そもそも、こんな広い校舎の中で、8つに分けられたカラダを、何の情報もなく探せだなんて。


三階に到着し、北側に向いてすぐに、十字路がある。


ここを右に曲がれば、文化祭の時に映画を上映していた視聴覚室があった事を思い出した。


友達がいなかった私は、誰と楽しむでもなく、ずっとその部屋で映画を見続けて時間を潰していたから。


あの部屋に、カラダを隠せる所なんてあったかな……。


そう考えながらも、私の足は視聴覚室に向いていた。


視聴覚室……日中でも日光が射さないこの部屋は、夜だからといって特別怖い場所でもない。


携帯電話の光を頼りに室内に入ると、土足厳禁のせいか、音楽室と似たような、変な臭いがする。


とはいえ、音楽室よりも使用頻度が低いから、そこまで気になるような臭いではないのだけれど……。


「翔太……まだ生きてるかな?」


こんな事を口にするなんて、以前の私にはなかった事だ。


人の心配をする事も、生死を考える事も。