転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~

 教会の右奥にL字で石材ブロックを積み上げた壁を設置。
 これだけでニーナの部屋の完成だ。
 天井はないけど、ニーナ自身がこれでいいって言ってくれたので簡単なもので終わらせた。
 あとは倉庫にあったものを収納するための木箱や棚をクラフトして、壁際に置く。
 それからベッドと、小さな机と椅子も用意した。

「本当に毛布とかいらない?」
『はいですの。ニーナは風邪を引かないですし、ベッドも、そこにあるだけでいいの』

 実際にベッドで眠る訳じゃないから、とニーナは完全木製のベッドを希望。
 こっちとしても縄を張ったりシーツや毛布を用意しなくていいのは助かるけど。
 でも倉庫の中に合った荷物に、いいものを発見。

「な、これをベッドのシーツっぽく被せたらいいんじゃないか? かわいい刺繍もあるし」
「あ、いいわね。うん、かわいいと思う」
『はわぁぁ、懐かしいですのぉ』

 懐かしい?

『これ、一年に一度の収穫祭の時に使う旗ですの。ニーナの……ニーナのために町の人が編んでくれたものなの』
「そっか。じゃあ、せっかくだし使ったらどうかな?」
「そうね。きっと編んでくれた人たちも喜ぶと思うわ」
「ヨロコ、ブゥー」
「ブゥじゃないよ」

 絶妙なところで息づぎをするユタにツッコムと、レイアとニーナが笑った。

「でもまぁこのままじゃ誇りも被ってるし、明日、天日干しするか」
「ふふ、その方がいいわね」
『お洗濯、ですの!』
「よし。じゃあ決まるってことで。……アッパーおじさんたち、帰って来るの遅いなぁ」

 外はすっかり暗くなってしまっている。アルパディカ一行はまだ戻って来ていない。
 そろそろ自分たちだけの家を探すと言って出ていったんだけども。もちろん、探す場所は町の中だ。空気が浄化された土地で子育てしたいそうだからな。

「子育てするとなると、それなりに拾い場所が必要でしょうしね」
『あ、あと、瓦礫、少ないところもです。赤ちゃんが、ころぶといけないですから』

 瓦礫かぁ。あちこち瓦礫だらけだもんなぁ。
 ちょっとよさげな場所があったら、あとは俺たちで瓦礫の撤去を手伝ってやるか。

「アグゥー……シドー。ハラ、ヘリンコ」
「ヘリンコって、どこで覚えたんだよそんな言葉――まさか」

 さっとレイアに視線を送ると、彼女がそっぽを向く。
 レイア……いや風見さん、君かぁ。

「はぁ……俺もお腹空いたし、先にご飯にしようか」
「そうね。今日は貝柱の塩焼きにしましょう」

 あの貝柱か。ってか凄い量だと思うけど。

「志導くん。一番小さい貝柱の四分の一だけ出して貰える?」
「はいよ。ちょっと待っててくれよ――はい、カット済み。いつも料理は頼んでばっかりだけど、俺のスキルでも料理出来るから休みたいときは言ってくれよ」
「ありがとう、志導くん。でも料理は好きだから。それに……」
「ん?」

 少し頬を赤くしたレイアが、貝柱を見つめている。
 え、どうした?

「あ、なんでもない。や、やっぱり四分の一でも大きいわね」
「あー、だよなぁ」
「ダイジョーブ! オイラゼンブ、クウ!!」
「だそうです」
「ふふふふ。了解しました」

 レイアは貝柱の調理を開始して、俺は万能クラフトで炒め物用の野菜をカット。
 そのニオイに釣られてなのか、アルパディカ一家が帰ってきた。

「ふぃ。やぁっといい場所を見つけたぜ」
「おかえり、アッパーおじ……随分と汚れたなぁ」

 帰ってきたおじさんたちの毛皮に土がついていた。全員教会の外で体をぶるぶるさせ、その土を落としている。
 慌てて駆けて行って、それを手伝ってやった。ニーナも一緒だ。
 
「あぁ。ちょいと地ならししてたもんでな」
「瓦礫の撤去とか必要なら、手伝うから――」

 頭の方に付いた土を俺に払って貰おうと、おじさんが首を下げていた――のだが、突然その首を持ち上げ闇を見つめる。
 どうしたんだ? 何か見えるのか?
 奥様方もおじさんと同じ方角をじぃっと見つめていた。
 するとニーナが俺のズボンを掴む。

『人……入ってきたですの』
「人が入って……え、人が来た!?」
「志導くんっ。ユタが――おじさんたちも察知したのね」
「あぁ。結構な人数の人間が入って来やがったな。他にも別のニオイがするぜ」
「ニンゲンダ、テヤンデェ」

 他のニオイ?
 と、とにかく人が来たんだろ?
 あ、もしかして先日、山で見つけた足跡か。
 それは歓迎すべき相手なのか、それとも……。明らかに町の方を見ているのに、一度引き返している連中だしな。
 ここは警戒すべきか。
 山で見た足跡の主じゃなかったとしても、人数が多いようだし。警戒するに越したことはないだろう。

「誰かしら? アリューケの周辺は特に汚染が強い地帯だけど、そんなところをわざわざ来るなんて」
「お、どこかの誰かさんもアリューケに来たんじゃないか」
「そ、そうだけどっ。私は浄化の魔法が使えるし、目的もあったから」

 向こうも同じかもしれない。魔法王朝を目指していて、その途中で町へとやって来ただけ。
 そうだといいんだが。
 念のため、木材をクラフトしてバットを作っておく。あと木製の盾も。

「えっと、松明松明っと」

 今日に限って町の上空は曇りだ。そのせいで辺りは真っ暗、何も見えない。
 
「おい。灯りをクラフトすんなら、持ち手のなげぇのにしとけ」
「え、持つ部分を長く? なんで」
「バッカ。暗ぇんだ。奴らが万が一弓で攻撃してくる場合、灯りを頼りに狙うだろう」

 だからわざと長い柄の松明にすれば、矢を放たれても火から体が離れている分安全だって。
 なるほどね。

 ま、攻撃されると決まったわけじゃない。

 松明をクラフトした十数分後――さっきの言葉を撤回しなきゃならなくなった。

 俺ひとりが松明を持ち、やや前方を照らして町の中を歩いた。
 すると、ヒュンっと風を斬る音が頭上を通り過ぎた。

「な。わしが言った通りだったろ」

 というアッパーおじさんの声がしたが、その姿は見えない。
 え、おじさん、どこ行ったんだ? 気付けば奥様方の姿もないし。ユタもだ!
 いるのはレイアだけ。

「大丈夫よ。みんな近くにいるから」
「そ、そう」

 レイアにはみんながいることが気配でわかるのだろう。俺にはわから――いや、わかる。ユタが右の瓦礫の奥にいる。
 あれ。意識するとおじさんや奥さんたちの位置までわかる、気がする。
 ユタは名付けで契約してるからわかるんだけど……あれ? そういやアッパーおじさんたちにも名前……。
 まさか契約してたのか!?
 全員近くに……誰か少し離れた所にいるな。ユタとアッパーおじさんの位置ははっきりわかるんだけど、奥様方がハッキリしない。あの遠くにいるのは、誰だ?

「よぉ、渡錬《とねり》。いるんだろう? 会いたかったぜぇ」

 え……この声。まさか――。
 その時、雲の隙間から月の光が差し込んだ。
 瓦礫の山からこちらを見下ろす影が月光に照らされ、その姿が浮かび上がる。

「は、はは。なんでお前がここにいるんだよ……鈴木」

 それは紛れもなく鈴木尚人――俺たちがジぬ原因を作った奴だった。