転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~

 貝=石灰。砂=珪砂。あとはソーダ水……じゃなくてソーダ灰だっけか。あれは植物を燃やした灰でもいいって、どっかで見た気がする。
 瓦礫と一緒に落ちていたガラスを解析眼で見て、その素材を確認……え?

【解析結果:ミスリルガラスの破片。ケーシャ・石灰・ミスリルから作られたガラス】

 ちょ、ま? え?
 ミ、ミスリル!? ガラスの材料にミスリルゥゥゥ?
 灰にするための草、集めたのに……。

「ね、志導くん。灰、少し貰ってもいいかな?」
「え、灰を? どうするんだい?」
「植物油と灰をぐつぐつ煮込んでね、石鹸が作れるの」

 石鹸だって!?
 それは俺も欲しいかも。
 転移してきたときにシェービングフォームと髭剃りは持ってたんだ。コンビニで買ったヤツ。
 サイズが小さかったのもあって、残り少ないんだよな。あと十日持つかどうかってとこ。

「じゃあ、この草は無駄にならなかったな」
「え? 無駄になるところだったの?」
「それがさ、実は――」

 この町にあったガラスの解析結果をレイアに伝えると、さすがに彼女も驚いたようだ。
 ということは、ここのガラスが異常ってことでいいんだよな。
 
 ゴミ捨て場に行ってミスリルをインベントリに押し込んで教会へと戻る。
 解析結果には
 ケーシャ60:石灰39:ミスリル1の割合だとも書いてあった。ケーシャはもちろん砂だ。
 貝は万能クラフトで一旦粉々にしてから燃焼。もしろん、燃焼もクラフト内だ。そのための薪も大量に用意してある。

「しかし、スキルなのに燃やすための薪までいるとはなぁ」
「ふふ。変なスキルだよね」
「まったくだ。ま、おかげで完成は一瞬なんだけどさ」

 その一瞬で一週間分ぐらいの薪が消えるっていうね。
 燃やした貝は粉末状まで潰して石灰にし、砂とミスリルと合わせて燃焼。

 強度面が心配だし、大きな板ガラスは止めておこう。窓のように木枠に嵌めて、それを何枚も用意してハウスの壁にする。
 あとは土台をしっかりさせるため、地面との接地面は瓦礫ブロックを使った。

「このサイズ、教会裏の菜園なら囲めるけど、畑だと全部は無理だなぁ」
「何個かガラスハウスを作るしかないわね」

 でもそうなると、既に完成して種も蒔いた畝をブロックで潰してしまわなきゃいけなくなる。
 
「せっかく蒔いたのになぁ」

 俺とレイアが同時に溜息を吐くと、そこへアッパーおじさんの奥さん、ルナがやって来た。

「あら。じゃあ土ごと持ち上げればいいじゃない」
「……え? つ、土ごと?」

 どうやって。

「レイアあなた、精霊魔法が使えるのでしょう?」
「え? あ、違うの。私は召喚出来るだけで、魔法は……」
「あら。変わってるのね。でも魔力量も十分だし、学べば精霊魔法も使えるようになるわよ。アタシたちが教えてあげるわ」
「本当!? 嬉しいぃ」

 いいなぁ、魔法。
 俺も火とか雷とか、バァーって出してみたいなぁ。





「えっと……こうかしら」
「そうそう。いいわよ、その調子」

 ルナは土属性が得意なアルパディカだ。彼女に教わって、レイアが土の精霊魔法に挑戦中。
 ぼこ、ぼこと土が盛り上がると、今度はグググっと動き出した。

 つ、土が動く……な、なんかちょっと不気味な光景だな。

 設置するガラスハウスのサイズに合わせて、畝が移動を続ける。一つのガラスハウスに一種類の野菜をまとめることにした。
 ドンッ、ドンッとガラスハウスを設置。
 野菜の芽が出た畝が、ぞろぞろと入口ならハウスの中へと入っていく。
 ニンジン用ガラスハウス。タマネギ用ガラスハウス。ジャガイモ用以下略。

「ふぅ。これだけあると壮観だなぁ」
「十棟もあるとねぇ。ふふ、これで冬の間もぐんぐん成長してくれるわね」
「あぁ。冬の間の食料も安泰だ」

 ガラスの材料もまだ残っているし、保存用の瓶とかもクラフトしておこう。
 それから石鹸だ。
 
 町の外、俺が最初に転移してきたあの森に、油分を多く含む木の実があった。レイアもこの森を通っていてて、彼女はこれを摘み取っていた。今まで料理する時に使っていたのは、その実を潰したものだったんだとか。

「さっそくガラス瓶が役に立つな」

 万能クラフトで油分の抽出。レイアはその辺で別の葉っぱを集めていた。

「志導くん。石鹸作るときはこれも一緒に混ぜて。香り用のハーブなの」
「了解。ほら、油もこんだけ溜まったよ」

 500mlのペットボトルを意識してクラフトしたガラス瓶。油の量はその瓶八本分にもなった。

「食用油としても、これなら冬の間は持ちそうね」
「やったね」

 ハーブを受け取り、町へ戻りながら石鹸をクラフトする。瓶一本の半分を使って、よく見るサイズの石鹸がひとつ出来上がった。
 油も十分あるし、足りなくなればもう一個クラフトするぐらいの余裕があるだろう。

 教会に戻って来て、油瓶を……。

「これ、どこに片付けようか。やっぱり棚とかあったほうがいいよね」
「そうね。油の入ったガラス瓶だもの。保存場所には気を使ったほうがいいわね」

 うっかりユタが暴れて倒したりしたら大変だ。
 そのユタは今、町の中をうろうろしている。
 従魔契約をしてから何日も経つけど、最近、なんとなくだけどユタと離れていてもどこにいるのか感じられるようになってきた。
 ユタが町をうろうろしているのは、パトロールのつもりなんだろう。
 もしくは、ユラの気配を感じ取ろうとしているのかもしれない。

 で、ユラの方なんだが……どうも遠くに行ったようで、気配がわからないんだよなぁ。
 わかっているのは、生きているって言う事。
 それだけで十分だ。
 いつかまたひょっこり現れるかもしれない。
 その時には、ユタが頑張っていることを教えてやろう。

「じゃ、棚をクラフトしようか。問題は、どこに置くかだな」
「そうね。でも棚だけじゃなく、キッチンをどこにするか、ちゃんと考えた方がよさそう」
「そうだよなぁ。となると、やっぱり倉庫部屋をリフォームするしかないな」

 礼拝堂をキッチン代わりにしていたけど、ついにリフォームを開始することにした。食事もそこで食べられるようにしたい――というのがレイアの希望だ。部屋の広さ的には十帖以上ありそうだし、いけるだろう。
 倉庫にあったのは行事の時に使っていたらしい絨毯やタペストリー、燭台とか細々したものがある。
 これは礼拝堂の方に、ちゃんとした箱をクラフトして片付けるようにしよう。

「ニーナ。そんな感じでいいかな?」

 光がふわぁっと下りてきて、ニーナの形をとる。

『あの……志導お兄ちゃん……』
「ど、どうしたんだ、ニーナ」

 ニーナはもじもじして、照れくさそうに上目遣いで俺を見上げた。

『ニ、ニーナもお部屋……欲しい、ですの』
「ニーナの部屋?」

 こくんと頷くニーナ。

『礼拝堂の奥に、小さくていいですからお部屋が欲しい、の。そのお部屋に荷物、お片付けするですの』

 そんなキラキラした目で見つめられたら、断れないなぁ。
 ま、断るつもりなんてないけどね。