お詫びチートではじめる異世界農園暮らし~【製作】&【開墾】スキルで好きに開拓したら、精霊姫やモンスターが住まう最強の土地ができました~

 今日は新たな「食」に関する施設を造ることにした。

 農園で採れる食材はどれも美味しいけれど、三ヶ月も経つと味に変化が欲しくなってきたのだ。

 なんて贅沢すぎる悩みだろう……。

 体調不良に悩まされることがなく、のんびりした暮らしができてるだけで重畳なのに、人間というものは欲張りな生き物なのである。

 というわけで、朝早くから製作スキルで作った【石のスコップ】を片手に、ログハウスから少し離れた場所にやって来た。

 ログハウスの方を振り返ると、収穫物を運ぶときに使っている道が見えた。

 僕の計画では、あれを農園の「大通り」にする予定。

 そこから枝のように小さな道を作って、いろいろな施設を建てようと考えている。

 その第一弾が今回の施設ってわけ。


「さぁて、始めますかね」


 早速【石のスコップ】を開墾スキル【強化】で強化する。

 そして地面にスコップの刃先を突き刺そうとしたとき、背後からとふとふと動物の足音が近づいてきた。


「こんにちは、お屋形様」


 振り向くと、白い狼が。

 ハクの弟、ヒサシだ。

 ヒサシは体の大きさがハクの半分くらいだし、顔の入れ墨の模様が泣きぼくろみたいに入っているから一発でわかるんだよね。

 ちなみに、ハクとヒサシを除いた他の四匹の区別はあまりついていない。


「何なに? そこに穴を掘るの?」


 ヒサシが尻尾をブンブン振りながら僕の傍にやって来た。


「うん。ここに『燻製所』を作ろうと思ってさ」


 作ろうと考えていた「食の施設」というのがそれだ。

 釣り堀で釣った魚や収穫した野菜を燻製にしたら美味しそうじゃない?

 本来なら燻製器みたいなものを使いたいんだけど、お手製の燻製所の作り方を前に一度テレビで見たことがあるんだよね。


「僕も手伝おうか?」
「ありがとうヒサシ。だけどこっちは大丈夫だよ。でも、後でもうひとつ作りたいものがあるから、そっちを手伝ってほしいかな」
「わかった! それじゃあ、穴を掘るの見ててもいい?」
「もちろん」


 ヒサシは「やったぁ」と喜ぶと、ちょこんとその場にお座りをした。

 キラキラとした目から、一体何を作るんだろうという期待が滲み出ている。

 純粋ですごくいい子だなぁ。

 そんな可愛いヒサシの頭をナデナデしてから、作業を再開する。

 まずは地面に適当な深さの穴を掘る。

 開墾スキル【強化】のおかげで、まるでスポンジにスコップを刺したように全く抵抗がなかった。

 いやぁ、この【強化】スキルって本当に便利だな。

 とはいえ、元が【石のスコップ】だから、すぐ壊れちゃうのが難点だけど。

 早く頑丈な【鉄のスコップ】を作りたい。

 しばらくガツガツと地面を掘って、三十センチくらいの深さの穴ができた。

 幅も十分あって、魚を五匹くらい置ける大きさだ。

 お次はその穴の隣に、もうひとつ同じサイズの穴を掘る。


「わ、そっちにも掘るの!?」


 僕にやらせてと言いたげに、ヒサシがすっくと立ち上がった。

 だけど、最初に断られたことを思い出したのか、スッとお座りポーズに戻る。

 言いつけを守れて偉い。

 二つ目の穴が完成したところで、両方の穴を小さいトンネルでつなげる。

 この作業は【石のスコップ】ではできないので、新たに【石のハンドスコップ】を作って進める。

 崩れないように慎重に穴を掘り進めていると、やがてボコッとふたつの穴がつながった。


「あっ、すごい! つながったよ!」


 嬉しそうに尻尾をぶんぶんと振り回すヒサシ。

 穴に顔を突っ込み、トンネルから隣の穴を覗き込む。


「すごいすごい。お屋形様、器用なんだね!」
「あはは、ありがとう。でも、あんまり鼻でぐりぐりしすぎると穴が壊れちゃうからほどほどにね?」
「わふっ」


 顔を上げたヒサシの鼻が泥まみれになっていたので軽く払ってあげる。

 燻製所の基本構造は、これで完成だ。

 最初に掘った穴に串刺しの魚を設置し、もう片方の穴に枯葉や小枝を入れて火を付ける。

 もくもくと煙が出てきたところで、木の板で蓋をした。

 するとトンネルを通じて、魚を設置した穴に煙が流れ込んできた。


「わ、魚が置いてある穴に煙が流れてきたよ!? 大丈夫なの!?」
「問題ないよ。この煙で魚を燻すんだ」
「え? 燻す? 燻すとどうなるの?」
「食材の味が変わって、さらに美味しくなる」
「へぇ! そうなんだ! お屋形様、器用だけじゃなくて頭も良い!」
「あはは、ありがとう」


 べた褒めされてちょっと照れてしまった。

 トンネルを通じて煙が出始めたことを確認して、魚を置いてある穴にも蓋をする。

 これで燻製場の完成だ。

 この煙に燻されることで香りや風味が付与されるだけじゃなく、食材の水分が抜けて細菌が繁殖しにくくなる。

 つまり、保存性も高くなるって寸法だ。

 鼻をスンスンと鳴らしながら、ヒサシが尋ねてくる。


「燻製はどれくらいで完成するの?」
「ん~、一、二時間くらいかな?」
「結構かかるんだね」


 燻製が完成するのをこの場でのんびり待つというのもいいけれど、もう一つ造りたいものがあるんだよね。

 農園でのQOLを高めるためには絶対必要な施設なのだ。


「さっき言ったヒサシに手伝ってほしいことがあるんだけど、いいかな?」
「もちろん良いよ! 何をするの? また穴を掘る?」
「いやいや、燻製所はひとつで十分だよ。造りたいのは──」


 僕はログハウスの奥を見ながら続けた。


「釣り堀の近くに露天風呂を造りたいんだ」