レオナールは執務室で手紙を読んでいた。
送り主は里桜で、王都から三百キロ近く離れた地から転移魔法で届けられた手紙だった。内容を要約すれば、問題はない、恙無く過ごしているといった内容だ。
里桜は、六月三日にアリーチェと共にゲウェーニッチへ旅立った。
今回の訪問がゲウェーニッチの結界修復が目的であることは、発表され、里桜の初の公式外遊になった。
∴∵
「父上、ゼフェン・プリズマーティッシュ・クルウレンの申し入れを受けて本当に良かったのでしょうか?もし、結界修復が何かの策略だったら?」
アリーチェの従兄弟である、フェデリーコは父の執務机に乗り出すような体勢で話す。
「アリーチェの直筆の手紙でも書いてあっただろう。王妃の渡り人に企み事など何もないと。」
ゲウェーニッチの二代目国王、カルロは静かに話す。
「それは、そうですが。手紙ならどうとでも…脅して書かせるなど方法はあります。」
「あぁ。確かにそうだ。だが、我が国の現状はどうだ?結界修復は魔術師が行っているが、それに何の効果もないことは分かっているだろう?一カ所を修復しても別のところで綻びが出来る。今はそれでも綻びが減ることはないが増えることもなく維持できている。しかし、魔術師の半数が私よりも年長者だ。若者には魔術師になれるほどの魔力の持ち主がいないに等しい状況。これでは近い将来、我が国の結界は破綻する。」
カルロはフェデリーコの目を真っ直ぐに見た。
「しかし、アリーチェは去年まで投獄されていたのですよ?王妃殺害を企てた側妃を祖国に帰すのに、その王妃が帯同して結界を修復するなど、そんな妙な話し。何か企みがあるとしか…やはりあの国も我が国を…」
里桜が王宮を出発して二週間。国境の町バッケンヒュードに着いた。
ここは、外務大臣をしているダニエル・オードランの領地で、今回の外遊には息子で外務事務次官のフレデリックも随行している。
今日は、オードラン家のヴィラに宿泊の予定になっていた。
「明日は、いよいよ国境越えですからゆっくり休んでちょうだいね。」
里桜はそう言い残して、一足先に食堂を出た。
「私もここで失礼する。」
ロベールも食堂を出た。
∴∵
寝室として用意された客間でリナの淹れたハーブティーを飲んでいた。
「父から手紙が来まして。ゲウェーニッチでの歓迎式にエシタリシテソージャの王太子殿下も出席なさるそうです。」
「ゲウェーニッチが招待したなら、仕方のないことよね。」
「それが、招待したと言うのでもないようだと…」
里桜は視線を上げて、アナスタシアを見た。
「どう言う事?」
「リオ様が結界の修復を行うと聞いて、急にゲウェーニッチへ訪問の旨が伝えられたらしいのです。」
「私は出来れば会いたくないけど…。まぁ、仕方がないことよね。」
里桜は、再び視線をお茶に戻して、はーあ、とあからさまにため息を吐いた。
「あの国は、血筋を大切にするのでしょう?私は、渡り人として魔力は誰にも負けないけど、彼らの言う血の尊さはないから。」
「今、リオ様はプリズマーティッシュの王妃というお立場です。エシタリシテソージャの王太子とは言えど、前回のような無礼を働くことは許されません。」
「そうね。ありがとう。今回はプリズマーティッシュの王妃としてゲウェーニッチへ行くのだから、気丈にしていないとダメね。」
送り主は里桜で、王都から三百キロ近く離れた地から転移魔法で届けられた手紙だった。内容を要約すれば、問題はない、恙無く過ごしているといった内容だ。
里桜は、六月三日にアリーチェと共にゲウェーニッチへ旅立った。
今回の訪問がゲウェーニッチの結界修復が目的であることは、発表され、里桜の初の公式外遊になった。
∴∵
「父上、ゼフェン・プリズマーティッシュ・クルウレンの申し入れを受けて本当に良かったのでしょうか?もし、結界修復が何かの策略だったら?」
アリーチェの従兄弟である、フェデリーコは父の執務机に乗り出すような体勢で話す。
「アリーチェの直筆の手紙でも書いてあっただろう。王妃の渡り人に企み事など何もないと。」
ゲウェーニッチの二代目国王、カルロは静かに話す。
「それは、そうですが。手紙ならどうとでも…脅して書かせるなど方法はあります。」
「あぁ。確かにそうだ。だが、我が国の現状はどうだ?結界修復は魔術師が行っているが、それに何の効果もないことは分かっているだろう?一カ所を修復しても別のところで綻びが出来る。今はそれでも綻びが減ることはないが増えることもなく維持できている。しかし、魔術師の半数が私よりも年長者だ。若者には魔術師になれるほどの魔力の持ち主がいないに等しい状況。これでは近い将来、我が国の結界は破綻する。」
カルロはフェデリーコの目を真っ直ぐに見た。
「しかし、アリーチェは去年まで投獄されていたのですよ?王妃殺害を企てた側妃を祖国に帰すのに、その王妃が帯同して結界を修復するなど、そんな妙な話し。何か企みがあるとしか…やはりあの国も我が国を…」
里桜が王宮を出発して二週間。国境の町バッケンヒュードに着いた。
ここは、外務大臣をしているダニエル・オードランの領地で、今回の外遊には息子で外務事務次官のフレデリックも随行している。
今日は、オードラン家のヴィラに宿泊の予定になっていた。
「明日は、いよいよ国境越えですからゆっくり休んでちょうだいね。」
里桜はそう言い残して、一足先に食堂を出た。
「私もここで失礼する。」
ロベールも食堂を出た。
∴∵
寝室として用意された客間でリナの淹れたハーブティーを飲んでいた。
「父から手紙が来まして。ゲウェーニッチでの歓迎式にエシタリシテソージャの王太子殿下も出席なさるそうです。」
「ゲウェーニッチが招待したなら、仕方のないことよね。」
「それが、招待したと言うのでもないようだと…」
里桜は視線を上げて、アナスタシアを見た。
「どう言う事?」
「リオ様が結界の修復を行うと聞いて、急にゲウェーニッチへ訪問の旨が伝えられたらしいのです。」
「私は出来れば会いたくないけど…。まぁ、仕方がないことよね。」
里桜は、再び視線をお茶に戻して、はーあ、とあからさまにため息を吐いた。
「あの国は、血筋を大切にするのでしょう?私は、渡り人として魔力は誰にも負けないけど、彼らの言う血の尊さはないから。」
「今、リオ様はプリズマーティッシュの王妃というお立場です。エシタリシテソージャの王太子とは言えど、前回のような無礼を働くことは許されません。」
「そうね。ありがとう。今回はプリズマーティッシュの王妃としてゲウェーニッチへ行くのだから、気丈にしていないとダメね。」

