お兄ちゃんはテーブルの上にある薬の袋を何種類か飲んで、頭を押さえてからコップの水を飲む。

「メンテナンスも大変」
苦笑いで言うけど

手術をするって
お金もかかるけど
きっと身体も大変だったんだろうなって
中学生でもわかるよ。

「桔梗は好きな人はいるの?」
急に変な質問されてしまった。

「そんなのいない」
ブスッとして返事をしちゃう。
だって
こんな田舎
幼稚園から中学校までメンバーは変わらない。
そこで今さら恋愛なんてカンベンだ。

「これからだね」

「これからも無いかも」

「女の子だもん。必ずあるよ」

女の子……お兄ちゃんが言うと微妙。

「お兄ちゃんはね、すごく好きな人がいるの」
秘密を打ち明けるような声
そして優しい表情。

「その人の為なら何でもできる。薬も肉体的苦しさも、精神的苦しさも耐えられる」

お兄ちゃん。

「だから……こんなんなっちゃった。いや、前から素質はあったんだけどかなり無理してたんだ。でも桔梗の事は大切で家族も大切。これは本当。そして自分に正直になりたい」

優しい笑顔が切ない

「お兄ちゃんだまされてない?その人に捨てられたらどうすんの?」

お兄ちゃんが泣くのは嫌だ。

「捨てられても、出会えてありがとうって言える人」

「そんなのダメだよ」

「桔梗」

「お兄ちゃん……」

「桔梗が大好きだよ。いつまでも家族でいてね」

って言われて

私もお兄ちゃんが大好きな事を思い出す。