浦西先輩の額に当たり、床に落ちたのはネクタイピン。
それを拾い上げ、うれしそうに私に笑いかけてくれる。
「ありがとう、相島さん。ちょうどなくして困ってたんだ」
「いえ……私のポケットに入ってた物ですけど……」
なんだか……恥ずかしいけど、浦西先輩が喜んでくれるならうれしい。
それに……理由は分からないけれど、あるべき所に物が戻ったような不思議な安心感を覚えた。
後はボールペン……誰も手にしようとしないこれを手に取り、私は帰る準備を始めた。
帰る準備を済ませ、廊下に出た私達。
留美子は、最後まで携帯電話を引き取るのを嫌がっていたけれど、その中に入っている個人情報が留美子の物と似ているため、嫌そうだけど持って帰る事になった。
「先生、レポートのチェックをお願いします」
階段を下りていると、踊り場で女子生徒が数人と、学校で一番イケメンの八代先生がいる。
「弱ったな……僕は田村先生の代わりに鍵の返却に来ただけだから、書く物を何も持っていないんだ」
生徒に人気の八代先生。
密かに想いを寄せる女子生徒は少なくない。