「リオたちからは何か報せはあったか?」
「それ、ほんの数時間前にも聞かれたけど。」
許可の必要な書類を持ってくる度に、聞かれるクロヴィスはうんざりした様子で言う。
「その、数時間の間に何かあったのか?なかったのか?」
「何も。異例中の異例で、団長であるジルベールが護衛として同行してるんだから多少のことがあっても平気だろ。」
「こんな気を揉むくらいならば、やはり俺も同行すれば良かった。」
「それは、俺が許さない。王妃陛下はご自身の仕事を全うしようとしているんだ、お前もちゃんと自分の仕事しろよ。」
レオナールは、顔を更に険しくさせた。
「まだ、リオ暗殺の真の首謀者が見えていない。こんな状況で安心できるわけがないだろう。」
「お前はまだ他にもいるとみているのか?王太后陛下が王宮に寄越した侍女の残りに聞き取りしたんだろう?」
「あぁ。王妃を邪魔に思わないかなどと聞かれたりしていた侍女がいた。聞いてきた侍女は、処刑された三人の誰にも特徴が似ていない。」
クロヴィスは尋ねるような視線をレオナールに送る。
「同じ頃に、知らない侍女に話しかけられ、王宮の噂話を聞いたと言うんだ。その侍女が気になる。」
「どんな内容だ?」
「まぁ、リオの色々だ。本当の事もあったりなかったりの。その侍女は会う度に噂話を持ってくるらしいが、どこの侍女なのか、分からないと言う。ただ、ゴールドブロンドの髪が、艶やかでとっても綺麗だったと。それを見た一人は、女性に付く侍女ではないかと言っていた。」
クロヴィスは何か納得したような顔をする。
「あぁ。うちの母上もそうだが、一番側に置いている侍女には自分と同じ高級なヘアオイルなどを分けたりするからな。」
「それに、マルタが言っていた青葉花の毒をマルタに用意した侍女だ。そいつもブロンドだったようだ。しかし、どこの誰に仕えている侍女だったのかは知らないと言っていた。長くやりとりしていたが、マルタはてっきりリオの側仕えだと思っていたらしい。それほどにリオの事に詳しかったと。」
「ブロンドが艶やかな侍女ってだけじゃな。ブロンドの女性が全体でどれだけ働いているか…。」
「あぁ。全く手がかりにならない。せめて瞳の色だけでも覚えていてくれれば…少しは絞ることも出来るんだが…。仕事をしながらのおしゃべりだから、顔をそんな念入りには見ないと言われた。あと、王太后にはあれから目新しい動きもないし、あちらの見張りはそろそろ解いても良い時期かとは思っている。」
「まだ、王太后陛下を疑っていたのか?」
そこで、突然魔壁が張られたのをクロヴィスは感じ取った。
「今回のことには、関係ないだろうとは思っている。アニアが言っていた様に、渡り人であるリオとの結婚にそもそも異存はないのだろうし。ただ、王太后は、王の子供を産むために、不義をするような人だ。俺が命を狙われたのかと考えた時、正直言えば真っ先にシルヴェストルの生物学上の父親が頭を過った。王妃を殺すことが、俺の足元を揺るがすための工作と言う事もないとは言えないからな。それもあって少し見張らせていた。」
「お前は、本当の父親のこと知っているのか?」
「いいや。王太后はなんとも言っていない。言うはずがないだろう。」
「まぁ。そうだよな。」
「しかし、シルヴェストルはそれで長く苦しめられている。だから、俺が王太后を許すことはない。」
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転生聖職者の楽しい過ごし方
第175話 萌す ③
を読んで頂き、ありがとうございます。
閑話集
空気を読まない女 リナ・オリヴィエ
ジルベール・ヴァンドーム 四十歳
の2話更新しました。
リナは学院時代のお話しです。
よろしければご覧下さい。
赤井タ子
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「それ、ほんの数時間前にも聞かれたけど。」
許可の必要な書類を持ってくる度に、聞かれるクロヴィスはうんざりした様子で言う。
「その、数時間の間に何かあったのか?なかったのか?」
「何も。異例中の異例で、団長であるジルベールが護衛として同行してるんだから多少のことがあっても平気だろ。」
「こんな気を揉むくらいならば、やはり俺も同行すれば良かった。」
「それは、俺が許さない。王妃陛下はご自身の仕事を全うしようとしているんだ、お前もちゃんと自分の仕事しろよ。」
レオナールは、顔を更に険しくさせた。
「まだ、リオ暗殺の真の首謀者が見えていない。こんな状況で安心できるわけがないだろう。」
「お前はまだ他にもいるとみているのか?王太后陛下が王宮に寄越した侍女の残りに聞き取りしたんだろう?」
「あぁ。王妃を邪魔に思わないかなどと聞かれたりしていた侍女がいた。聞いてきた侍女は、処刑された三人の誰にも特徴が似ていない。」
クロヴィスは尋ねるような視線をレオナールに送る。
「同じ頃に、知らない侍女に話しかけられ、王宮の噂話を聞いたと言うんだ。その侍女が気になる。」
「どんな内容だ?」
「まぁ、リオの色々だ。本当の事もあったりなかったりの。その侍女は会う度に噂話を持ってくるらしいが、どこの侍女なのか、分からないと言う。ただ、ゴールドブロンドの髪が、艶やかでとっても綺麗だったと。それを見た一人は、女性に付く侍女ではないかと言っていた。」
クロヴィスは何か納得したような顔をする。
「あぁ。うちの母上もそうだが、一番側に置いている侍女には自分と同じ高級なヘアオイルなどを分けたりするからな。」
「それに、マルタが言っていた青葉花の毒をマルタに用意した侍女だ。そいつもブロンドだったようだ。しかし、どこの誰に仕えている侍女だったのかは知らないと言っていた。長くやりとりしていたが、マルタはてっきりリオの側仕えだと思っていたらしい。それほどにリオの事に詳しかったと。」
「ブロンドが艶やかな侍女ってだけじゃな。ブロンドの女性が全体でどれだけ働いているか…。」
「あぁ。全く手がかりにならない。せめて瞳の色だけでも覚えていてくれれば…少しは絞ることも出来るんだが…。仕事をしながらのおしゃべりだから、顔をそんな念入りには見ないと言われた。あと、王太后にはあれから目新しい動きもないし、あちらの見張りはそろそろ解いても良い時期かとは思っている。」
「まだ、王太后陛下を疑っていたのか?」
そこで、突然魔壁が張られたのをクロヴィスは感じ取った。
「今回のことには、関係ないだろうとは思っている。アニアが言っていた様に、渡り人であるリオとの結婚にそもそも異存はないのだろうし。ただ、王太后は、王の子供を産むために、不義をするような人だ。俺が命を狙われたのかと考えた時、正直言えば真っ先にシルヴェストルの生物学上の父親が頭を過った。王妃を殺すことが、俺の足元を揺るがすための工作と言う事もないとは言えないからな。それもあって少し見張らせていた。」
「お前は、本当の父親のこと知っているのか?」
「いいや。王太后はなんとも言っていない。言うはずがないだろう。」
「まぁ。そうだよな。」
「しかし、シルヴェストルはそれで長く苦しめられている。だから、俺が王太后を許すことはない。」
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