その表情はなんだかうれしそうで、夜の校舎で見かけた時のような無表情ではない。


次に欲しいおもちゃを選んでいる子供……そんな風に目を輝かせている。


「あ、そうだ。お姉ちゃん、もう戻っていいよ。遊んでくれてありがとうね」


美紀の言葉に、黙って立っていた明日香が棺桶の方に向かって歩き出す。


「あ、明日香……」


高広を前にしても無反応な明日香に、少し不安になったのだろうか?


明日香の肩に手を添え、エスコートするように一緒に歩く。


棺桶まで歩いて行くふたりを皆が見守っている。


私もそうだけど、生き返るその瞬間を見たいのだ。


「ねぇ、次は誰が美紀ちゃんと遊んでくれるの?」


棺桶に横たわる明日香と、それを見下ろす明日香が今ひとつになる。


美紀の話など誰も聞いていない。


棺桶の中に入ったもうひとりの明日香が、重なるように横になった時……明日香の目が開かれ、パチパチと二度まばたきをして、ゆっくりと身体を起こした。


気付けば、皆美紀を無視して棺桶の周りに集まっている。