「キャハハハハハハッ!」
目の前に「赤い人」がいるという恐怖と、その笑い声が、ビリビリと身体を震わせているように錯覚させる。
声の振動で多少はあるだろうけど、この至近距離での笑いは恐ろしい。
「お前はもう死ぬんだ」と言われているようで、膝がガクガクと震え始めた。
笑いながら近寄り、私に飛びかかる「赤い人」。
しかし、翔太が私を押しのけて前に出て、「赤い人」に、そこにあった机をぶつけたのだ。
翔太がこんな事をするなんて思わなかったから、驚いたけど……助かった。
「早く逃げろ! 振り返らずに、後ろのドアから!」
私のせいで見つかったのに……どうしてここまでしてくれるのだろう。
「わ、分かった……ごめんね、翔太。私、頑張って探すから!」
机をぶつけられて、床に倒れた「赤い人」が起きる前にドアまで後ずさりし、翔太にそう言って、私は廊下に飛び出した。
引き付けるって言ってたけど、そこまでしてくれるなんて。