「八代先生が言ってただろ？明日香がこうやって待ってた時、『赤い人』が一緒だったって。つまり……終了処理が終わった後に『赤い人』を見て振り返っても、殺されないって事だ」


「赤い人」を見た後、すぐに振り返って見せる翔太。


それでも「赤い人」が何の動きを見せない事に、留美子も安心したようだ。


「こいつのせいで俺は何度も殺されたんだ。一発くらいぶん殴っても良いよなぁ？」


ニヤニヤと笑いながら、袴田が「赤い人」に近づく。


でも……さすがに動きもしない小さな女の子を殴るのは気が引けるのか、殴ると言っておきながら、なかなか手を出さない。


「殴れないんでしょ？だったら強がらなくてもいいのに」


そんな袴田の姿を見てクスクスと笑い、長椅子に腰を下ろす結子。


余裕を見せている皆とは違い、「まだ明日香は来ないのか？」と言わんばかりに廊下の方をジッと見ている。


明日香が来るのを待っているのだ。


「赤い人」と棺桶を前に、長椅子に腰かけて明日香と美紀が来るのを待っている私達。


誰も話そうとしない、耳が痛くなるほどの静寂を破ったのは高広だった。











「来た……明日香だ」