「た、高広……」






留美子に言われた通りに、そう呼びかけたけれど……胸がドキドキする。


締め付けられるように苦しい。


「カラダ探し」のような恐怖で苦しいわけじゃなく、胸の奥が熱くなるような感覚。


私の声に、ビクッと反応して、驚いたように振り返る伊勢。


「あ……明日香!?」


その姿に、もしかして私は、とんでもない事をしてしまったんじゃないかと不安になった。


私を見つめるその目から、涙が一筋流れ落ちたのだ。


そして……。


私は、伊勢に抱き締められた。


何が起こったのか分からなくて……胸のドキドキが、さらに激しくなるのが分かった。


「明日香……」


私の身体をギュッと抱き締める伊勢は、何を考えてこんな事を……。


男子に抱き締められた事なんて初めてで、心臓が破裂しそうなほどバクバク言っているのが分かる。


でも……私と明日香を間違えてる。


「い、伊勢君……私は、明日香じゃ……ないよ」


その言葉で、慌てて私から離れる。