「朔月(さつき)くん」

「……早瀬?」

 俺の名前を呼んだのは、早瀬秋音(あきね)だった。
 早瀬とはずっと本屋のバイトで一緒だったけど、ある日を境に早瀬の姿を見なくなった。

 俺の顔を見て「久しぶり」と笑う早瀬を見て、俺は思わず「早瀬……なんか痩せたか?」と口にしてしまう。
 早瀬と最後に会ったのは、多分一年前にくらいが最後だ。 辞めたとは聞いていたけど、まさかまた会えるとは思っていなかった。

「え、そうかな?」

 と口にする早瀬に、俺は「ああ、ダイエットでもしたのか?」と思わず聞いてしまう。
 早瀬は少し間を置いてから、俺に「う、うん。実は……そうなの」と笑っていたけど、その笑顔がなんだかぎこちなくて、「早瀬……なんかあった?」と問いかけてしまう。

「え……?」

「早瀬、なんか元気ないように見えるから」

 そう言った俺に、早瀬は「……ねえ、朔月くん」と俺の腕を掴む。

「どうした……早瀬?」

 そこで俺は、早瀬から唐突に「朔月くんに、お願いがあるの」と言われた。  

「お願い……? 俺に?」

 俺にお願いなんて、いきなりでビックリしてしまう。

「朔月くん、私のこと……抱いてほしいの」

「……え?」

 早瀬からのお願いに、俺は思わず「はっ!?」と困惑した。