朝、学校へ向かう途中。道端に咲いてる小さな花を首から下げたカメラで一枚撮る。その花は夜の間に降っていた雨の雫が朝日に照らされて、きらきらと輝いていた。
満足していたら、後ろから追いかけっこをしていた同級生と体がぶつかり僕の体は横に倒れる。それなりに大きな衝撃だった。地面に打ち付けられた僕は呻きながら相手を睨みつければ「ごめん、気付かなくて!」と謝られる。
「怪我はない?」
「ない、けど」
「じゃーよかった! あー女子じゃなくてよかった〜! アイツら何かと集団で煩いからさ〜!」
同級生はそのまま一緒にいた友人と歩いていく。1人残された僕は、のろのろと立ち上がり……先ほど綺麗だと思っていた小さな花が、踏み潰されてしまったところを見る。
(まあ、こんな小さなものを気にするのは僕くらいだろうな……)
ズボンについた汚れを取り払い、教室に向かう。
*
朝のHRが始まる前に先ほど撮った花の写真を見返す。同級生に踏まれてしまったけれど、直前に撮ったものだったから朝日に照らされた雫も綺麗に撮れている。いいものを撮れた、と少し胸が弾む。
(次の展示はこの写真にしようかな──)
「何見てんの?」
背後から突然声をかけられ、ハッとカメラの画面を消す。「あー見たかったのにー」と残念そうに呟くのは、僕の後ろの席の……神山 慧護だった。
「……別に。大したものじゃないから」
「ふーん。神谷って写真部なんだっけ」
神山は僕のことを神谷と呼ぶ。何を隠そう、僕たちは苗字が似てるから席も前後だった。いつも皆に囲まれて人気の神山と、ずっと1人で写真ばかり撮っている僕は対照的だった。「かみや」までは2人とも被ってしまうので、同級生は神山を呼ぶ時はあだ名で「ミヤマ」と言っていた。
「……写真部だけど……何?」
「なるほどねえ。ね、今見てたやつ見せてくれない?」
「……嫌です」
「ちぇー、つまんなー」
唇を尖らせる。クラスで人気の神山を怒らせてしまったか、と身構えるも彼は僕から興味を失くしたように机に上半身を乗せて伸びをする。
「ミヤマ〜、課題やった⁉︎ 写させて!」
「帰りにアイス奢ってな〜」
今日提出の課題をまだ終わらせていない生徒たちがわらわらと後ろの席に集まっていく。「お前らちょっとは自力で解けよ〜」と笑う神山と「ごめんて〜、でも忘れずにやってきてるのミヤマくらいだし〜」と遅れてやってきた同級生が割り込んで僕の背中にドン、と当たる。「いたっ」と思わず声が出るも、その子は僕に見向きもしない。
(何だよ……というか、僕も課題はやってきてるし……殆どの生徒はやってきてるはず……写させてくれるの間違いだろ?)
内心腹が立つも、結局は何も言えずに俯いてもう一度朝撮った写真を見返していく。
(早く席替えしたいなあ……)
2年生に進級して、僕とは全く正反対の神山に出会った。彼は多分何も気にしていないけど、僕が勝手に人の目を気にしてしまって憂鬱だった。
別に神山から何か嫌なことされたわけではないのだけれど。
夏になったら、席替えだ。
それまではひたすら大人しくして目立たないようにしようと心に決める。
満足していたら、後ろから追いかけっこをしていた同級生と体がぶつかり僕の体は横に倒れる。それなりに大きな衝撃だった。地面に打ち付けられた僕は呻きながら相手を睨みつければ「ごめん、気付かなくて!」と謝られる。
「怪我はない?」
「ない、けど」
「じゃーよかった! あー女子じゃなくてよかった〜! アイツら何かと集団で煩いからさ〜!」
同級生はそのまま一緒にいた友人と歩いていく。1人残された僕は、のろのろと立ち上がり……先ほど綺麗だと思っていた小さな花が、踏み潰されてしまったところを見る。
(まあ、こんな小さなものを気にするのは僕くらいだろうな……)
ズボンについた汚れを取り払い、教室に向かう。
*
朝のHRが始まる前に先ほど撮った花の写真を見返す。同級生に踏まれてしまったけれど、直前に撮ったものだったから朝日に照らされた雫も綺麗に撮れている。いいものを撮れた、と少し胸が弾む。
(次の展示はこの写真にしようかな──)
「何見てんの?」
背後から突然声をかけられ、ハッとカメラの画面を消す。「あー見たかったのにー」と残念そうに呟くのは、僕の後ろの席の……神山 慧護だった。
「……別に。大したものじゃないから」
「ふーん。神谷って写真部なんだっけ」
神山は僕のことを神谷と呼ぶ。何を隠そう、僕たちは苗字が似てるから席も前後だった。いつも皆に囲まれて人気の神山と、ずっと1人で写真ばかり撮っている僕は対照的だった。「かみや」までは2人とも被ってしまうので、同級生は神山を呼ぶ時はあだ名で「ミヤマ」と言っていた。
「……写真部だけど……何?」
「なるほどねえ。ね、今見てたやつ見せてくれない?」
「……嫌です」
「ちぇー、つまんなー」
唇を尖らせる。クラスで人気の神山を怒らせてしまったか、と身構えるも彼は僕から興味を失くしたように机に上半身を乗せて伸びをする。
「ミヤマ〜、課題やった⁉︎ 写させて!」
「帰りにアイス奢ってな〜」
今日提出の課題をまだ終わらせていない生徒たちがわらわらと後ろの席に集まっていく。「お前らちょっとは自力で解けよ〜」と笑う神山と「ごめんて〜、でも忘れずにやってきてるのミヤマくらいだし〜」と遅れてやってきた同級生が割り込んで僕の背中にドン、と当たる。「いたっ」と思わず声が出るも、その子は僕に見向きもしない。
(何だよ……というか、僕も課題はやってきてるし……殆どの生徒はやってきてるはず……写させてくれるの間違いだろ?)
内心腹が立つも、結局は何も言えずに俯いてもう一度朝撮った写真を見返していく。
(早く席替えしたいなあ……)
2年生に進級して、僕とは全く正反対の神山に出会った。彼は多分何も気にしていないけど、僕が勝手に人の目を気にしてしまって憂鬱だった。
別に神山から何か嫌なことされたわけではないのだけれど。
夏になったら、席替えだ。
それまではひたすら大人しくして目立たないようにしようと心に決める。
