「ぐぉぉおおおおおおお!!」
暴走した獣人たちの咆哮が、空気を震わせる。
理性を失ったその瞳は、かつて誰かを想い、笑っていたものと同じだなんて信じられないほど、荒れ狂っていた。
「……大丈夫。なんとかなる」
自分に言い聞かせるように、小さく呟く。
この国はこのままじゃいけない。
いずれ他国との関係は悪化の一途をたどり、獣人はただの獣としか見られなくなる。
変わるべきなのよ、今。
もう誰も、犠牲にならないように。
私は胸の前で両手を汲むと、ゆっくりと息を吸った。
ゆっくりと、内側に沈めていた“それ”に、手を伸ばす。
触れすぎてはいけないと教えられてきた、マルボロ王家の力。
けれど今は、それを解き放つしかない。
「お願い。光よ──」
次の瞬間、堰を切ったように私の内部から魔力が溢れ出した。
淡い光が、私の足元から静かに広がっていく。
温かくて、どこか懐かしい光。
と同時に、暴走した獣人がこちらへと突進してくるのが視界の端に映った。
「クリスティ様!!」
鋭い声と同時に、視界の前に影が滑り込む。
絶対に来てくれると思ってた。
それくらい、私は彼のことを信頼していたようだ。「──カイル」
迷いなく剣を振るうけれど、突進してきた獣人を傷つけないように、ただ軌道を逸らし、地面へと薙ぎ払う。
さすが、よくわかってるわ。
「ご安心を。お守りします」
そう言って私の隣に立つカイルに、安心したように頬を緩めてから、私はもう一度、魔力を手繰り寄せた。
光がさらに広がっていく。
その光は城を越え、街を越え、王国全体を包み込んだ。
ウルバリスの大地を、静かに包み込んでいく。
まるで光がこの地を洗い流してくれているみたい。
あちこちで上がっていた怒号が、次第に弱まっていく。
荒れていた気配がするするとほどけていくのが分かる。
やがてしん、と静まり返り、それと同時に光が役目を終えたかのようにゆっくりと収束していった。
光がおさまり、目の前に広がっていたのは、先ほどまでの混乱が嘘のような光景だった。
傷を受け倒れていた人々の怪我は消え、何が起きたのかわからない様子で皆自身の両手を見つめる。
荒れていた獣人たちも落ち着きをとりもどし、戸惑いながら周囲を見回している。
「……よかった……」
「クリスティ様!!」
膝から力が抜けそうになる私の肩を抱き留めたのは、私を傍で守ってくれていたカイルの逞しい腕だった。
「……お疲れさまでした、クリスティ様」
その声は、どこか誇らしげで穏やかだ。
私はそれに小さく微笑む。
「あなたがいてくれたからよ、カイル。……ありがとう」
静まり返った獣人の国に、やわらかな風が吹き抜けた。
暴走した獣人たちの咆哮が、空気を震わせる。
理性を失ったその瞳は、かつて誰かを想い、笑っていたものと同じだなんて信じられないほど、荒れ狂っていた。
「……大丈夫。なんとかなる」
自分に言い聞かせるように、小さく呟く。
この国はこのままじゃいけない。
いずれ他国との関係は悪化の一途をたどり、獣人はただの獣としか見られなくなる。
変わるべきなのよ、今。
もう誰も、犠牲にならないように。
私は胸の前で両手を汲むと、ゆっくりと息を吸った。
ゆっくりと、内側に沈めていた“それ”に、手を伸ばす。
触れすぎてはいけないと教えられてきた、マルボロ王家の力。
けれど今は、それを解き放つしかない。
「お願い。光よ──」
次の瞬間、堰を切ったように私の内部から魔力が溢れ出した。
淡い光が、私の足元から静かに広がっていく。
温かくて、どこか懐かしい光。
と同時に、暴走した獣人がこちらへと突進してくるのが視界の端に映った。
「クリスティ様!!」
鋭い声と同時に、視界の前に影が滑り込む。
絶対に来てくれると思ってた。
それくらい、私は彼のことを信頼していたようだ。「──カイル」
迷いなく剣を振るうけれど、突進してきた獣人を傷つけないように、ただ軌道を逸らし、地面へと薙ぎ払う。
さすが、よくわかってるわ。
「ご安心を。お守りします」
そう言って私の隣に立つカイルに、安心したように頬を緩めてから、私はもう一度、魔力を手繰り寄せた。
光がさらに広がっていく。
その光は城を越え、街を越え、王国全体を包み込んだ。
ウルバリスの大地を、静かに包み込んでいく。
まるで光がこの地を洗い流してくれているみたい。
あちこちで上がっていた怒号が、次第に弱まっていく。
荒れていた気配がするするとほどけていくのが分かる。
やがてしん、と静まり返り、それと同時に光が役目を終えたかのようにゆっくりと収束していった。
光がおさまり、目の前に広がっていたのは、先ほどまでの混乱が嘘のような光景だった。
傷を受け倒れていた人々の怪我は消え、何が起きたのかわからない様子で皆自身の両手を見つめる。
荒れていた獣人たちも落ち着きをとりもどし、戸惑いながら周囲を見回している。
「……よかった……」
「クリスティ様!!」
膝から力が抜けそうになる私の肩を抱き留めたのは、私を傍で守ってくれていたカイルの逞しい腕だった。
「……お疲れさまでした、クリスティ様」
その声は、どこか誇らしげで穏やかだ。
私はそれに小さく微笑む。
「あなたがいてくれたからよ、カイル。……ありがとう」
静まり返った獣人の国に、やわらかな風が吹き抜けた。



