銃やミサイルランチャーを思い浮かべてみる。
―――ペラっ
「あれぇ~ブラン様~この絵、途中で途切れてますよ~」
リナの指摘通り出てきた紙は、途中で絵がぐちゃぐちゃになり文字がかすれていた。
つまり設計図が完成していない。
と同時に一人の小人さんが俺の前に立ち、ものすごい勢いでジェスチャーを始めた。
手を交差させてばってん、手をふりふり、腰もフリフリ。
「んん? できないのか?」
小人さんは次々とポーズを変えて、なにかを伝えようとしている。
「え? なになに~人数と道具が足りないの? それから……ふむふむ」
なんかリナと小人さんが通じ合い始めた。
「そっか~~ブラン様の魔力がまだそこまで熟してないから、今はもっとコツコツいこうよ!……ってことみたいですよ?」
「……リナ。お前、なんでそんなに正確にわかるんだ?」
「え? 見てればなんとなく分かりますよ♪」
……このメイド、コミュ力が高いどころか種族の壁すら超えてやがる。マジでコミュスペックがおかしい。
う~~む、そしてどうやら俺の魔力か魔法のレベルがあがらないと、ミサイルとかはダメなようだ。
「わかった、わかった。高望みはしない……なら、これはどうだ?」
俺は再びイメージを練り直した。ミサイルは無理でも、組織的に運用できるような規律と機能性を備えた装備。
一枚の紙が、力強い魔力とともに現れた。
むくり、ぴょこ。
ぴょこぴょこ。
ぴょこぴょこぴょこ。
「あ、また違う格好の小人さんですよ~~ブラン様!」
現れたのはこれまでの妖精風でも騎士風で業者風でもない。ビシッと糊のきいた軍服に身を包み、丈夫な軍靴を履いた小人さんたちだった。
ザッ、ザッ、ザッ!
二列横隊で完璧な整列を見せた彼らは、一斉に俺に向かって―――ピシィッ!と見事な敬礼を決める。
「やん、かわいい~~ブラン様、この子たちすっごく頼もしそうですよ♪」
「……よし。お前たち、頼んだぞ!」
俺が【設計図】を渡すと、軍服小人さんたちは再び敬礼。
すぐさまキビキビとした動作で、錆びたボウガンへ突撃していった。
「ふぅ……っと」
う……なんか頭がだるい。身体もなんか重いぞ。
「ふふ~~ブラン様頑張りましたね~でも無理しすぎはダメですよぉ~~♪」
ぐらりと揺れた俺の身体をリナが優しく支えてくれた。
ちょっと魔力を使いすぎたようだ。
だが、ムフフ……楽しみだな。俺の書いた【設計図】がどうなるか、明日が待ち遠しい。
俺はエアコンの効いた教会の中で大きく伸びをした。領主になって数日。九男坊の追放生活は今のところ、前世の趣味の延長線上でけっこう楽しめている。
「さて、リナ。晩ごはんも期待してるぞ」
「はいっ! 小人さんたちに負けないくらい、美味しいの作りますね~~♪」

