お詫びチートではじめる異世界農園暮らし~【製作】&【開墾】スキルで好きに開拓したら、精霊姫やモンスターが住まう最強の土地ができました~

 今日は朝からゴレムと一緒に、農園の敷地をぐるっと見回ることにした。

 普段の見回りはハクたちに任せているけど、週に一度くらいは自分の目で異常がないか確かめるようにしている。

 ハクたちは主に「畑を荒らしに来るモンスター」の警戒を担当しているから、僕はそれ以外の部分を重点的に確認することにしている。

 例えば、敷地内に迷いこんでしまった動物やモンスターがいないかとか。


「う~ん……柵とか作ったほうがいいのかな?」


 住居区画の裏側に広がる森を眺めながら、首を捻ってしまった。

 今のところ、農場の各区画には柵を作っているけど、森との境目には立てていない。

 できれば森との境界をはっきりさせたいけど、農地は広大だからなぁ。

 畑を拡張しまくったせいで、農園を柵で覆うとなると相当な作業になる。


「とりあえず、住居区画だけでも柵で囲っておくか」


 住民の皆の安全が最優先だからね。

 てなわけで、製作レシピから【木の柵】を作っていく。

 素材は【硬い木】のみだけど、大量の【木の柵】が必要だから、カバンに入れている【硬い木】を全部【木の柵】にしていこう。

 50個くらい作れそうだけど……足りないかな?

 ゴレムに森から採ってきてもらうか。

 一緒に見回りをしてくれていたゴレム15号と16号に声をかける。


「ごめん。ふたりは森に行って【硬い木】を採ってきてくれない?」
「ごむごむ~!(うん! わかった!)」


 2匹のゴレムはビシッと敬礼をすると、テケテケッと森の中に走っていった。

 彼らが戻ってくる前に、製作した【木の柵】を地面に打ち付けていく。

 パズルみたいに組み立てられる小屋と違って、柵は人力で地面に立てる必要があるから、ちょっと大変だ。


「お手伝いしましょうか?」


 ふと、背後から声をかけられた。

 豚のような顔に筋骨隆々とした人間の体を持つ、オークさんたちだ。


「力仕事なら、私たちにお任せください」
「おお、助かります」


 【神樹カバン】の中に入れていた【鉄のハンマー】を彼らにも渡し、手分けして柵を立てていく。

 力仕事は任せろと言うだけあって、モンスターのオークさんはすごかった。

 僕が4、5回ハンマーを振ってようやく固定できるのに対し、オークさんは一発で見事に地面へ打ち込んでいく。

 いやはや、頼れるモンスターが仲間になったもんだ。


「柵は農園全体に?」


 オークさんが尋ねてきた。僕は小さく首を横に振る。


「いえ。まずは住居区画だけ柵で仕切ろうかと。本当は農園全体に柵を作りたいんですけどね」
「それでも十分ありがたいですよ。ステンの森には厄介なモンスターも多いですし、これで皆も安心して暮らせると思います」


 僕が思っていたとおり、森には厄介なモンスターが多いらしい。

 柵を作って正解だな。

 オークさんが続けて尋ねてくる。


「ちなみに、農園の見回りはいつもお屋形様が?」
「僕が見回りしているのは週に1回くらいです。いつもはハク一族にお願いしています」
「なるほど。でしたら、私たちもハク一族と一緒に見回りをしますよ」
「あ、それは助かりますね。サラさんにお願いして武具を用意しましょう」


 武器と防具があれば、オークさんたちも安心だろうし。

 しかし、ハク一族に、完全武装した15人のオークさんか。

 農園警備小隊の結成だな。

 そんなオークさんたちに手伝ってもらったおかげで、30分ほどで住居区画の柵が完成した。

 他に柵を立てたほうが良い場所は、水区画だよね。

 だってほら、ハクが迷い込んできたのも水区画だったし。


「見回りついでに、サラさんに武具のお願いをしに行くか」


 サラさんの鍛冶場があるのは、水区画の隣だからね。

 オークさんたちと別れ、畑仕事をしているゴレムやモンスターたちを眺めながら、メインストリートをひとり歩いていく。

 すると、狼小屋の前に人だかり……じゃなくて、狼だかりができているのを発見した。

 ひときわ大きな白い狼と、半分くらいのサイズの狼たち。

 ハクと彼の一族たちだ。

 何やら会議を開いている様子。

 気になったのでちょっと声をかけてみることに。


「どうしたの?」
「……おお、カズマか」


 そう返してきたハクの尻尾は、元気を失ったようにしゅんと垂れていた。 


「実はヒサシが体調を崩したようなのだ」
「え? ヒサシが? 風邪とか?」
「いや、風邪ではない……と思う」


 ハクに詳しく状況を聞いた。

 なんでも今朝からヒサシの元気がなく、朝ご飯も食べなかったという。

 それで心配になって、森の薬草でも採ってこようかと話し合っていたらしい。

 それは一大事じゃないか。

 ハクの一族で一番食いしん坊なヒサシが、朝ご飯を食べなかったなんて!


「ちょっと僕が診てみようか?」
「む? 本当か?」
「流石に医学に覚えはないから簡単な検診くらいしかできないけど」
「それでもかまわん」


 ハクたちに羨望の眼差しを向けられながら、狼小屋へと入る。

 すると、小屋の端っこでヒサシが横になっていた。


「……あれっ? お屋形様?」


 ヒサシは僕の姿に気づくと、ゆっくりと顔をあげた。

 確かにいつものヒサシと比べると、元気がない。


「こんにちは。体調を崩したって?」
「う、うん……そうなんだ。なんだか体が重くて」
「なるほど……」


 とりあえず体温を測ってみようか。

 もふもふの毛の中に手を突っ込んでみたけど、いまいちよくわからない。

 体温計があるといいんだけど。


「ハク、ちょっとごめんね」
「……ぬ?」


 心配そうにヒサシを見ていたハクの毛の中に、左手を突っ込む。

 ハクの体温と比べれば熱があるかわかるだろう。

 しばらく比べてみたけれど、ヒサシの体温はハクとそう変わらなかった。


「ん~、熱は無さそうだね」


 となると、ケガとか?

 ヒサシは毎日、農園の見回りしてくれている。

 モンスターを追い払ったときに怪我を負ってしまった可能性もある。


「ごめんね、ヒサシ。ちょっと失礼」


 体の至る所に手を突っ込み、容態を確認してみる。

 お腹に背中、後ろ足に前足。

 脇の下などなど……。


「あひゃっ!?」


 ヒサシが素っ頓狂な声をあげた。


「なな、なになに!? くすぐったいけど!?」
「ご、ごめん。怪我をしてないかなって……」
「怪我なんてしてな──あひゃひゃ! くすぐったいい!」


 嬉しそうに尻尾をブンブンと振り回し、ついにはごろんとヘソ天になってしまうヒサシ。

 うぐっ! なんだこの子……可愛いっ!

 モフりたい欲求を我慢しつつ、検診を続ける。

 ジタバタするヒサシを抑えつつ、体の隅々までチェックしてみたけど怪我を負っている様子はなかった。

 ふむふむ。怪我でも無かったか。

 それじゃあ──一体何なんだ?


「ヒサシ、もう少し体調を詳しく教えてくれない?」
「詳しく? ええと……体がだる重くて、お腹がちょっと痛いかも」
「お腹? もしかして消化不良かな?」
「変なものは食べてないよ」
「じゃあ、寄生虫とか?」
「む、むむ、虫!?」


 ヒサシの尻尾がしなっと垂れ落ちた。

 もしかして、虫が嫌いなのかな?

 魔法が使えるのに、子どもみたいだな。

 だけど、どうしよう。

 重い病気ってわけじゃなさそうだけど、このまま放っておくのも可哀想だし。

 胃腸薬があるといいんだけど、生憎、農園にはそんな物はない。


「まいったな。ここにきて農園に無いものがまた判明したよ」
「無いもの?」


 ハクが首をかしげた。


「薬だよ。今まで誰も病気になったことがなかったからね」


 医者もいなければ薬もない。

 近くの町(あるかどうかわからないけど)からお医者さんを連れてくるわけにもいかないし、何か対策を講じないとな。


「ちなみに、ハクはこういうときっていつもどうしてたの?」
「体調を崩したときか? 薬草を食べて大人しく休むだけだぞ。発熱があった場合は水場で身体を冷やすこともあったが──」
「それは必要なさそうだね」


 まぁ、嫌いな虫がお腹の中にいるかも、という話で熱を出しそうだけど。

 しかし、薬草か。

 どんな薬草だと消化を助けてくれるんだろう。

 アルレーネ様なら、何か知ってるかな?


「ごめんヒサシ、ちょっと待ってて。お腹に良い薬草の種類をアルレーネ様に聞いてくるから」
「あ、ありがとう! ついでにお腹の虫をやっつける薬草も聞いてきて!」


 くうん……と悲しそうな声を出すヒサシ。

 ああ、こりゃあ相当虫が苦手なんだな……。

 というわけで、一旦狼小屋を後にして、アルレーネ様の元へと向かう。

 彼女がいるのは裏庭だろう。

 最近、裏庭のハンモックがアルレーネ様の特等席になってるからね。


「……やっぱり」


 裏庭に行くと、案の定ハンモックに腰掛けているアルレーネ様の姿があった。

 ふんふんと鼻歌を歌いながら、花飾りを作っていた。


「すみません、アルレーネ様?」
「……ひゃっ!?」


 そっと声をかけたつもりだったんだけど、アルレーネ様はびっくりしてハンモックから滑り落ちてしまった。


「あ、ごめんなさい」
「カカ、カズマ様!? い、いつからそこに!?」
「え? 今来たところですけど?」
「い、今?」


 きょとんとするアルレーネ様だったけど、すぐにホッとした顔をする。


「そ、そうなんですね……もう10個近く花飾り造りに失敗しているのがバレてしまったのかと……」
「え? なんですか?」
「な、なんでもありません~!」


 よくわからないけど、邪魔をしてしまったのだろうか。

 悪いことをした。


「そ、それで私に何か御用が?」
「……あ、そうなんです」


 アルレーネ様に、かいつまんで事情を説明する。


「お腹に良い薬草、ですか」
「はい。ヒサシがお腹を壊してしまったみたいなんです。それで、森で薬草を採取してこようかと」
「なるほど。そういうことですか。う~ん……」


 アルレーネ様が小さく首をひねる。


「ヨモギを飲ませてみてはどうでしょう」
「……ヨモギ?」
「はい。キク科ヨモギ属の多年草のハーブです。単体でも効果はありますが、ヨモギで錬金したポーションを飲ませれば、すぐに治ると思いますよ」


 なんでもその「ヨモギのポーション」は、疲労回復効果と毒素中和、胃腸を整える効果もある精霊の煎じ薬だという。


「それはいいですね」
「非常時のために、作り置きしておくと良いかもしれません」


 確かにアルレーネ様がおっしゃるとおりだ。

 町から薬を調達するにしても時間がかかるし、沢山作って保管しておけばいざというときに役に立つ。

 それに、精霊の煎じ薬の錬金なんて、ちょっと楽しそうだし。


「ちなみに、作り方とかご存知ですか?」
「もちろんですとも」


 尋ねたら、アルレーネ様は自信満々に教えてくれた。

 必要な素材から、錬金方法まで。

 どうやら、森に住む動物たちのために何度か作ったことがあるのだとか。

 実にお優しい精霊のお姫様だ。

 しかし、精霊姫様のお墨付きなんて効果が高そう。

 よし、そのヨモギのポーション──作ってみようか!