翌日。休憩時間中に次の移動教室の場所まで向かう廊下で、数枚の破れた紙切れを見つける。無視して通り過ぎ……てもよかったのだが、『スクープ』という文字が目に入りつい立ち止まってしまう。
目の前に落ちていた紙切れが1枚……見渡せば、風に飛ばされたのか遠くでも数枚落ちている。拾い上げて掲示板の元まで向かえば……新聞部の記事がビリビリに破かれていた。
(誰の仕業だろう。……こういうのって誰に報告するのがいいのかな。担任の先生? 学級委員長? それとも、新聞部に──)
「まさか神谷が破いていたとはね」
声がした方に顔を向ければ……2ヶ月前に僕が宿題を手伝わなくて苛立っていた同級生に立ち会う。
「なに?」
「陰キャくんさ〜、ミヤマが羨ましいからって、そういうのは良くないんじゃない?」
へらへらと、嫌な笑みで。
僕が新聞の記事を破ったと勘違いしているのか。
「僕は、ただ拾っただけで──」
「紙切れをたくさん手に持っておいて、ナニモシテマセン、てか? 流石、陰キャくんはやることが姑息だよね〜」
「……」
現状だけを見て決めつける同級生も大概だ。呆れて、言い返す気も失せ新聞部の誰かに伝えようと歩き出せば「待てよ!」と肩を掴まれる。
「……なに」
「逃げんなよ! 謝れば許してやるのに」
「……キミは、新聞部の人だっけ」
「ちげーけど。オレはミヤマのダチだし」
「……破ったのは僕じゃないよ」
「お前、あまりオレを怒らせんなよ」
駄目だ。言葉が通じていない。離れたいけど、肩を強く掴まれたままで正直痛い。しかし余計なことを言って怒らせると更に面倒だ……と立ち往生していれば「なんだよ、喧嘩か〜?」と慧護がやって来た。
「あ、丁度いいところに! ミヤマ! コイツ、新聞部の記事ビリビリに引き裂いてたぞ!」
「へ?」
「オレが丁度見つけたんだ! なのにコイツしらばっくれててさ〜」
慧護がじ……とこちらを見てくる。顎に手を添え「ふーむ」と考え込んでいる。
慧護なら、多分僕の話を聞いてくれるはず。ただ、この決めつけてくる同級生が面倒だった。
「ほら、ミヤマに謝れよ!」
「……スミマセンデシタ」
観念して頭を下げれば、慧護は目を見開いて僕を見つめている。変な空気になる中、決めつけ同級生だけが鼻を高くして得意げだ。
「ほらな! やっぱり犯人はお前だったんだ! 初めから認めればいいのに嘘をついて──」
「あー。うん。犯人探しありがとう。助かった。あとは俺から言っておくよ」
満足気に去っていく決めつけ同級生の背中を見つめていれば「で、ほんとはどうなの?」と慧護が聞いてくる。
「……僕が来た時には、すでに破られてたんだ。数枚拾って、手に持っていたところを……あの決めつけ同級生に見られて」
「決めつけ同級生って。田沼な」
何かと僕に突っかかってくる同級生は田沼という名前らしい。
「本当のこと言えばいいのに」
「言ったよ! 言ったけど……聞く耳持たずで……神山くんが来てくれて、助かった」
「慧護って呼んで」
「……慧護、クン」
名前を呼べば、満足そうに彼は笑う。
(変なひと……)
でも、僕の言葉は信じてくれる。だから、彼のことは信用してもいいはず。仲良くなれるかは別だけど。
「縁。今年の夏休み、肝試し来る?」
そういえば毎年学校で主催しているのだったか。友達がいない僕は去年は当然のように参加せず、今年も参加予定はなかった。
「勿論、行かないよ」
「勿論て。なあ、一緒に夜の学校回ってみようぜ? 俺らのグループと」
「神山くんは……慧護くんは、どうして僕とそんなに一緒に何かやりたがるのか不思議」
「前にも言ったろ。シンプルに仲良くなりたいんだよ」
「……陽キャグループとは相容れないので、ごめんなさい」
そもそも心霊系が苦手だった。夜の学校など以ての外だ。慧護と……2人だったら、案外いけるのかもしれないけど……って、何を考えているんだ僕は。
「でも、新聞破ったのは縁だろ〜?」
「それはさっき訂正して──」
「でも多分田沼は今頃クラスメイトに言いふらして縁が破ったと知れ渡ってるだろうな〜」
「な……っ!」
それをわかっていながら慧護はなぜ田沼を先に行かせたのか。ただでさえぼっちなのにさらに教室の居心地が悪くなってしまう……と震えていれば「だからさ」と慧護は明るい笑みで言う。
「しばらく俺と行動しろよ」
「……どういうこと、デスカ」
「クラスメイトにちょっかいかけられないようにするから、俺の隣にいろってこと」
「……はぁ」
「新聞破った弱みってことで。頼む! だから今週の肝試し一緒に来て!」
そんな両手を合わせて頭を下げられたら。絶対に行きたくない、という訳でもなかった僕は気圧されながらも頷いてしまった。途端に嬉しそうに顔を綻ばせ「絶対だぞ!」と小指同士を絡めてブンブンと腕を振る。
「そんなに肝試し楽しみなの?」
「ああ、楽しみだよ!」
慧護はしたり顔で言う。
「縁に肝試しの写真撮ってもらって、それを記事にしたら一石二鳥じゃね⁉︎」
目の前に落ちていた紙切れが1枚……見渡せば、風に飛ばされたのか遠くでも数枚落ちている。拾い上げて掲示板の元まで向かえば……新聞部の記事がビリビリに破かれていた。
(誰の仕業だろう。……こういうのって誰に報告するのがいいのかな。担任の先生? 学級委員長? それとも、新聞部に──)
「まさか神谷が破いていたとはね」
声がした方に顔を向ければ……2ヶ月前に僕が宿題を手伝わなくて苛立っていた同級生に立ち会う。
「なに?」
「陰キャくんさ〜、ミヤマが羨ましいからって、そういうのは良くないんじゃない?」
へらへらと、嫌な笑みで。
僕が新聞の記事を破ったと勘違いしているのか。
「僕は、ただ拾っただけで──」
「紙切れをたくさん手に持っておいて、ナニモシテマセン、てか? 流石、陰キャくんはやることが姑息だよね〜」
「……」
現状だけを見て決めつける同級生も大概だ。呆れて、言い返す気も失せ新聞部の誰かに伝えようと歩き出せば「待てよ!」と肩を掴まれる。
「……なに」
「逃げんなよ! 謝れば許してやるのに」
「……キミは、新聞部の人だっけ」
「ちげーけど。オレはミヤマのダチだし」
「……破ったのは僕じゃないよ」
「お前、あまりオレを怒らせんなよ」
駄目だ。言葉が通じていない。離れたいけど、肩を強く掴まれたままで正直痛い。しかし余計なことを言って怒らせると更に面倒だ……と立ち往生していれば「なんだよ、喧嘩か〜?」と慧護がやって来た。
「あ、丁度いいところに! ミヤマ! コイツ、新聞部の記事ビリビリに引き裂いてたぞ!」
「へ?」
「オレが丁度見つけたんだ! なのにコイツしらばっくれててさ〜」
慧護がじ……とこちらを見てくる。顎に手を添え「ふーむ」と考え込んでいる。
慧護なら、多分僕の話を聞いてくれるはず。ただ、この決めつけてくる同級生が面倒だった。
「ほら、ミヤマに謝れよ!」
「……スミマセンデシタ」
観念して頭を下げれば、慧護は目を見開いて僕を見つめている。変な空気になる中、決めつけ同級生だけが鼻を高くして得意げだ。
「ほらな! やっぱり犯人はお前だったんだ! 初めから認めればいいのに嘘をついて──」
「あー。うん。犯人探しありがとう。助かった。あとは俺から言っておくよ」
満足気に去っていく決めつけ同級生の背中を見つめていれば「で、ほんとはどうなの?」と慧護が聞いてくる。
「……僕が来た時には、すでに破られてたんだ。数枚拾って、手に持っていたところを……あの決めつけ同級生に見られて」
「決めつけ同級生って。田沼な」
何かと僕に突っかかってくる同級生は田沼という名前らしい。
「本当のこと言えばいいのに」
「言ったよ! 言ったけど……聞く耳持たずで……神山くんが来てくれて、助かった」
「慧護って呼んで」
「……慧護、クン」
名前を呼べば、満足そうに彼は笑う。
(変なひと……)
でも、僕の言葉は信じてくれる。だから、彼のことは信用してもいいはず。仲良くなれるかは別だけど。
「縁。今年の夏休み、肝試し来る?」
そういえば毎年学校で主催しているのだったか。友達がいない僕は去年は当然のように参加せず、今年も参加予定はなかった。
「勿論、行かないよ」
「勿論て。なあ、一緒に夜の学校回ってみようぜ? 俺らのグループと」
「神山くんは……慧護くんは、どうして僕とそんなに一緒に何かやりたがるのか不思議」
「前にも言ったろ。シンプルに仲良くなりたいんだよ」
「……陽キャグループとは相容れないので、ごめんなさい」
そもそも心霊系が苦手だった。夜の学校など以ての外だ。慧護と……2人だったら、案外いけるのかもしれないけど……って、何を考えているんだ僕は。
「でも、新聞破ったのは縁だろ〜?」
「それはさっき訂正して──」
「でも多分田沼は今頃クラスメイトに言いふらして縁が破ったと知れ渡ってるだろうな〜」
「な……っ!」
それをわかっていながら慧護はなぜ田沼を先に行かせたのか。ただでさえぼっちなのにさらに教室の居心地が悪くなってしまう……と震えていれば「だからさ」と慧護は明るい笑みで言う。
「しばらく俺と行動しろよ」
「……どういうこと、デスカ」
「クラスメイトにちょっかいかけられないようにするから、俺の隣にいろってこと」
「……はぁ」
「新聞破った弱みってことで。頼む! だから今週の肝試し一緒に来て!」
そんな両手を合わせて頭を下げられたら。絶対に行きたくない、という訳でもなかった僕は気圧されながらも頷いてしまった。途端に嬉しそうに顔を綻ばせ「絶対だぞ!」と小指同士を絡めてブンブンと腕を振る。
「そんなに肝試し楽しみなの?」
「ああ、楽しみだよ!」
慧護はしたり顔で言う。
「縁に肝試しの写真撮ってもらって、それを記事にしたら一石二鳥じゃね⁉︎」
