「キャハハハハハハッ!」













歌が、突然笑い声に変わった。


今の音でも気付かれるの!?


その笑い声が、こちらの方に近付いてくる。


やっぱり、何でも良いから口にしておくべきだった。


「ごめん、翔太……」


私がそう言った時、教室の前のドアが勢いよく開けられて、「赤い人」が飛び込んで来たのだ。


「言っても仕方ないだろ! 俺が引き付けるから、美雪は逃げろ!」


そう叫んで立ち上がると同時に、私の腕を引いて立ち上がらせてくれる翔太。


ふたりとも「赤い人」を見てしまったから、もう振り返る事ができない。


翔太が向けた携帯電話の撮影モードの照明が、その異様な姿を照らし出す。


猫背で、ダラリと垂らした腕、手に握られたウサギのぬいぐるみまで、すべてが血で真っ赤に染まっていて、それが指先からしたたり落ちて……。


「赤い人」とはよく言ったもので、私がいつか放課後に見た時とは、比べ物にならないほど不気味な風貌を漂わせている。


そして……ゆっくりと顔を上げ、顔だけこちらに向けると、ニヤリと不気味な笑みを浮かべた。


その次の瞬間目を見開き、口を大きく開けて、再びあの笑い声を上げたのだ。