波打ち際のチョコレート

彼は水のない川だと言う。「人生は、彼の空っぽの体の中を過ぎていく水のようだ」と。
私もそう。もし神様が彼に私を失わせたかったのなら、それでいい。ただ過ぎていくんだって。
でも、私は自分が小さな種だと思う。流れ着いて、小さな花を咲かせた。彼の体の上で、一生をかけて人生という川を一緒に眺めたいと願った。
なのに彼は私を押しのけた。私に必要な栄養をくれなかった。少しずつ、少しずつ、力がなくなっていく。彼にあげた笑顔や温かい思い出は、川に流されて消えていってしまう。
だから、今、私はたんぽぽになって飛んでいく。違う世界へ。他の人の心にたどり着けるように。
私の根は、彼の川辺で時間をかけて土になる。なかったように見えるけれど、実はほんの少しだけ何かが違う。そんなちっぽけな存在になっていく。