辞められるものなら、もう「カラダ探し」なんて辞めたい。


でも、腕の中にある明日香のカラダが、私に「諦めるな」と言っているような気がした。


「明日香も、こんなのを何度も見たの?私は……耐えられないよ……」


目の前の光景を、なるべく理解しないようにしていたけれど、そんな私の目に、西棟の方からこちらに向かってくる人影が映ったのだ。


こちらに向かって来る人影……あれは誰?


二見がここで死んでいるという事は、袴田もきっと殺されているはず。


「赤い人」にしては大きいから……もしかして、伊勢なの?


「い、伊勢君!あ、明日香のカラダ!あったよ!」


私はもう、動く事ができない。


だから、この明日香の腰を伊勢に任せる事ができたら……。


そう思い、震える手で腰を頭上に掲げた。


その人影は、血だまりを避けるように、玄関の方に向かう。










……おかしいな。










伊勢なら、明日香のカラダを見つけたら、血だまりで滑ってでも駆け寄ってきそうなのに。


「赤い人」だとしても、一直線にこちらに向かって来ると思う。