「リオ、ウルバーノ殿下とは何があった?」
ロベールとダンスをするのは初めてだが、リードが上手いせいか里桜は心地良く踊れていた。
「いいえ。何も。」
「しかし、お前が怒ると天気が急変するのだ。直ぐ分かる。エシタリシテソージャへの外遊中に何があった?」
里桜は少し戸惑ってから、口を開いた。
「リナを人質に取られ、側妃になれと迫られました。」
「なんだと?陛下にはその話はしたのか?」
「いいえ。お耳に入れれば、折角収まった話しも蒸し返されるかも知れません。」
「あぁ。懸命な判断だ。しかし、あの時のお前には何の爵位もなかっただろう。どのようにして話しを断わった?」
「出発前に、陛下から紋章入りグローブを賜りました。それをお見せしたのです。」
ロベールは、少し笑った。
「そうか、それならば、あのウルバーノ殿下も引き下がらんわけにはいかなかっただろうな。」
「えぇ。それはもうあっさりと。」
「あの国は昔からやることが極端なのだ。リオを側妃に迎えるために、人質を取って脅すなど…。」
「全く愛情のない求婚でした。でも、それで分かったのです。」
「何がだ?」
「魔力の強さに関係なく陛下が私を本当に愛してくれていて、私と一緒にいたいと思ってくれている事と、陛下がどんなに私を大切に、そして一人の人間として尊重してくれているかって事をです。」
そこで、曲が終わりリオとロベールは部屋の端に移動した。
そこにジルベールやリナ、アナスタシアなどがやって来た。
「先ほどウルバーノ殿下がいらして、マルゲリットをヴィットーリオ王子と縁組みさせたいとお話しがありました。」
「それで?陛下はなんと?」
ジルベールは焦ったように聞いた。
「そんなに焦らずとも、他国の王太子殿下を相手に私だって礼儀に外れた態度は取りません。私一人で判断できる事でもありませんと申し上げただけです。」
「ヴィットーリオ王子はマルゲリット王女と同い年の第二王子ではございませんでしたか?」
リナは誰に聞くでもなく話す。
「えぇ。たしか、そうだったと私も記憶しているけど。」
「あの国が異国の血の混ざる子供を王族に入れるわけがない。しかし、両陛下の強力な魔力を受け継ぐ子供は国に欲しい。だから第二王子なんだ。」
リナの問いに答えるようにジルベールは話した。
その時、再び雷鳴が轟いた。
「リオ、ここの民が悪いわけではない。気を静めなさい。」
「しかし、王妃陛下。この話を進めたいと考える人間もいるのではないですか?他国の中枢部に自分の血筋を入り込ませたいと考えるのは貴族としては当たり前のことです。フロベール候にしてみれば、姪孫が隣国へ嫁ぐのです。レオナールにしても、隣国に強いパイプを作ることは悪い話しではない。」
里桜は小さく頷いた。
「私は政略的結婚の全てを否定しているのではないのです。王妃となった今、自分の子供が縁組みする事が政治的に重要な事になるのは分かっているつもりです。でも、私やマルゲリット、ルイだって、強い魔力を持つ子を作るための道具ではありません。強い魔力を持ち、王族として生まれたなら、その力を民の幸せのために使う義務はあります。でもしかし、だからと言って子を産むためだけの道具にされるのは違います。」
里桜はジルベールを真っ直ぐに見て笑った。
「ゲウェーニッチにそのような扱いをされた陛下ならきっと私のこの気持ちを理解してくださいます。それに、お義母様がマルゲリットが幸せになれないような縁組みを認めるはずもありません。この話は一蹴されるはずです。」
ロベールとダンスをするのは初めてだが、リードが上手いせいか里桜は心地良く踊れていた。
「いいえ。何も。」
「しかし、お前が怒ると天気が急変するのだ。直ぐ分かる。エシタリシテソージャへの外遊中に何があった?」
里桜は少し戸惑ってから、口を開いた。
「リナを人質に取られ、側妃になれと迫られました。」
「なんだと?陛下にはその話はしたのか?」
「いいえ。お耳に入れれば、折角収まった話しも蒸し返されるかも知れません。」
「あぁ。懸命な判断だ。しかし、あの時のお前には何の爵位もなかっただろう。どのようにして話しを断わった?」
「出発前に、陛下から紋章入りグローブを賜りました。それをお見せしたのです。」
ロベールは、少し笑った。
「そうか、それならば、あのウルバーノ殿下も引き下がらんわけにはいかなかっただろうな。」
「えぇ。それはもうあっさりと。」
「あの国は昔からやることが極端なのだ。リオを側妃に迎えるために、人質を取って脅すなど…。」
「全く愛情のない求婚でした。でも、それで分かったのです。」
「何がだ?」
「魔力の強さに関係なく陛下が私を本当に愛してくれていて、私と一緒にいたいと思ってくれている事と、陛下がどんなに私を大切に、そして一人の人間として尊重してくれているかって事をです。」
そこで、曲が終わりリオとロベールは部屋の端に移動した。
そこにジルベールやリナ、アナスタシアなどがやって来た。
「先ほどウルバーノ殿下がいらして、マルゲリットをヴィットーリオ王子と縁組みさせたいとお話しがありました。」
「それで?陛下はなんと?」
ジルベールは焦ったように聞いた。
「そんなに焦らずとも、他国の王太子殿下を相手に私だって礼儀に外れた態度は取りません。私一人で判断できる事でもありませんと申し上げただけです。」
「ヴィットーリオ王子はマルゲリット王女と同い年の第二王子ではございませんでしたか?」
リナは誰に聞くでもなく話す。
「えぇ。たしか、そうだったと私も記憶しているけど。」
「あの国が異国の血の混ざる子供を王族に入れるわけがない。しかし、両陛下の強力な魔力を受け継ぐ子供は国に欲しい。だから第二王子なんだ。」
リナの問いに答えるようにジルベールは話した。
その時、再び雷鳴が轟いた。
「リオ、ここの民が悪いわけではない。気を静めなさい。」
「しかし、王妃陛下。この話を進めたいと考える人間もいるのではないですか?他国の中枢部に自分の血筋を入り込ませたいと考えるのは貴族としては当たり前のことです。フロベール候にしてみれば、姪孫が隣国へ嫁ぐのです。レオナールにしても、隣国に強いパイプを作ることは悪い話しではない。」
里桜は小さく頷いた。
「私は政略的結婚の全てを否定しているのではないのです。王妃となった今、自分の子供が縁組みする事が政治的に重要な事になるのは分かっているつもりです。でも、私やマルゲリット、ルイだって、強い魔力を持つ子を作るための道具ではありません。強い魔力を持ち、王族として生まれたなら、その力を民の幸せのために使う義務はあります。でもしかし、だからと言って子を産むためだけの道具にされるのは違います。」
里桜はジルベールを真っ直ぐに見て笑った。
「ゲウェーニッチにそのような扱いをされた陛下ならきっと私のこの気持ちを理解してくださいます。それに、お義母様がマルゲリットが幸せになれないような縁組みを認めるはずもありません。この話は一蹴されるはずです。」

