ナニカに見つからないように、ゆっくりと進んでいく。静かにしていればぬちょ、ぐちょ……という足音は聞こえて来るはずだ。
しかし1階から2階、3階を端から端まで歩いてもナニカに出会うことはなかった。すれ違っているのだろうか。
「ずっと息を詰めているのも、疲れる……」
「そうだな。無闇に歩き回っても体力消耗するだけだし。教室に入って休憩するか」
慧護が教室に入り廊下側の席に座る。僕も続けて入ってその後ろの席に座った。
廊下の窓から見える月をぼんやり眺める。
(とんでもないことになっちゃったな)
「ごめんな、縁を巻き込むことになった」
体を横向きにさせて慧護は僕を見つめて謝る。
「……え?」
「縁を誘ったのは俺だ。乗り気じゃなかった縁だったのに、こんなことになって。早く帰してやりたいけど、俺も手探りなんだ」
ごめん、と頭を下げられる。
呆然と見つめ、慌てて首を振る。
「た、確かに肝試しは乗り気じゃなかったけど……僕がここに来たのは、慧護くんの誘いを断る勇気が出なかっただけで……」
「嫌だったんだろ?」
そうだけど、少し違う。
首を振りながら、僕の気持ちを考えながら言葉で伝えてみる。
「楽しみにしてた慧護くんをがっかりさせたくないなって、思って……」
「……」
「あ、なんか、変かな。気持ち悪いかも。いや、あのね。僕の言葉をちゃんと聞いてくれるのって慧護くんしかいなくて……だから、慧護くんの楽しみにしてる気持ちを、無駄にはしたくないなって……」
狐と狸を記事にはしない方がいいと伝えたら「そうかもしれない」と言ってくれたことも。
記事を破った犯人にされても無実だと信じてくれて、クラスメイトから嫌味を言われないように隣にいてくれるようになったことも。
何度も「肝試し来いよ」と確認して去っていく慧護の気持ちを想像したら。
僕は随分彼に絆されてしまったのだろう。伝えながら、段々と胸が熱くなる感覚にこれが友人を想う気持ちなのだろうか。心の中で自問自答していれば慧護が声を上げて笑った。
「俺のアプローチは無駄じゃなかったのか。よかった。俺のことを想ってくれたんだ、嬉しいな」
素直に笑って見つめてくる目を、まだ真っ直ぐには受け止められずに目線は彷徨って俯く。
「慧護くんは、僕を理解しようとしてくれるから……僕も慧護くんを知りたいなって、思った」
真っ直ぐで温かい、太陽みたいな人だ。僕はぬくぬくとその光に温められて隣にいることが普通になってきてしまっている。
(ここから逃げ出せたら、元の関係に戻ってしまうのかな)
何を考えてるんだと寂しく思った気持ちを振り払う。生死が関わっているのだ。
月をもう一度見上げようとした時、ぬちょ、ぐちょ……とゆっくり近づいて来るナニカの気配を感じた。
しかし1階から2階、3階を端から端まで歩いてもナニカに出会うことはなかった。すれ違っているのだろうか。
「ずっと息を詰めているのも、疲れる……」
「そうだな。無闇に歩き回っても体力消耗するだけだし。教室に入って休憩するか」
慧護が教室に入り廊下側の席に座る。僕も続けて入ってその後ろの席に座った。
廊下の窓から見える月をぼんやり眺める。
(とんでもないことになっちゃったな)
「ごめんな、縁を巻き込むことになった」
体を横向きにさせて慧護は僕を見つめて謝る。
「……え?」
「縁を誘ったのは俺だ。乗り気じゃなかった縁だったのに、こんなことになって。早く帰してやりたいけど、俺も手探りなんだ」
ごめん、と頭を下げられる。
呆然と見つめ、慌てて首を振る。
「た、確かに肝試しは乗り気じゃなかったけど……僕がここに来たのは、慧護くんの誘いを断る勇気が出なかっただけで……」
「嫌だったんだろ?」
そうだけど、少し違う。
首を振りながら、僕の気持ちを考えながら言葉で伝えてみる。
「楽しみにしてた慧護くんをがっかりさせたくないなって、思って……」
「……」
「あ、なんか、変かな。気持ち悪いかも。いや、あのね。僕の言葉をちゃんと聞いてくれるのって慧護くんしかいなくて……だから、慧護くんの楽しみにしてる気持ちを、無駄にはしたくないなって……」
狐と狸を記事にはしない方がいいと伝えたら「そうかもしれない」と言ってくれたことも。
記事を破った犯人にされても無実だと信じてくれて、クラスメイトから嫌味を言われないように隣にいてくれるようになったことも。
何度も「肝試し来いよ」と確認して去っていく慧護の気持ちを想像したら。
僕は随分彼に絆されてしまったのだろう。伝えながら、段々と胸が熱くなる感覚にこれが友人を想う気持ちなのだろうか。心の中で自問自答していれば慧護が声を上げて笑った。
「俺のアプローチは無駄じゃなかったのか。よかった。俺のことを想ってくれたんだ、嬉しいな」
素直に笑って見つめてくる目を、まだ真っ直ぐには受け止められずに目線は彷徨って俯く。
「慧護くんは、僕を理解しようとしてくれるから……僕も慧護くんを知りたいなって、思った」
真っ直ぐで温かい、太陽みたいな人だ。僕はぬくぬくとその光に温められて隣にいることが普通になってきてしまっている。
(ここから逃げ出せたら、元の関係に戻ってしまうのかな)
何を考えてるんだと寂しく思った気持ちを振り払う。生死が関わっているのだ。
月をもう一度見上げようとした時、ぬちょ、ぐちょ……とゆっくり近づいて来るナニカの気配を感じた。
