突然の数人の悲鳴。
見事に固まる僕の腕を掴んで真横にある教室に慧護は入り込み、そっと窓から様子を見る。
バタバタと廊下からこちら側に走ってくる気配。息を切らして後ろを振り返り「何なんだよアレは!」と叫んでいるのは田沼だった。
「外には出られないし、赤黒くて気持ち悪いのは何なんだよ! 他のグループもたくさんいてすれ違うはずなのに全然姿見ねえし……!」
「や、やっぱりさっきのグループはアレに呑み込まれたんじゃ……っ」
「馬鹿言うなよ! 洒落にならねえって! ただの肝試しで本物の化け物が出るなんて聞いてねえよ!」
僕たちが隠れている教室を田沼たちは通り過ぎていく。僕は廊下を見る勇気はなく、ただ地面を見つめてじっとしていれば。
ぬちょ、ぬちょ……と雨も降っていないのに廊下に水音が響き渡る。
その後にナニカが近づいて来るたびに匂う腐敗臭。吐き気が込み上げ口を手で覆う。本当に、僕たちは異空間に閉じ込められてしまったようだった。夢だったら覚めてほしいのに、願っても願っても腐敗臭が強くなるばかりだ。
隣にいる慧護はずっと窓に張り付いてナニカの正体を確認しようとしている。やめようよ、見るの危ないよ。言葉には出来ず、彼の制服の裾を摘んで引っ張った。瞬間、慧護の体は崩れ落ち壁にへたり込む。
冷や汗が尋常じゃない。
教室に影が差す。ナニカが真横を通り過ぎている。ぐちょ、ぐにゅ……と響き渡る音は進むたびに何かが押し潰されるような、破裂する音がして気持ち悪い。
先程まで頼り甲斐のあった慧護がかなり動揺している。その正体が気になり意を決して覗き込もうとすれば頭を抱え込まれ胸に抱き寄せられる。
「見るな」
胸元で感じる慧護の鼓動。ドドッ、ドドッ、と高速で心臓は脈立っていた。
ナニカ、良くないモノを見てしまったらしい。
「見ない方がいい」
耳元でそっと囁かれる。
どうすればいいのかわからずじっとしていると覗き込もうとした僕を引き止めた手が随分冷たくなっている。
この一瞬で、慧護は一気に怯えてしまったようだった。
その手を温めるように、手を重ねる。
何も見ていない僕の体温はそのままだったから。
息を詰めて、ナニカが通り過ぎるのを待つ。
こんな状況だというのに。ナニカの気配が薄れていった頃、僕の手を握り返してくれたことが嬉しかった。
僕の存在を確認してくれたようで。
「……何が廊下にいたの?」
静かに尋ねると、顔色の悪い慧護は素直に答えてくれる。
「この世のモノではない、ナニカだった」
見事に固まる僕の腕を掴んで真横にある教室に慧護は入り込み、そっと窓から様子を見る。
バタバタと廊下からこちら側に走ってくる気配。息を切らして後ろを振り返り「何なんだよアレは!」と叫んでいるのは田沼だった。
「外には出られないし、赤黒くて気持ち悪いのは何なんだよ! 他のグループもたくさんいてすれ違うはずなのに全然姿見ねえし……!」
「や、やっぱりさっきのグループはアレに呑み込まれたんじゃ……っ」
「馬鹿言うなよ! 洒落にならねえって! ただの肝試しで本物の化け物が出るなんて聞いてねえよ!」
僕たちが隠れている教室を田沼たちは通り過ぎていく。僕は廊下を見る勇気はなく、ただ地面を見つめてじっとしていれば。
ぬちょ、ぬちょ……と雨も降っていないのに廊下に水音が響き渡る。
その後にナニカが近づいて来るたびに匂う腐敗臭。吐き気が込み上げ口を手で覆う。本当に、僕たちは異空間に閉じ込められてしまったようだった。夢だったら覚めてほしいのに、願っても願っても腐敗臭が強くなるばかりだ。
隣にいる慧護はずっと窓に張り付いてナニカの正体を確認しようとしている。やめようよ、見るの危ないよ。言葉には出来ず、彼の制服の裾を摘んで引っ張った。瞬間、慧護の体は崩れ落ち壁にへたり込む。
冷や汗が尋常じゃない。
教室に影が差す。ナニカが真横を通り過ぎている。ぐちょ、ぐにゅ……と響き渡る音は進むたびに何かが押し潰されるような、破裂する音がして気持ち悪い。
先程まで頼り甲斐のあった慧護がかなり動揺している。その正体が気になり意を決して覗き込もうとすれば頭を抱え込まれ胸に抱き寄せられる。
「見るな」
胸元で感じる慧護の鼓動。ドドッ、ドドッ、と高速で心臓は脈立っていた。
ナニカ、良くないモノを見てしまったらしい。
「見ない方がいい」
耳元でそっと囁かれる。
どうすればいいのかわからずじっとしていると覗き込もうとした僕を引き止めた手が随分冷たくなっている。
この一瞬で、慧護は一気に怯えてしまったようだった。
その手を温めるように、手を重ねる。
何も見ていない僕の体温はそのままだったから。
息を詰めて、ナニカが通り過ぎるのを待つ。
こんな状況だというのに。ナニカの気配が薄れていった頃、僕の手を握り返してくれたことが嬉しかった。
僕の存在を確認してくれたようで。
「……何が廊下にいたの?」
静かに尋ねると、顔色の悪い慧護は素直に答えてくれる。
「この世のモノではない、ナニカだった」
