……良かった。







協力もせずに、ふたりでイチャイチャしているだけなんて、迷惑だから。


皆、繰り返す「昨日」から抜け出そう、明日香のカラダを見つけようと頑張っているのに、あのふたりは、こんな状況でも自分達が楽しむ事しか考えていない。


私はそれに腹を立てながら、隣の女子トイレに駆け込んだ。


しばらくしてふたりの叫び声が聞こえたけど、私の苛立ちは消えなかった。


ふたりへの苛立ちを募らせたまま、私は女子トイレも調べ終わり、廊下に出た。


歌は聞こえないし、あれから誰かが襲われた様子もない。


今日はまだまだ行ける。


「昨日」みたいに、いきなりこのフロアに呼ばれたらどうしようもないけれど、そんな確率はかなり低いと考えて良いだろう。


姿を見せない「赤い人」の影に怯えながら、私は階段の向こうにある教室へと走った。


ドアの前に立ち、ゆっくりとそれを開けて、教室の中をのぞくと……。










翔太はまだ来ていないようで、シーンと静まり返った、不気味な雰囲気を漂わせた室内が私を迎えた。