私の手から携帯電話を取り、ある種の驚きの吐息を漏らした。


そして、カチカチとボタンを押すと、再度自分の番号とアドレスを登録してくれたのだ。


「俺も教えておくよ。留美子、貸してくれ」


そう言い、浦西も番号を登録してくれる。


明日が来なければ、それも消えてしまうのに。


「よし、登録……と。相島、浦西は呼びにくいだろ? 俺の事は翔太って呼べば良いからさ。それに、消えても毎日登録し直してやるから」


携帯電話を渡してくれた浦西は、頭をかきながら、少し照れているように見えた。


ふたりが壁から顔を出して、私を見守る中、私はなぜか、伊勢がいる屋上の南側に向かって歩いていた。


なんでこんな事になってるの?


私は怪我をしている伊勢が心配だっただけなのに。


「伊勢君じゃなくて、高広って呼ぶんだよ! 分かった!?」


なんて、訳の分からないアドバイスをもらい、私は、柵の上に腕を乗せて遠くを眺めている伊勢に近付いた。


留美子は何を期待しているんだろう……。


それに、浦西……翔太だって。


私は、手を伸ばして伊勢の背中に触れた。