部屋の扉からトントンと音が鳴り
私はベッドの上
ビクっと身体を震わせる。
「入っていい?」
「ダメ!」
「話があるの」
「変態には話はない」
きつく大きな声を上げるけど
「入るから」って
お兄ちゃんは私の言葉をスルーして、静かに私の部屋に入る。
私は涙を拭いてベッドにうつぶせになり、意地でも顔を見るもんかって根性を座らせる。
お兄ちゃんは『Catch Looksが好きなんだ』って、楽しそうに壁のポスターを見ている様子。
「見ないで!」
私の宝物なんだから
汚らわしい目で見ないでよ。
それでも
お兄ちゃんは静かにベッドの横に座って、私の頭を撫でる。
「触らないで変態」
触んないでよ
私を見ないでよ。
こんなひどい言葉を私に言わせないでよ。
どうして
そんなんなったのよ。
返してよ
私の大好きなお兄ちゃんを返してよ。
涙がボロボロまた溢れてしまう。
「驚かせてごめんね」
謝りながら
お兄ちゃんは私の背中を撫でる。
昔
風邪を引いた時
お兄ちゃんはずっと私の傍にいて
ずっと背中を撫でてくれた。
変わらない優しい手には
今は綺麗なネイルアートで彩られていた。