88ミリ高射砲がクールダウンのため使用できないという危機的状況。
そんななか、エルフの族長ホトナが良く分からない事を言ってきた。
「いや、そうなんだけど今は大砲が熱を帯びすぎて使えないんだよ。だから砲弾を発射できないんだ」
「わかっておるのじゃ。われとてそこまでアホウではないのじゃ」
「なら砲撃以外の攻撃で、あの親玉ワイバーンを止めるしかないだろ」
「砲弾に関しては安心せい。大丈夫じゃ」
安心しろって……
「さっきから何を言って……」
いいから見れおれといったホトナはなぜか、きばるようなポーズをする。
「肉の精霊よ、我が部族の血肉となるのじゃ!」
だから肉の精霊って一体何なんだよ! とつっこもうとした俺の言葉は、ホトナを見て喉の奥へと引っ込んだ。
「一点集中フルパワーじゃあああああッッ!!」
バキバキバキバキッ!!
「……え?」
俺の目の前でホトナの小さな身体の衣服が、内側から膨れ上がる圧倒的な質量によって弾けそうに引き伸ばされていく。
なんだこりゃ……
さっきまで小柄で可愛らしかったはずのエルフの少女の身体が、一瞬にして前世のボディビルダーも裸足で逃げ出すほどの、筋肉ムキムキの超絶マッスルボディへと変貌を遂げていくではないか。
血管が浮き出た丸太のような腕、鋼鉄の板のような大胸筋。
顔だけは可愛いホトナのままだが、首から下が「誰だよ、おまえ?」状態である。
ていうか、マジで誰なんだよ……
て言いたくなるぐらいの別人。
「よし、ぴょんとな」
かわいい掛け声を信じられないほど野太く低い声で発したホトナは、外壁の上から地表へとドスンと飛び降りた。地面にひびが入るほどの凄まじい着地衝撃だ。
そして彼女は地面に平積みされていた、重さ約15キロもある88ミリ砲弾をまるで小石でも扱うかのようにガシッと片手で掴み取った。
そしてブンブン腕を振り回して……
「うらぁあああああ~~~~~じゃあ!!」
ホトナは全身の筋肉をバネのようにしならせると、手にした88ミリ砲弾を突進してくる親玉ワイバーンに向けて正面から力任せにブン投げた。
砲弾は凄まじい風切り音を立てて一直線に空を駆ける。
親玉ワイバーンは、いきなり飛んできた豪送球砲弾を避ける暇もなく、顔面に受けた。
「グワァッ、ガッ!?」
――――――ズガァアアアアアンン!!
ワイバーンの顔面で88ミリ砲弾の凄まじい大爆発が巻き起こった。その衝撃は親玉ワイバーンの頭部を容赦なく襲い、その分厚い肉と骨もろとも木端微塵に粉砕した。
完全直撃だ。
ズーーーーン……
悲鳴を上げる暇さえなかった。群れの王であった巨獣は頭部を完全に喪失し、その巨体を激しく痙攣させながら地表へと真っ逆さまに墜落して二度と動かなくなった。
それを見ていた残りのワイバーンたちに動揺と恐怖が広がった。これ以上の戦闘継続は不可能と判断したのだろう。生き残った10頭ほどのワイバーンたちは、一斉に反転し一目散に魔の森の彼方へと逃げ去っていく。
静まり返る戦場。
「ふ、ふおぉお……」
「な、なにが……」
はじめはみんな、何が起こったのか瞬時に理解できない。
そりゃそうだ。今の今まで死ぬ気の激戦が繰り広げられていたのだから。
「……勝った」
「やったんだ……」
だがその小さな声はしだいに大きさを増していく。
おれは抜刀した剣を空に掲げた。
「みんなよくやった――――――俺たちの勝利だぁあああ!!」
「「「「「うぉおおおおお!!!」」」」」
村人たちの感情が爆発した。
今までずっと苦しめられてきたワイバーンを退けた。
その事実を嚙みしめるように喜び合っている。
そんな歓喜のなか、ふと地表を見るとホトナが「スン……」と何事もなかったかのように元の可愛らしいエルフの姿に戻っていた。衣服がベロベロに伸びきっているが、本人は気にしていないようだ。
「ふぅ……肉の精霊を使い果たしたのじゃ~お腹が空いて一歩も動けんのじゃ。ブラン、はよう肉~~美味い肉をたらふく食わせるのじゃ!」
その場にへたり込むホトナ。
肉の精霊さん……マジで凄えな。
爆発的な力が出るのは一瞬だけのようだが、まさに筋肉砲だ。
「ふぅ……」
俺は冷や汗を拭いながら、何はともあれ最大の危機を脱したことに深く安堵した。
戦いが終わり硝煙がゆっくりと風に流されていく中、俺は壁の陰に横たわるアクシラの元へと歩み寄る。
彼女はゆっくりと規則正しい寝息を立てていたが、俺の足音に気付いたのかうっすらと長いまつ毛を揺らしてその青い瞳を開いた。
「ブラン様……」
「よくやったな、アクシラ。教会も、みんなの命も助かったぞ」
俺が優しく声をかけると、彼女はホッとしたように胸をなでおろした。
「はい……。わたくし、お役に立てたのですね」
「ああ、もちろんだ。これで俺たちのエアコンの効いた妄想ワクワク快適パラダイス村の計画も守られた。これからどんどん面白いものを作っていくから、楽しみにしてろよ」
「ふふ、これからもブラン様のとんでもないものが見れるんですね」
アクシラがその綺麗な銀髪を少し揺らす。
彼女も来た当初に比べれば、ずいぶんと柔らかい笑みがこぼれるようになったな。
「……ああ、それと俺との婚約の件は、もう気にしなくていいからな。アクシラ、君は自由だ」
彼女の心の負担を減らそうと、俺なりに配慮してそう告げたのだが。
「…………気にします」
「え?」
もの凄く小さな声だった。だが、確かに彼女はそう呟いた。
「ふむ。どうやらアクシラお嬢様は、自由になることよりもブラン様の婚約者であることの方が、色々と気になるご様子ですな」
傍で一部始終を見ていたセバロが、メガネの奥の目を細めてムフフと悪戯っぽく笑う。
当のアクシラ本人はというと、自分の発言の恥ずかしさに今更気づいたのか、カァッと耳の根元まで真っ赤になり、俺の胸元に顔をうずめるようにして俯いてしまった。
なにこの子……めちゃくちゃ可愛い。
なにはともあれ生き残った。
こうして、ラスタール領エド村を襲ったワイバーンとの激戦は、幕を閉じた。激しい大乱戦だったため、建物の損壊や怪我人などの負傷者はかなりの数を出してしまった。だが――奇跡的なことに、村側の死者はただの一人も出なかったのだ。
やったぜ。
ワイバーンの季節を俺たちは乗り切ったんだ。
そんななか、エルフの族長ホトナが良く分からない事を言ってきた。
「いや、そうなんだけど今は大砲が熱を帯びすぎて使えないんだよ。だから砲弾を発射できないんだ」
「わかっておるのじゃ。われとてそこまでアホウではないのじゃ」
「なら砲撃以外の攻撃で、あの親玉ワイバーンを止めるしかないだろ」
「砲弾に関しては安心せい。大丈夫じゃ」
安心しろって……
「さっきから何を言って……」
いいから見れおれといったホトナはなぜか、きばるようなポーズをする。
「肉の精霊よ、我が部族の血肉となるのじゃ!」
だから肉の精霊って一体何なんだよ! とつっこもうとした俺の言葉は、ホトナを見て喉の奥へと引っ込んだ。
「一点集中フルパワーじゃあああああッッ!!」
バキバキバキバキッ!!
「……え?」
俺の目の前でホトナの小さな身体の衣服が、内側から膨れ上がる圧倒的な質量によって弾けそうに引き伸ばされていく。
なんだこりゃ……
さっきまで小柄で可愛らしかったはずのエルフの少女の身体が、一瞬にして前世のボディビルダーも裸足で逃げ出すほどの、筋肉ムキムキの超絶マッスルボディへと変貌を遂げていくではないか。
血管が浮き出た丸太のような腕、鋼鉄の板のような大胸筋。
顔だけは可愛いホトナのままだが、首から下が「誰だよ、おまえ?」状態である。
ていうか、マジで誰なんだよ……
て言いたくなるぐらいの別人。
「よし、ぴょんとな」
かわいい掛け声を信じられないほど野太く低い声で発したホトナは、外壁の上から地表へとドスンと飛び降りた。地面にひびが入るほどの凄まじい着地衝撃だ。
そして彼女は地面に平積みされていた、重さ約15キロもある88ミリ砲弾をまるで小石でも扱うかのようにガシッと片手で掴み取った。
そしてブンブン腕を振り回して……
「うらぁあああああ~~~~~じゃあ!!」
ホトナは全身の筋肉をバネのようにしならせると、手にした88ミリ砲弾を突進してくる親玉ワイバーンに向けて正面から力任せにブン投げた。
砲弾は凄まじい風切り音を立てて一直線に空を駆ける。
親玉ワイバーンは、いきなり飛んできた豪送球砲弾を避ける暇もなく、顔面に受けた。
「グワァッ、ガッ!?」
――――――ズガァアアアアアンン!!
ワイバーンの顔面で88ミリ砲弾の凄まじい大爆発が巻き起こった。その衝撃は親玉ワイバーンの頭部を容赦なく襲い、その分厚い肉と骨もろとも木端微塵に粉砕した。
完全直撃だ。
ズーーーーン……
悲鳴を上げる暇さえなかった。群れの王であった巨獣は頭部を完全に喪失し、その巨体を激しく痙攣させながら地表へと真っ逆さまに墜落して二度と動かなくなった。
それを見ていた残りのワイバーンたちに動揺と恐怖が広がった。これ以上の戦闘継続は不可能と判断したのだろう。生き残った10頭ほどのワイバーンたちは、一斉に反転し一目散に魔の森の彼方へと逃げ去っていく。
静まり返る戦場。
「ふ、ふおぉお……」
「な、なにが……」
はじめはみんな、何が起こったのか瞬時に理解できない。
そりゃそうだ。今の今まで死ぬ気の激戦が繰り広げられていたのだから。
「……勝った」
「やったんだ……」
だがその小さな声はしだいに大きさを増していく。
おれは抜刀した剣を空に掲げた。
「みんなよくやった――――――俺たちの勝利だぁあああ!!」
「「「「「うぉおおおおお!!!」」」」」
村人たちの感情が爆発した。
今までずっと苦しめられてきたワイバーンを退けた。
その事実を嚙みしめるように喜び合っている。
そんな歓喜のなか、ふと地表を見るとホトナが「スン……」と何事もなかったかのように元の可愛らしいエルフの姿に戻っていた。衣服がベロベロに伸びきっているが、本人は気にしていないようだ。
「ふぅ……肉の精霊を使い果たしたのじゃ~お腹が空いて一歩も動けんのじゃ。ブラン、はよう肉~~美味い肉をたらふく食わせるのじゃ!」
その場にへたり込むホトナ。
肉の精霊さん……マジで凄えな。
爆発的な力が出るのは一瞬だけのようだが、まさに筋肉砲だ。
「ふぅ……」
俺は冷や汗を拭いながら、何はともあれ最大の危機を脱したことに深く安堵した。
戦いが終わり硝煙がゆっくりと風に流されていく中、俺は壁の陰に横たわるアクシラの元へと歩み寄る。
彼女はゆっくりと規則正しい寝息を立てていたが、俺の足音に気付いたのかうっすらと長いまつ毛を揺らしてその青い瞳を開いた。
「ブラン様……」
「よくやったな、アクシラ。教会も、みんなの命も助かったぞ」
俺が優しく声をかけると、彼女はホッとしたように胸をなでおろした。
「はい……。わたくし、お役に立てたのですね」
「ああ、もちろんだ。これで俺たちのエアコンの効いた妄想ワクワク快適パラダイス村の計画も守られた。これからどんどん面白いものを作っていくから、楽しみにしてろよ」
「ふふ、これからもブラン様のとんでもないものが見れるんですね」
アクシラがその綺麗な銀髪を少し揺らす。
彼女も来た当初に比べれば、ずいぶんと柔らかい笑みがこぼれるようになったな。
「……ああ、それと俺との婚約の件は、もう気にしなくていいからな。アクシラ、君は自由だ」
彼女の心の負担を減らそうと、俺なりに配慮してそう告げたのだが。
「…………気にします」
「え?」
もの凄く小さな声だった。だが、確かに彼女はそう呟いた。
「ふむ。どうやらアクシラお嬢様は、自由になることよりもブラン様の婚約者であることの方が、色々と気になるご様子ですな」
傍で一部始終を見ていたセバロが、メガネの奥の目を細めてムフフと悪戯っぽく笑う。
当のアクシラ本人はというと、自分の発言の恥ずかしさに今更気づいたのか、カァッと耳の根元まで真っ赤になり、俺の胸元に顔をうずめるようにして俯いてしまった。
なにこの子……めちゃくちゃ可愛い。
なにはともあれ生き残った。
こうして、ラスタール領エド村を襲ったワイバーンとの激戦は、幕を閉じた。激しい大乱戦だったため、建物の損壊や怪我人などの負傷者はかなりの数を出してしまった。だが――奇跡的なことに、村側の死者はただの一人も出なかったのだ。
やったぜ。
ワイバーンの季節を俺たちは乗り切ったんだ。

