「エリちゃんもここで暮らすの!?」
「だって家にいるとさぁ、両親が早く結婚しろってうるさいんだよ。こっちの世界の人ってぇ、十代で結婚もわりと普通だからぁ」
夜、礼拝堂の方で食事をしていると、そんな会話が聞こえてきた。
そうなのか? とアルトに聞くと、実際そうらしい。
「特にさ、町で暮らす一般家庭だとそうなんだよ。子供は二人。ひとりでも三人でもなく二人ってね」
「え、なんで?」
「人口を減らさないため。そして増やさないためだ。減ってしまえば、人類はそのまま滅んでしまうけど、増えると食料不足でやっぱり自滅する。そういう世界なんだよ、ここは」
あぁ、なるほど。
「けどまさか、古代魔法王朝の防衛町の魔同装置が生きてたとはなぁ」
「修繕して動くようにしたんだ」
「ふーん。誰が?」
「え、俺が」
アルトが俺のほほを引っ張る。
「痛いって。なんで俺のほほを引っ張るんだ」
「いや、冗談でも言ってるのかなと思って」
「冗談じゃないって。俺さ、万能クラフトと解析眼を取ってるんだ。あぁ、あと身体能力強化も」
「モノづくりのスキルか?」
「そう。いろいろ便利だぞ。あれとこそれとか、あとこれも全部俺がスキルで作ったんだ」
ハンモックに毛布、それから椅子を指さす。
今日は家を建てる予定だったけど、二人が来たことで予定はキャンセル。
でも明日にはお試し物件を建てて、上手くいくかやってみないとな。
そんな話をアルトとした。
それで――。
「さっきの話だけどさ、どう?」
「ん? 獣人族の村に行くって話? うん、別にいいけど」
「行ってくれるか!? よかったぁ」
「鈴木と鉢合わせしたら、絶対ぶっ殺す。恨むなよ?」
何を恨めっていうんだ。
でも、アルトひとりに鈴木殺しの業を背負わせたくない。できれば鉢合わせしないことを祈ろう。
その日から、バサラたちの故郷へと向かう準備が始まった。
徒歩での移動が長いから、魔素対策をする必要がある。
「ニーナ、大丈夫か?」
『はいです。いっぱい、人がお祈りしてくれるから、ニーナ元気ですの』
確かに、獣人族が来てからニーナの髪艶がよくなった気がする。
「待って待って待って。その子土地神様? うわぁ、普通にいるんだぁ」
『ふあっ』
「普通って、普通はいないのか?」
「いないっていうか、あまり人前に姿を見せたりしないぜ。な、レイア」
「うん。普段は土地神様の像の中だから、姿を見るのって一年のうち数回ぐらいなの」
エリサやアルトが暮らす聖国には土地神様がいない。だから余計に見ることがないそうだ。
二人にもニーナのことは土地神様ではなく――。
「じゃあ、よろしく、ニーナ」
「よろしくお願いします、ニーナちゃん」
『ほわぁ。よ、よろしくなの』
――と呼ぶよう伝えた。
「ほ、本当に里へ行ってもいいのか?」
「ん。再会できるなら、そうしたいだろ? ただ、覚悟はしてほしい」
「わかっている……。既にどこかへ連れていかれている可能性も高い。殺された人もいるだろうし」
レイアの話だと、土地神様を少しでも長生きさせるために、襲った里の人は何割かは残すらしい。
その中に彼らの家族がいるのかわからない。
たぶんだけど、若い人は奴隷商人がどこかへ連れて行った可能性は高いと思う。残っているのはお年寄りだろう。
奴隷として働かせるのは、若い方がいいからな。
ここにいる獣人たちがそうであるように。
「私も一緒に行ければよかったんだけど。ごめんなさい」
「そんな。レイアはここで、子供たちをお願いする」
「えぇ、任せて」
レイアは夜以外はか弱い猫だしなぁ。
「アッ」
「ん? なんだユタ。どうした?」
「オイラ」
ん?
「オイライッテヤッテモイイゾコンチクショウメ。ドヤ?」
どやって、どういうこと?
「ユタも一緒に行ってくれるのね。でも大丈夫? すごく遠いところよ?」
「トーイ……カッチャ」
「ユラ、できるなら君もアルトたちに協力してやってくれないか?」
「構わないわ。一緒に行って、彼らを守ってあげればいいのね」
「てことだから、ユタ。お前も母ちゃんと一緒に行ってくれ」
ユラも一緒だとわかると、ユタはぱぁっと表情を明るくした。
一度は親離れのために別れたけど、やっぱり寂しくて仕方なかったんだろう。
だってまだ、生後数か月だもんな。親離れするには早いって。
「わしらもいってやるぜ」
「アッパーおじさん。いいのか?」
「雪ががっつり積もるのは一ヵ月後ぐれぇだ。それまではちびちび降ってはちっとばかし積もる程度。それまでに戻ってこれりゃあ、いいぜ」
「こっちにはルナとパーラを残していくわ。さすがに全員ってなると、レイアの負担が大きいでしょ?」
「助かるよ。みんな、ありがとう」
「万能クラフト――こうして、こう。そして――こうだ!」
翌朝。インベントリ内に溜め込んだ瓦礫を使って、家のクラフトを行った。
お試しなので、形はシンプルに。
手前はリビングダイニングで、奥に部屋。屋根は三角にしてっと――。
「お……ちょっと魔力持っていかれるみたいだ」
「志導くん、大丈夫? やっぱり大きなものだと、魔力の消費が多いのね」
「みたいだ。さて、扉も付けるかな」
さすがに家具は木材で作りたいから、今の作業でクラストしたのは純粋に家だけだ。設置した家には扉も窓ガラスもない。
扉と窓を別にクラフトして、それから設置した家に取り付ける。これも万能クラフトスキルで行えた。
既に設置済みのものにも、万能クラフトスキルで後付けできるのは有難い。
「うへぇ。家を一瞬で建てるって、凄いスキルだな」
「素材があればって前提だけどな。アルト、お前はどうするんだ? エリサはこのままここで暮らすって言ってるけど」
「んー、俺もそうしよっかなぁ。俺さ、三歳の時に親を亡くして家族はいないんだ。だからどこで暮らすのも、俺の自由だし」
「そう、なのか……じゃあさ、そうしろよ。俺もその方がうれしいし」
「え、俺、お前に惚れられても嫌なんだけど」
「お前の家なしな。はい、決定」
「いやぁーっ。嘘です嘘言いました。シド様大好き、マシ惚れる」
「やっぱり家はなしで」
「いやあぁぁぁぁーっ」
「だって家にいるとさぁ、両親が早く結婚しろってうるさいんだよ。こっちの世界の人ってぇ、十代で結婚もわりと普通だからぁ」
夜、礼拝堂の方で食事をしていると、そんな会話が聞こえてきた。
そうなのか? とアルトに聞くと、実際そうらしい。
「特にさ、町で暮らす一般家庭だとそうなんだよ。子供は二人。ひとりでも三人でもなく二人ってね」
「え、なんで?」
「人口を減らさないため。そして増やさないためだ。減ってしまえば、人類はそのまま滅んでしまうけど、増えると食料不足でやっぱり自滅する。そういう世界なんだよ、ここは」
あぁ、なるほど。
「けどまさか、古代魔法王朝の防衛町の魔同装置が生きてたとはなぁ」
「修繕して動くようにしたんだ」
「ふーん。誰が?」
「え、俺が」
アルトが俺のほほを引っ張る。
「痛いって。なんで俺のほほを引っ張るんだ」
「いや、冗談でも言ってるのかなと思って」
「冗談じゃないって。俺さ、万能クラフトと解析眼を取ってるんだ。あぁ、あと身体能力強化も」
「モノづくりのスキルか?」
「そう。いろいろ便利だぞ。あれとこそれとか、あとこれも全部俺がスキルで作ったんだ」
ハンモックに毛布、それから椅子を指さす。
今日は家を建てる予定だったけど、二人が来たことで予定はキャンセル。
でも明日にはお試し物件を建てて、上手くいくかやってみないとな。
そんな話をアルトとした。
それで――。
「さっきの話だけどさ、どう?」
「ん? 獣人族の村に行くって話? うん、別にいいけど」
「行ってくれるか!? よかったぁ」
「鈴木と鉢合わせしたら、絶対ぶっ殺す。恨むなよ?」
何を恨めっていうんだ。
でも、アルトひとりに鈴木殺しの業を背負わせたくない。できれば鉢合わせしないことを祈ろう。
その日から、バサラたちの故郷へと向かう準備が始まった。
徒歩での移動が長いから、魔素対策をする必要がある。
「ニーナ、大丈夫か?」
『はいです。いっぱい、人がお祈りしてくれるから、ニーナ元気ですの』
確かに、獣人族が来てからニーナの髪艶がよくなった気がする。
「待って待って待って。その子土地神様? うわぁ、普通にいるんだぁ」
『ふあっ』
「普通って、普通はいないのか?」
「いないっていうか、あまり人前に姿を見せたりしないぜ。な、レイア」
「うん。普段は土地神様の像の中だから、姿を見るのって一年のうち数回ぐらいなの」
エリサやアルトが暮らす聖国には土地神様がいない。だから余計に見ることがないそうだ。
二人にもニーナのことは土地神様ではなく――。
「じゃあ、よろしく、ニーナ」
「よろしくお願いします、ニーナちゃん」
『ほわぁ。よ、よろしくなの』
――と呼ぶよう伝えた。
「ほ、本当に里へ行ってもいいのか?」
「ん。再会できるなら、そうしたいだろ? ただ、覚悟はしてほしい」
「わかっている……。既にどこかへ連れていかれている可能性も高い。殺された人もいるだろうし」
レイアの話だと、土地神様を少しでも長生きさせるために、襲った里の人は何割かは残すらしい。
その中に彼らの家族がいるのかわからない。
たぶんだけど、若い人は奴隷商人がどこかへ連れて行った可能性は高いと思う。残っているのはお年寄りだろう。
奴隷として働かせるのは、若い方がいいからな。
ここにいる獣人たちがそうであるように。
「私も一緒に行ければよかったんだけど。ごめんなさい」
「そんな。レイアはここで、子供たちをお願いする」
「えぇ、任せて」
レイアは夜以外はか弱い猫だしなぁ。
「アッ」
「ん? なんだユタ。どうした?」
「オイラ」
ん?
「オイライッテヤッテモイイゾコンチクショウメ。ドヤ?」
どやって、どういうこと?
「ユタも一緒に行ってくれるのね。でも大丈夫? すごく遠いところよ?」
「トーイ……カッチャ」
「ユラ、できるなら君もアルトたちに協力してやってくれないか?」
「構わないわ。一緒に行って、彼らを守ってあげればいいのね」
「てことだから、ユタ。お前も母ちゃんと一緒に行ってくれ」
ユラも一緒だとわかると、ユタはぱぁっと表情を明るくした。
一度は親離れのために別れたけど、やっぱり寂しくて仕方なかったんだろう。
だってまだ、生後数か月だもんな。親離れするには早いって。
「わしらもいってやるぜ」
「アッパーおじさん。いいのか?」
「雪ががっつり積もるのは一ヵ月後ぐれぇだ。それまではちびちび降ってはちっとばかし積もる程度。それまでに戻ってこれりゃあ、いいぜ」
「こっちにはルナとパーラを残していくわ。さすがに全員ってなると、レイアの負担が大きいでしょ?」
「助かるよ。みんな、ありがとう」
「万能クラフト――こうして、こう。そして――こうだ!」
翌朝。インベントリ内に溜め込んだ瓦礫を使って、家のクラフトを行った。
お試しなので、形はシンプルに。
手前はリビングダイニングで、奥に部屋。屋根は三角にしてっと――。
「お……ちょっと魔力持っていかれるみたいだ」
「志導くん、大丈夫? やっぱり大きなものだと、魔力の消費が多いのね」
「みたいだ。さて、扉も付けるかな」
さすがに家具は木材で作りたいから、今の作業でクラストしたのは純粋に家だけだ。設置した家には扉も窓ガラスもない。
扉と窓を別にクラフトして、それから設置した家に取り付ける。これも万能クラフトスキルで行えた。
既に設置済みのものにも、万能クラフトスキルで後付けできるのは有難い。
「うへぇ。家を一瞬で建てるって、凄いスキルだな」
「素材があればって前提だけどな。アルト、お前はどうするんだ? エリサはこのままここで暮らすって言ってるけど」
「んー、俺もそうしよっかなぁ。俺さ、三歳の時に親を亡くして家族はいないんだ。だからどこで暮らすのも、俺の自由だし」
「そう、なのか……じゃあさ、そうしろよ。俺もその方がうれしいし」
「え、俺、お前に惚れられても嫌なんだけど」
「お前の家なしな。はい、決定」
「いやぁーっ。嘘です嘘言いました。シド様大好き、マシ惚れる」
「やっぱり家はなしで」
「いやあぁぁぁぁーっ」



