【第1回グラスト大賞 / 結果講評】

この度は「第一回コミックグラスト大賞」に、多数の作品をエントリーいただき、誠にありがとうございました。ご応募いただいた作家の皆様、作品を読んでくださった読者の皆様に心より御礼申し上げます。

初の開催となる今回は、間口を広げるため①原作小説部門②コミックシナリオ部門の２部門に分けて募集いたしました。コミカライズ原作・シナリオ賞ということで、ストーリーとしての面白さだけでなく、構成・展開力、キャラクター性、レーベルテーマとの融合性に重点を置いた上で、漫画にした際の見せ方を想像しながら厳正なる審査をさせていただきました。

最終審査に残った作品は原作小説部門・コミックシナリオ部門合わせて10作品。どの作品も上記審査基準に該当する良作揃いで非常に悩む選考となりましたが、大賞１作、原作小説部門優秀賞１作、コミックシナリオ部門優秀賞１作が選ばれました。受賞作品においての講評は以下となります。

大賞『【再生】と【破壊】から始まる最強冒険者への道』シンギョウ ガク /著

＜ グラストNOVELS編集部からの講評 ＞

最悪の境遇におかれたヒーローが、ヒロインと出会うことによって互いの能力を高めていく姿に非常にわくわくさせられました。強いスキルを持ちながらも「一緒でないと使えない」という設定の妙が２人の特別感を引き立てていたように感じます。旅の過程で出会う仲間との絆も丁寧に描かれており、レーベルテーマの「最強の仲間がここに！」を真っすぐに捉えて表現しているところも多くの審査員の心をひきつけました。これからどんな風に最強バディが成長していくのか、今後の展開も非常に楽しみです。

＜ comicグラスト編集部からの講評 ＞

ただの一度も発動しない【再生】スキルのせいでパーティーを追放され、「底辺冒険者」の烙印を押されてしまった主人公。追放から始まる王道ストーリーながらも、相反する【破壊】スキルを持つヒロインと出会うことでスキルが覚醒する…というオリジナリティが光る設定が審査員の心を掴み、満場一致で大賞決定となりました。 何より魅力的だったのは主人公とヒロインの関係性です。互いが唯一無二の存在となる理由が明確で、尚且つそれがお互いの弱点も補い合っている点がレーベルテーマにマッチしていると感じました。 新たに加わる仲間も大変魅力あるキャラクターでしたが、個性が強すぎるあまり主人公たちが影に隠れてしまっているようにも感じられたので、主人公とヒロインがより際立つような展開を入れ込めると、メインキャラクターへの共感性が高まり、漫画としてより読み応えのある作品になると思います。 それぞれのキャラクターが漫画でどう活き活きと動いてくれるのか、楽しみにしています！

優秀賞『白魔法が使えない回復術士は要らないと言われたので、実家を召喚出来る城魔法を使って、異世界スローライフ』向原　行人 /著

＜ グラストNOVELS編集部からの講評 ＞

「誤字召喚、誤字スキル」という設定がキャッチーで、冒頭から多くの審査員が引き込まれた作品でした。誤字だらけのなんちゃってスキルかと思いきや、実は実践向きなチートスキルだったという意外性がよく、スローライフとバトル要素のバランスも絶妙でした。主人公の人助け精神に共感でき、また脇を固める女の子キャラも魅力的です。欲を言えば、前半～中盤にかけての展開をもう少し盛り上げ、例えばラストの魔王戦の比重を増やすなど、ストーリー全体の盛り上がりをひとつ設けられるとさらに満足度が高い作品になりそうです。

＜ comicグラスト編集部からの講評 ＞

「白魔法が使える最高のクレリック（聖職者）」と間違えて、「城魔法が使える齋藤クリニック（の息子）」が召喚されてしまう…という冒頭の掴みがキャッチー。習得していくスキルも誤字ばかり、と独自性がありながらも、ギャグに振り切りすぎずしっかりと王道ストーリーに上手くまとめ上げている点も審査員の中で好評でした。続々登場する個性溢れるサブキャラと主人公の掛け合いもテンポが良く、各キャラの特性がストーリー展開にもしっかりと活かされていました。物語の主軸はレーベルテーマに適合しており高評価だったのですが、各エピソードが単調で少々盛り上がりに欠ける点が惜しかったです。印象的に見せたい場面を効果的に表現し、細かなエピソードにも強弱が付けられると、よりストーリーに深みが出ると思います。



優秀賞『晴天率100パーセントの「晴れ男」、ビーチ無双から伝説へ～あるいは、太陽王は渚にて～』砂者小路胸熱 /著

＜ グラストNOVELS編集部からの講評 ＞

いわゆる王道作品ではないものの、最も審査員から支持された作品でした。それは「こんな能力を異世界に持ち込むとは！」という設定のキャッチーさの裏に、ヒーローの絶対的な強さや正悪の構図を巧みに思案している作家さんの構築力が垣間見えたからだと思います。キャラが立っていて、賑やかなビーチでの風景が非常にコミックとの相性が良いように感じました。ぜひ実際に作品を読んでみたいので、今後の執筆にも期待しています。

＜ comicグラスト編集部からの講評 ＞

シナリオ部門の中でも圧倒的な構成力の高さと秀逸な情景描写で、一切セリフが無いにもかかわらず漫画にした際の各キャラクターの掛け合いまで想像できる完成度の高い作品でした。「晴れ男」というユニークスキルとビーチを舞台とした設定は、異世界ファンタジーの王道から外れた色物なので好みが分かれるとは思いますが、物語の主軸や飽きさせない展開作りは多くの読者の心を掴む構成になっていると思います。ビーチ拠点のストーリーにとどまらず、これから明かされる太陽王の謎や黒幕との対決を、より広い世界観で描けると作品の幅が広がりそうだと感じました。テンポ良く読み進められるお手本とも言えるシナリオだったので、今後の執筆に期待です。

以上、受賞者の方々、おめでとうございます！

ノベマ！では、新たなジャンルの可能性を開拓すべく、これからも様々なコンテストを予定しております。

皆様の渾身の1作をお待ちしております。