「今……ここに誰かいませんでした?白い服を着た人……」


「ん?相島さんしかいなかったけど……気のせいだよ、きっと」


そう……なのかな?


浦西先輩が差し伸べてくれた手につかまり、立ち上がる。


この時には、目の前にあったぬいぐるみも消えていて……もしかすると、結子さんが言っていたのが、今のぬいぐるみじゃないかと思い、私は身震いした。


「あ、相島さん。あの……俺と付き合ってくれないかな?い、嫌なら良いんだけど……」


ギュッと握った手がブルブルと震えている。


突然の告白でおどろいたけど、本当に私で良いのかな?


「はい……お願いします」


今の私は、さっきの健司のように、耳まで真っ赤になっていると思う。


うれしそうな浦西先輩の表情に笑顔で答えて、私達が手をつなぎ直して歩き出したその時。












「あ~かい ふ~くをくださいな~」











微かに聞こえたその歌声に、振り返った私が見たものは……。


少し離れた位置で、さっきのぬいぐるみを手に、私を見て笑っている白い服を着た少女の姿だった。













この日から、「赤い人」という怪談話が町中を恐怖させるのだけれど……この時はまだ、何が起こるかなんて私は知るはずがなかった。













あなたの家に、見知らぬうさぎのぬいぐるみはありませんか?


もしかするとそれは……。











「キャハハハハハッ!」














end