転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~

 こちらはちょっと長めの木製バット。相手は剣を持っている奴がほとんど。
 どうなるかと思ったが、案外なんとかなっている。
 やっぱり、リーチが長いって点は有利なようだ。あと、振り回すだけでいいっていうのも利点だろう。
 もちろん、相手に弾かれるリスクを考えて振り回さなきゃならないが。

 力任せに振り回すな。バットに振り回されるな。大振りして躱された後、反撃されたらひとたまりもないぞ。
 そう言い聞かせ、なんとか立ち回っている。
 それが出来ているのも、足元にいるユタのおかげだろう。
 ひとりを秒で倒したこともあり、奴らはおよび腰になっている。それもあって一度に突っ込んでくることがなく、押すな押すなな状態で律儀にひとりずつ来てくれた。
 更にユタはタタッと駆け出しては、悪党どのも足に爪を立てていく。
 足を引きずりながら俺を襲おうとやって来るが、さすがになぁ。

「ぅらあっ!」
「ぐああぁぁっ」

 やや上気味にバットを振りかぶって、ひとりをぶっ飛ばす。横から来た奴は痛烈なピッチャー返しをイメージしてバットを見舞った。
 息が切れない、というのも強みだな。こんだけ激しく動いても、疲れをまったく感じない。

「ああぁ、クソが! おい、奴らを出せっ」

 鈴木が苛立ってるな。あいつ、短気だからなぁ。
 ん? 増援?
 って、動物のような耳と尻尾――獣人か!?

「おい、お前らっ。あいつだ。あの男を捕まえろ! 手足の一、二本取れたってかまわなえぇ。生きたまま捕まえりゃ、ご褒美をやるぞ。そうだな……自由にしてやろう」
「あいつを捕まえれば、自由……」
「自由だ。自由が手に入るんだ」
「お、おい、ちょっと待ってくれ。鈴木の、あいつなんかの言う事は聞く必要ないって」

 ヤバい。獣人たちの目がイってる。

「俺の言うことを聞かなくていい? おいおい、渡錬。この世界のこともよく分かってないくせに、適当なこと言うなよ。いいか、言うことを聞かなかったら、こうなるんだよ! バンッ」
「バン?」

 何を言っているんだ、こいつ。

「ぐっ。うぐぐっ」
「や、止めて、くれ……」
「捕まえる、つか、捕まえるからっ、止めてくれっ」

 ど、どうなているんだ。急に獣人族が全員、苦しみ始めた。
 な、なんだこれ? なんで急に……まさか、何かの呪い?

「ストォーップ。な、どうだ渡錬。合図一つでこいつらに苦痛を与えられるんだぜ」

 鈴木、やっぱりお前か。なんてことするんだ、こいつは。
 
「鈴木……ロクな奴じゃないのはわかってたけど、ここまでとはな」
「誉め言葉として貰っとくぜぇ。さぁ、かかれ!」

 獣人族が一斉に飛び出してくる。

「シャアァァァーッ!」

 ユタが威嚇して負けじと飛び出した。
 獣人族は躊躇せず、そのまま突っ込んでくる。
 早い!?

 あのユタの攻撃を避けつつ、反撃までしてるぞっ。

「あ……しまったっ」

 見てる場合じゃなかった。複数人いる獣人族のうち、二人が俺の方へと向かってきた。

「志導くん!?」
「レイア、そっちにも行ったぞっ」

 こっちはこっちでなんとか――。
 ジャキンっと音がして、飛び掛かって来た男の爪が、伸びた。
 ちょ、反則だろそれ!

 振り下ろされる鋭い爪は、キーンっと甲高い音と共に弾かれた。

「ぃよう」
「ア、アッパーおじさん! いつまで隠れてるのかと思ったぞっ」
「悪ぃなぁ。苦戦しねえだろうと思ったんだが、状況が変わっての」
「状況って、獣人族か?」

 獣人族の爪を弾いたのはアッパーおじさんだった。しかも毛で。
 あんなにふわもこして暖かい毛が、なんで鋭い爪の一振りを防げるんだ?

「獣人族ってのはな、とにかくすばしっこいんだ。それに、お前ぇも見ただろ、あの爪。一部の獣人はな、爪を自在に伸ばせるのさ。その爪はぁな、刃物みてぇにスパッとなんでも切りやがる」
「その爪の攻撃を受けても、毛が切れてないのはなんでだよ」
「かーっかっか。わしらアルパディカは、魔力を毛に流して防御できっからな。お前には出来ねえだろ」

 出来るわけない。

「まぁ弱点はあんだよ」
「弱点?」
「あぁ。あいつらな、魔力が極端に低くてよ。魔法攻撃にゃあ、激弱なのさ。ま、当たれば、だけどよぉ」

 あ、当たれば、ね。

「ユタ坊。お前ぇは人間の悪党を相手にしな。獣人族はわしらがやる」
「クアァァ」
「不貞腐れんじゃねえ。適材適所って奴だろうが」
「……ワカタッ」

 ユタは気を取り直して、人間だけに的を絞って駆け出した。
 獣人族は――追わない。彼らの狙いは俺だからな。
 アルパディカが現れ、一瞬だけ彼らは身構えた。が、一瞬だけだ。すぐに俺を捕まえようと突っ込んでくる。
 そこへアッパーおじさんが雷をほとばしらせた。

 何人かが回避し、ひとりが感電してその場に倒れる。痙攣をしているから死んだわけじゃない。
 しかし広範囲に四散した電流を躱すとは。反射神経が鬼すぎるだろ。

「渡錬いぃぃぃっ」
「鈴木!?」

 痺れを切らせたのか、鈴木が突っ込んできた。
 ――が。

「ククククククク、クアァーッ!」

 ユタが猛スピードで駆けてきた。
 俺は見た。鈴木の顔はニヤリと笑うのを。
 こいつっ――。

「ユタ、来るな! 罠だっ」

 だけど遅かった。ユタは跳躍し、鈴木の顔目掛けて飛び掛かっている。
 鈴木はそれを、()()()ことで回避。

「クアッ」

 着地したユタがすぐさまくるりと振り返るが、そこに鈴木がいた。
 マズい……いや、違う。
 はは、まさかこんな近くにいたとはな。

「よぉ、おチビちゃん」

 剣を振りかざした鈴木。お前の負けだ。
 奴は手にした剣を、ユタに向かって振り下ろそうとしたが――それは叶わなかった。
 何故なら、その刃は既にないからだ。

「こんばんは、おチビさん」

 ポトりと落ちた剣の刃。そうしたのは、

「カッチャ!!!」

 ユラだった。