私に反抗的な使用人たちなのに、屋敷の庭は綺麗に手入れされていて、私のお気に入りの場所になっている。
王妃になってから大量の報告書に目を通さねばならなくなった。
普通はこんなにも王妃が報告書を確認するなんてことはない。
カイルに聞いたりしてわかってきたのは、ルシアン様の職務の怠慢だった。
ルシアン様が番であるリリィ様を見つけられたのは、3年前。
市井を視察中、馬車の前に飛び出して来たリリィ様を見て、”自身の番の匂い”を感じたことがきっかけだという。
それからすぐにルシアン様はリリィ様を王宮に囲い、溺愛し、傍に置いた。
ほとんどの時間彼女を自身から離そうとせず、やがて有力貴族からの報告書以外は目を通さなくなり、国民からの嘆願書などの声は二の次になっていったという。
それら漏れたものの声を聴くのが、今の私の仕事となったのだ。
「はぁー……本当、この国、大丈夫なのかしら?」
思わず漏れた言葉に、すぐ斜め後ろをぴったりとついてあるいていたカイルが足を止めた。
「カイル?」
どうしたのかしら?
無表情が輪をかけて無表情になっているけれど……。
首をかしげる私に、カイルはしばらく考えた後、眉をひそめて私を見つめた。
「いつかこの国は、国として成り立たなくなる」
「え……?」
飛び出した言葉は、何とも、後ろ向きな言葉。
仮にも王妃に発言するような言葉ではない、国への……不敬ともとれるような……。
「国王は番に夢中で、必要最低限の仕事をこなすことしかない。だが大切なのは国民の声で、それらがないがしろにされ続けた時、不満は溜まり続け、いつか爆発する。今は番を見つけた国王として尊望と憧れのまなざしで見られていたも、そのいつかは必ず来る。その時は近い──はずだった。……あなたが、ここに来るまでは……」
そう言って、綺麗な紫紺の瞳が私を映した。



